第4話 姉心

家に帰ると妹の梅と桃が弟の信を囲んで何やら騒いでいた。

私は4人姉弟だ。長女の私が桜、次女が梅、三女の桃と末っ子で弟の信。妹も弟も私が言うのもなんだが結構美形揃いだ。


梅はクールビューティー。男の子の友達が多くサバサバ女子を装っているが本当は結構情が深い。強情で頑固なところがあるが、根は優しくて良い娘なのだ。どうやら長い間片思いをしている人がいる様だが、友達付き合いが長すぎて素直に好きだとは言えないらしい。お酒を飲み過ぎるとその事をしょっちゅうグダグダ言っている。


桃はアイドル系のふわ可愛女子でなかなかにあざとく、男の前では計算されたカワイコちゃんを演じている。でも根は戦闘的で実際的だ。

何故だか最近は、すっかり可愛い子キャラを捨てたようで、本来の現実的だが優しさのある大人の女性になりつつある。良い恋をしているのかも知れない。


信は顔だけは男前で女の子にモテる。女性慣れしている事もモテる理由のひとつだろう。姉のお陰というか姉のせいで女性にあまり夢や希望を抱けなかったようだが高校に入学してからちょっと変わった。夢や希望を持てる女の子に出会ってくれてたら良いのだがと期待している。


「だからー信ちゃんもこう見えて男やねんから、女の人と二人っきりには出来ひんやろ」

桃が何やら梅を説得している様だ。

「どう見えてんねん」弟の信が不貞腐れる。

「三次会もあんのに」梅は桃を睨む。


「ただいま どうしたん?」

とりあえず参戦してみた。

「おかえりー。スーちゃんの後輩が静岡から結婚式の二次会に来る予定やってんけど、クリスマスでホテル取られへんみたいで困ってんねん。ウチに泊まってもうたらエエやんって言うてんけど」

桃が信を横目で見ながら続ける。

「お父さんとお母さんもスーちゃんの実家に泊まりに行くし、ウチら三人で三次会まで行ったら、この家に信ちゃんとその後輩さんが二人きりになってまうやろ?だから私も三次会出んと帰ってこようと思って」

「その人も三次会行ったらエエやん」梅が割って入る。

「別に三次会行ってからここに帰ってきてもエエやろ?」

「それはアカン!」いきなり信が叫んだ。姉三人に不審そうに見つめられてオタオタしている。

「その後輩の人、クリスマスに約束あんねんて。こっちの知り合いと会うみたいやから、徹夜明けとか可哀想やん」何故か桃が助け船を出した。何か怪しいなと思った。


今月12月の24日クリスマスイブに従姉妹の季(すもも)ちゃん(スーちゃん)が結婚する。信はまだ高校生なので二次会止まりで三次会には流石に参加させられない。


信の様子では何かある。その泊まりに来るスーちゃんの後輩と知り合いなのだろうか?そして桃も何か知っているようだ。


「まぁ良いやん。信だけ家に置いとくのも心配やったしちょうど良かったわ」

良くわからないがとりあえず信と桃に賛同した。

梅は「せっかくみんなで呑み明かせるのにー」とまだちょっと不満そうだったが渋々引き下がった。

桃が信に目配せをした。

やっぱり何かあるんやな、要チェックや。

着替えるためにリビングを出ながら思った。

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