負けヒロインの幼馴染みと再会したら、闇堕ちして氷の女王になってた。
烏の人
第1話 氷の女王
高校2年の春。僕はその学校に編入した。何もかもを切り替えて青春を謳歌できると思っていたけどそのクラスに入って、いの一番に飛び込んで来た彼女の姿に度肝を抜かれた。窓際の奥の席、そこに彼女はいた。
立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花とはよく言ったもので。彼女の容姿を端的に表すとしたらそれは美しい以外の言葉は無いだろう。スッと伸びた背筋、長く黒い綺麗な髪。遠目からでもわかるほどに異彩を放つその少女の瞳は僕の心を………いや、僕を睨み付けた。
「じゃあ、自己紹介お願いね?」
「は、はい。えぇ、家の都合でこっちの方に引っ越してきました。
とまぁ、一通りテンプレートに沿った自己紹介をするわけだが、何故だろう、拍手のなか彼女からだけはレーザーポインターで狙われているような、殺意にも思えるその瞳が僕に向けられている。
いや、正直わかっている。だが、まさかそんなことあるわけ無いとも思っている。ただ、所々にあいつの面影があるのだ。
「じゃあ席はあそこね?」
指を指された場所は………まぁだろうね。知ってた。空いている場所そこしかなかったもん。最初から。そう、彼女のとなりの席である。
「
粟垣………僕の知るなかではその名字の人は1人しか知らない。だが雰囲気はあのときとまるで違う。粟垣
「え、えぇと………六花………?」
隣に座った僕を、尚も睨み続ける。六花と言う名に反応しなかった辺り、本人で間違いないだろう。
「久しぶり………蓮。」
え、えぇ無理無理無理、この空気感はなかったことにできないから………。
「これから………よろしく。」
ぎこちない挨拶の返事は返ってこず、僕史上最悪のホームルームを体験することになった。
転校生に関するイベントと言えば、これは外せまい。質問責めである。何処から来たのとか、なんで転校してきたのだとかそんな些細なことばかりだ。だがその中には踏み込んだものもあって。
「え?彼女とかいるの?」
「まぁ………いないよ?」
なんて、そう返す。ただ、僕は見ていた。その質問のとき、ハッキリと六花の視線がこちらを向いたのを。根に持たれてるな………これ。まぁ仕方ないことではあるんだけどな。
「おもんな。」
「おもんなって。」
とまあ、こんな感じでだんだんと打ち解けることができた。
「にしてもな………まさか隣の席が………ねぇ?」
目配せする、僕の周りによって来た連中。
「え?ど、どうかしたのか?」
「いやぁ、ほら凄く………な?」
わかる。言わんとせんことは凄くわかる。このうるさいんですけど、どっか行ってくれますか?ってオーラで語りかけてきている。
そのとき、誰かがこっそりと教えてくれた。今の六花がどうなっているかを。
「粟垣 六花………1年のときに虐めてた連中を返り討ちにして以来、氷の女王って呼ばれてるすげー奴だよ………間違っても怒らせたり―――――!」
感じたのだろう………殺気を………もうその話はやめておけ。おかしいな………僕の知っている六花は少なくともこんな性格ではなくもっと天真爛漫としてて………純粋だった。人ってこんなに変わるものなんだな………そうつくづく思うが。恐らくそれどころではないのだろう。
「行こう。蓮。」
ふとそんな声が聞こえた。気がつけば僕は………六花に手を引かれていた。
「「「え?」」」
その場にいた六花以外の全員………勿論、僕も含めてそんな声を出した………如何せんその一言は………あまりにも強烈すぎたのだ。
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