第1話「ぼくのもの」
[男の子がピンクでも別にいいじゃない]
先生は、皆にそう言って怒った。
ぼくは、黒とか青じゃなくてピンクが好きだ。そのことでクラスの子にからかわれた。でも、それを皆の前で言われるのはもっと恥ずかしい。
教室は、先生の怒鳴り声でしんと静まり返る。ぼくは複雑な気持ちのまま、席に着いた。
ぼくは俯いたまま、一人通学路を歩いていた。背負ったランドセルが、今日はやけに重たい。
「ねえ、
後ろから、可愛らしい声が聞こえた。
「どうしたの?」
ぼくは振り向きながら、優しく聞き返した。
「ごめんね。私のせいで…。そのハンカチ、ピンクじゃなくて黒とか青にすればよかったね」
悲しそうな声に、胸がキュッと締め付けられる。
「ううん。謝らないで」
ぼくら以外、誰もいない帰り道。
「ぼくは、ピンク色が好きなんだ」
ぼくはズボンのポケット越しに、ハンカチをぎゅっと握った。
例え嘘をついてでも、肌身離さず持っていたいんだ。大好きな君がくれたものだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます