第6話 喋れる相手

「…さ……に…さ…兄さん!」

「…あ?まさか?悪い、寝てた。起こしてくれてありがとな。」

「夜ご飯頼める?」

「分かった。少し遅くなるけどそれでいいなら作るぞ。」

「遅くなってもいいからお願い。できれば炒飯!」

「分かった。」


 俺がこの家の中で唯一まともに喋れる一応俺の弟の二輪雅。

 雅は妙に勘が良く、客観的に物事を見る事ができた俺に似ていない子供だった。

 よく俺の後ろをついてきて俺以外のやつには懐くことはなく普段から一線を引いているような態度だった。

 雅は俺と写真や動画等のなにかに記録を残そうとすることが多かった。

 昔一度だけ何故か聞くと


「兄さんってなんか煙みたいなんだよ。

 そこにいるのになんか、いつ消えてもおかしくないような不安定な存在に感じるんだよ。」

「へ~~、良くわかんねぇな。

 俺は俺でここにいるだろ?」

「さぁね。でも……いなくならないでね兄さん。」

「お前が俺を裏切るか、あいつらみたいになる、お前の意志でいなくなる。そんなことがない限りお前のそばにいると思うよ。」

「ありがとね。」

「気にするな。」


 そんなやり取りを一度だけした。


「どーせあの連中は飯食ってるはずだからそれが終わるまで一緒にゲームしよ?」

「飯食ってこいよ。」

「やだね。あいつらは信用できない。直哉兄さん以外は信用できない。」

「はぁ、家族は大切にしろよ。」

「兄さんがそれ言うの?ブーメランって知ってる?」

「って、部屋に戻れよ。わざわざゲーム機持ってくんなよ。」

「良いではないか〜良いではないか〜。」


 グダグダなやり取りをしながらしばらく二人でゲームをするのであった。

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