第1話「ぼくのもの」

[男の子がピンクでも別にいいじゃない]


 先生は、皆にそう言って怒った。

 ぼくは、黒とか青じゃなくてが好きだ。そのことでクラスの子にからかわれた。でも、それを皆の前で言われるのはもっと恥ずかしい。

 教室は、先生の怒鳴り声でしんと静まり返る。ぼくは複雑な気持ちのまま、席に着いた。


 ぼくは俯いたまま、一人通学路を歩いていた。背負ったランドセルが、今日はやけに重たい。

「ねえ、友広ともひろくん」

 後ろから、可愛らしい声が聞こえた。

「どうしたの?」

 ぼくは振り向きながら、優しく聞き返した。

「ごめんね。私のせいで…。そのハンカチ、ピンクじゃなくて黒とか青にすればよかったね」

 悲しそうな声に、胸がキュッと締め付けられる。

「ううん。謝らないで」

 ぼくら以外、誰もいない帰り道。

「ぼくは、ピンク色が好きなんだ」

 ぼくはズボンのポケット越しに、ハンカチをぎゅっと握った。

 例え嘘をついてでも、肌身離さず持っていたいんだ。大好きな君がくれたものだから。

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