第7話 きっと来る、来ないとおかしい

筋トレを始めてはや2年。我は齢5となった。身体に大きな変化はないが、身体能力は大きく向上した。


毎日、ひたすらに拳をふり、ひたすら走り込み、がむしゃらに体を虐め抜いた。そのおかげで、今では厨二病の知識にある必殺技とやらも、一部習得することができた。


たが、我は家族の中で一番弱い。(ハイム>セレナ>マリー>=我)


敗因は精査してある。


それは、あいつらは闘気と言うチート技を使うからだ。


我は使っていない。(使えない)


何で我の力は、あの病弱で(今ではそんなに酷くない)ひょろひょろなマリーと力勝負で勝てないのだ!?意味がわからないぞ!!


まぁ、闘気なんてなくてもマリーには何回かは勝ってるし。(682戦中7勝472引き分け203負け)


今後来るであろう覚醒込みで考えると我が一番強い。


覚醒といえば、もう直ぐ来る邪神の使徒の襲撃。我は、その日付を特定することに成功した。


その日付とは、671年のいつかである。


まぁ、落ち着け。


日付とは言ったが、別に何月何日を特定したとは言ってはいないだろう?第一に、IQ423の我がわからないのだ。あまり我の揚げ足を取らないでいただきたい。


671年は今年である。付け加えると我の生まれた年は666年!主人公らしい見事なゾロ目であるな!


「ルーク、それ去年も言ってた....」


銀髪の少女兼大参謀のマリーが、ルークの独り言にぼそっと口を出す。


「それは違うぞ、マリー。去年は、後一年後に邪神の使徒が来るから用意しておけという意味を込めて言ったのだ。お前は我の大参謀であろう!貴様がそれを読み取れんとはなんたることか!恥を知れぇい!!」


本当に恥を知ったほうがいい、マリーは口には出さないがこう思った。


「おい、思いっきり聞こえてるぞ?ふざけているのか?」


マリーはそっとルークから目を逸らす。


「.....今年は来るの?」


「あぁ、絶対に来る。準備しておけマリー。初陣はすぐそこに佇んでいる。」


やけに自信満々に答えるルークに私は近づいていく。


「何だマリー?我のサンクチュリアに堂々と入るとはなんたる...


体を思いっきり捻って腹、特に鳩尾に最大限身体強化した拳で腹パンをかます。


「ぐはぁ!?.......な、なぜだ?!裏切ったのか.....き、貴様ぁぁぁぁ!」


私はそもそも、ルークの大参謀になった覚えはない。


「初陣、すぐそこにあったね。ほら、かかってきなよ。」


私は、庭に落ちていた木の枝を持ってかまえる。木の枝に、闘気を流し込んで強度を底上げする。


「.....そんな棒切れで我がジャッチメント•アローに敵うと思うなよ、三下」


やけに様になった構えで武器として用いるのは、拳のみ。闘気の使えないルークの武器だ。


これが、ルークとのタイマンの流れ。私がちゃんと鍛えてあげないと、ルークはすぐに死んじゃうから毎日やっている。





ついでに、勝負は引き分けだった。




     ◇




「じゃあ、マリーちゃん。ルークちゃんをよろしくね。」


「はい、お任せください。」


セレナはルークをチラリと見て、何事もなかったかのように外へと視線を向ける。


「......おい、なぜ我には何も頼み事をしないのだ。」




この日は、月に一度の買い出しの日。我がラボは、街から離れた、いわゆるポツンと一軒家であり、近くには誰も住んでいない。


きっとこんなに街から離れた家に住んでいるのも、闇の組織に楯突いたからに決まっている。


食料などは、ラボの畑や狩猟で何とかなるのだが、日用品に関してはどうしようもない。



そこで、毎月召喚主たちは、街に赴くのだ。



君ら同志どくしゃには、われのいいたいことがわかるだろう?



そう、フラグは立っているのだ。



この召喚主がいない時に、我らは世界の闇の一端と交戦する。そして、世界に名を刻む。そんなフラグが。

 



「くふ....」


おっと、思わず笑みが溢れてしまった。



「ハイム、やっぱり前々から言ってたようにルークを街のお医者様に診てもらわない?」


なかなか失礼な女だ。すごく殴りたい。


「.....セレナ。この話は子供の前ですることじゃないと思う。それにルークは、どんなにおかしくても僕たちの息子だ。お医者様の見解だけで、ルークが頭の病気を患っていると決めるのは間違ってるよ。」


「ハイム、私そこまでいってないわよ?」


......あの、本当に殴ってもいいですか?


「んん!!まぁ、とにかくだ!ルーク、大人しくしているんだぞ!マリーお姉ちゃんに迷惑かけないようにな!」


「「じゃあ、いってきます!!」」


逃げるようにラボから出て行った、召喚主たち。


「くはは!行ってくるがいい。当文帰って来れると思うなよ。世界がお前たちを呪っているのだから!」


我はその背を見送りながら鼻息を「ふん」とならす。


おかしい子として見られていたという、悲しさと悔しさを乗せて。






     ◇






「.....ハイムさんたち、いっちゃったね。それでいつ来るの?」


こいつは、本当に厨二病の厨の字もない女だ。ストーリーの流れを全然わかっていない。


「まぁ待て。焦りは禁物だ。だが安心しろ、マリー。今回は必ず当たる。我の勘がひどく反応している。奴らがやってくるのはおそらく、明後日の朝か昼だ。」


「ついでに聞くけど何で明後日なの?まだまだハイムさんたちが留守にしている時間はあるよ。」


甘い!考えが甘いぞマリー!!


「よく敵を見据えるんだ、マリー。敵は、我らを子供だと認識し、召喚主たちがこのラボから離れて、街に着くのを待っている。それが明日の昼頃だ。」


こいつ、首を傾げやがって。まだわからんのか。


「いいか、敵の目標はおそらく我が召喚主たちだ。召喚主たちは、あんななりだが確かに強い。使えると思わんか?我らをとらえ、こう取引を要求するのだ。」


「私たちを無事に返してほしければ、こいつを殺せって感じに?」


「わかっているではないか。そうだ、奴らは我らを出汁に召喚主たちと暗殺の取引しようと目論んでいる。それを潰すには....


「「来たる奴らの襲撃に打ち勝ち、街へと召喚主たち(ハイムさんたち)を救いに行く」」


「ストーリーはこれしかない。わかっているだろうがマリー、準備を怠るな。この世の暗闇はすでにこちらを捕捉している。それをゆめゆめ忘れるな。」


ここから始まるんだ、我のストーリーが。


世界に名を残す厨二病に愛されし我の物語が!


「何でこんなに妄想だらけなのに筋だけは通っているのか。不思議であり少しムカつくと私は心の中でそう思った。」


「聞こえているぞマリー。まぁ、今にみていろ。」


「きっと奴らはやってくる」


正義や悪といった単純なものではなく、もっと欲に忠実な邪気と共にな。




      ◇




この時、空に浮かぶ太陽に一筋の影が落ちた。


それはまるで、まだ見ぬ狂気が太陽にほとばしるのを予期するようであったと言われている。


       

異人『ルーク』伝説 序奏より






あとがき



お読みいただきありがとうございます。もしよろしければ、評価、作品へのフォロー、コメントよろしくお願いします。



さて、やっとこの作品の入りの部分が終わりました。次話からは、物語が動き出します。ぜひお読みいただきたいです。







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