第9話 裏切り者が

「案外、近いんだな。」


 下駄箱から職員室を少し奥に行った場所ある保健室の前にいる。


 コンコンコン


「失礼しまーす。」


 返事はなかった。

 まぁ、朝早い時間からけが人が出ることなんて想定されていないんだろう。

 俺は保健室に入り中を探索する。


「まぁ、保冷剤は冷蔵庫の中だよな〜。

 タオルはどこにあんのかな?

 この中か?違うなぁ。

 ってこん中かよ!」


 保冷剤をタオルで包んで右足に巻きつける。

 静かな保健室から寝息が聞こえる。

 ……好奇心が勝ってしまった。

 そーっとカーテンを開けて除いてみる。

 そこには担任の暁美あけみ先生が寝ていた。

 目にはいつも通りの隈が出来ており熟睡してるようだった。


「………」


 声をかけることなくカーテンを閉める。

 先生も疲れてるんだろう。

 取り敢えず荷物を教室に置くために教室に向かう。



 教室の扉を開けて自分の席に向かう。

 隣の席の優樹はこちらを清々しい笑顔で見ている。

 俺は中指を立てながら


「お前、本っ当に死ねよ。」

「そこまで言わなくても良くない?」


 優樹はふざけた感じで答える。

 俺はキレ気味に


「こっちは足捻ってんだよ。

 慰謝料として飯奢れよ。」

「まぁ、それぐらいならいいよ!」

「あとお返しだ。」


 そんな遣り取りをした後に全力で優樹の頭を叩く。


 パーン!!


「いい音出たな。」

「しばくぞカス!」

「自業自得だ。それぐらい理解しろアホ。」

「その喧嘩買ってやるよ。」

「値段は5万な。」

「高くない!?やっぱいいや。」


 そんなやり取りをしていると後ろから声をかけられる。


「直哉!大丈夫?」


 その瞬間空気がピリつくのがわかった。

 まあ、そんなこと気にすることなく


「今度焼肉奢ってもらおうかな?」

「ちょっとまって。

 財布にダメージデカいんだけど!?」

「そこそこいいところ頼もうかな?」

「ワン○ルビで勘弁してください。」

「そこで手を打とう。」

「助かりまーす!」

「な、直哉?」

「谷川さんが声かけてくれてるぞ。」

「はあ、谷川さんですか。

 なんですか?」


 おそらく今の俺の顔は不機嫌極まってるんだろうな。


「あ、えっと、朝は大丈夫だった?」

「関係ありますか?」

「え!?だ、だって…」

「他人がしゃしゃんなカス。」


 その発言をした瞬間教室の空気が更にピリつくのがわかった。


「え!?」

「谷川さんはあくまで同級生という名の他人です。」

「そ、そんな…中学生製の頃は…」

「チッ、最初に裏切ったのはお前だろ。

 このクソ野郎が。」

「………」


 彼女が何も言えないでいると扉の開く音があり


「お前ら席につけ〜。」


 先生の眠たげな声が響く。

 それと同時に皆がそれぞれ自分の席に戻っていく。

 そう言えばさっき先生保健室で寝てたな〜。

 なんてことを考えながら朝のお知らせを頭空っぽにして聞いてるのだった。

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