第2話 親友

 懐かしい夢を見た。

 家族を理解して俺が俺になったあの日の夢だった。

 そのおかげで気分は不快の絶頂だ。

 あいも変わらず空っぽな部屋だと感じる。

 ただ、クローゼットと鎖で巻かれた金庫と扉に貼ってある

「俺は俺」

 そんな事が書かれた半紙がやけに目に入る。


 今日から俺は高校生だ。

 必要な書類などを確認したりクローゼットから制服を取り出し着替えたりして登校の準備をする。


 準備の終わった俺はカバンを持って自室を出る。

 その瞬間家のインターホンが鳴る。

 急いで階段を駆け下りて玄関に向かう。

「行って…」

 途中雑音が聞こえたが気にすることなく玄関に向かう。


「早すぎねぇか?」

「暇だったからしょうがない。」

「待ての出来ない駄犬が。」

「じゃあ、お前は孤高のオオカミさんか?」


 くだらない会話を目の前の友人と繰り広げる。


「さっさと行くぞ直哉!」

「朝飯食って無い…」

「俺の奢りでなにか食べさせてあげよう。」

「助かる、優樹。」


 小学校からの腐れ縁とも言える悪友だ。

 俺の中で一番信頼をおいてるやつで俺は親友と思ってる。


「うどん食いに行こうぜ!」

「エナドリか、ゼリーがいいな?」

「その2つはそこそこいい値段するんだぞ!

 我が慈悲に感謝せよ!」

「ありがたや~」

「「あはは、俺ら何やってんだろうな。」」


 くだらないじゃれ合いをしながらコンビニで朝飯を奢ってもらい学校に向かう。

 入学式で頭によく残ったのは校長の頭がきれいだったということだけだった。



「校長の頭光ってたよな?」

「うん、きれいに光ってた。」


 アホみたいな会話をしながら教室に向かう。

 幸い俺等は同じクラスだったため話し相手がいないということにはならなかった。


 教室では簡単な自己紹介と予定や行事ごとの説明だった。


「ハイスター…ハイスター…」


 先生が教室を出るときに有名なエナジードリンクの名前を呟いていた。

 仕事が大変なのだろう。

 今度差し入れで持って行ってあげよう。


「このあと親睦会開くんだけど君も来ない?」


 クラスメイトの女子に話しかけられた。

 俺が何も言えないでいると隣の席の優樹が


「悪いな。

 俺達は帰りに飯食いに行く約束してんだ。

 俺等は不参加で頼むな!」


 俺のかわりに返事をして俺の手を引っ張る。

 気を使ってくれたのだろう。


「ありがとう。助かった。」

「気にすんな。でも、薬は飲んでおけよ。」

「わかってる。」

「まだ残ってんのか?」

「いや、残ってはいない。ただの苦手意識だ。」

「クラスメイトだから慣れろよ。」

「しゃあない、陰キャだもん。」


 くだらない会話をしながら途中ラーメン屋で昼飯をすまして家に帰るのだった。

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