第2話「掛け布団の口論」

[結局、掛け布団はいらないってこと?]


 妻は、目をり上げて俺にそうきいた。なぜ妻が、たかが布団で怒り口論になったのか。

 これは、5分程前のこと___


「なあ、この掛け布団、穴が空いてて中からわたが出てくるんだけど」

 俺は穴が見えるよう、片手に掛け布団を持ち、妻の元へ歩み寄った。

「あちゃー、穴空いてたかー。ちょっと待って、別の持ってくるから」

 そう言い、妻はそそくさと別の掛け布団を持って来た。

 しかし俺は、その掛け布団を見て眉間にしわを寄せた。

「あぁ。それは生地がゴワゴワしてるからダメだ」

 すると今度は妻が眉間に皺を寄せ、

「え?もうこれしかないんだけど」

 と、強い口調で言った。

「は?じゃあ買ってきてくれよ」

 妻の言い方がしゃくさわり、俺も投げやりになってしまう。

「は?なんでそんな面倒なこと私がしなきゃいけないのよ!!」

「俺はそれじゃ嫌なんだよ!!」___


「結局、掛け布団はいらないってこと?」

 それでこの質問に至るのだ。

「いらないよ」


 そうやって元気に言い合っていた昨日の俺が心底羨ましいよ。

 まだ暖かい時期だからと甘くみていた。何も掛けずに寝た俺は、今熱を出して寝込んでいる。

 そんな俺を尻目に、妻は溜息をついた。

「だからあの時、『いる』って言えばよかったのに」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る