39 つがい

「ふう、終わったね。」


「あー、なんとかなったか。」


 初動のがたつきはあれど、連携が形になってしまえば無難に突破できる相手だった。そして今回コアを破壊した後は始祖龍の叫び声も出ず、壊れた機械の様に小さな振動を床に感じた後で動きがぴたりと止まった。


「それにしても、なんか今までのボスと少し変わっていたね。」


「うん?そうか?ドラゴニュートは俺の所でも出たぞ?」


「うーん、確かにそうっすね、ちょっと変かもしれないっす。」


「何が。」


「そうじゃな、立ち会ったボスは二体ともこの始祖龍が元となった様な力強い地龍の出で立ちであったが、こやつだけ翼があった。」


「そうっすね、うちが倒した方もおおよそそんな感じでしたよ。まあ、倒せたしこれで良かったじゃないすか。ほら、休憩もそこそこに早く出るっすよ、ここも崩れるっす。」


 そう言えばダンジョンコアを壊したらダンジョンは崩壊するんだっけ。一仕事を終えた感覚から気が抜けて座り込んでいたが、立つにも力が入らずボディアーマーのサポートを使って立ち上がる。


 そのまま皆で速足ながら、とぼとぼと来た道を歩きまた壁際へ。道中に魔物の姿は既に無いが、皆必要最低限の会話以外していなかった。疲れていたのだ。


「それじゃあ、わらわが開けるぞ。」


「ああ、んじゃ開けたら俺降りて、機体を展開する。そしたら甲板に降りてくれ。」


「わかったよ。」


 今回は時間がかかるだろうと言う事でリノトが壁開け。殴り飛ばして開いた入り口から顔を出し、下を見ると黒マナは消えていたが、逆に地面までの高度がよくわかった。


 だが俺はその高さにちょっと怯んだだけですぐに飛び降りる。これ投身自殺の挙動なんだけど、疲れているからかちょっと行動が大胆になっているな。


 直ぐに機体を展開しホバリング状態へ。三人称視点で皆それぞれが機体の背中の甲板に着地する様子を見た後に、徐々に前進し始祖龍から離れる。


 すると紫にきらめく草原と人々が。今回味方に来てくれた、主に純人側の人達がここまで進軍してきた様だ。きらめく紫は魔石なのだろう。結構魔物も多かったみたいだな。


 そのまま群衆の前に降りて、機体から出るとすげえ歓声が。しかし俺は喜ぶ体力も無いのだが、無視するのもアレかとひらひらと手を振る。しかしそこで龍化したアズダオが火をふいて皆を黙らせた後、機体の甲板に人化して飛び乗った。


「おお、アズどうした。」


「おかしい。崩れねえ。」


「何?」


「そもそも異常事態が重なりすぎてて何が正しいかわからねえが、本来この状態になったら始祖龍もダンジョンのように崩れて然るべきなんだ。だが崩れねえ上に、黒マナも漂うだけで霧散しねえ。」


 その話の後にリルウも甲板に降り立った。


「お疲れさまです。あとこれは女の感なのですが、何か足りないんですよね。」


「はあ。それは?」


「いえ、もし私が死ぬとしたらなんですけど。」


 何を言っているんだろうかと思いつつ、そこを突っ込む体力もないので呆けて聞く。


「旦那様の側で一緒に死にたいのですよね。」


「はあ。」


 そんなもんか?そんなもんかなあと思い始祖龍を見上げる。するとなんか、震えてる?


「あれ?」


「げ、まずい。」


 すぐにアズダオが反応、リルウも無言で構えたが、それは始祖龍に背を向けていた。


「は?」


 そしてその後で始祖龍の叫びと同時に、リルウの目線の先で爆発音!


「何!」


 そして砂埃を甲高い叫びと共に吹き飛ばし、今度は白い朽ちた翼龍が飛び出した!その姿は最後に倒したボスの様相に似ている。そして背後からも低い叫びが轟く。音に挟まれる中、龍二人が負けじと大声を出す!


「始祖龍、ドラゴンゾンビとして復活!」


「後始祖龍もう一体追加!恐らくつがいです!」


「えええ!」


 うちの龍二人はそのまま空の白龍に飛びかかる!俺は反射的にコックピットに飛び込むも、これどっち対応すべきだ!


「旦那!こっちだ!空の方!地龍は他に任せろ!」


「ええ、ああー、わかった!」


 その声が聞こえたのか、背中の甲板にいた皆も飛び降りる。そのまま俺は集団から離れた後に巡航状態で追撃!


「いや、まて!あれ本当に大丈夫なのか!」


 離れてゆく皆を見て改めてサイズ差が判る。これ踏み潰されるだけで全滅するぞ!


『大丈夫だ。まあ、面倒だけど、援軍頼んだから…。』


 すると元気のないアズの声が通信用の白石から聞こえる。そしてその後、ちょっと聞いた事のある声が。


『アズ様!それじゃあこちらは私に任せて!約束は守ってくださいね!』


「うん?誰これ。」


『フォシルだ。あいつはドラゴンゾンビが親だからな、専門家という事で依頼したんだ。ダンジョン化してるから無理と言われたけど今なら平気だろ…。』


「ちなみに約束というのはなんですか、アズ。」


「デートだって、できれば魔法で男に戻って。もう女が板についてきちゃったから嫌なんだけどな…。」


 本当にすごい嫌なのだろう、その為にアズダオだけ速度が落ちてたので俺の機体が追いついた。というかこれ怒るべきなのだろうか、嫁が男の時にできた嫁とデート…。一夫多妻の弊害でそのまま嫁に入ったから…、駄目だ複雑すぎる。考えるのあとだ後。


「というか追撃してるが、連戦は厳しいぞ。」


「私たちもです。魔力量については余裕ありますが…。」


「なら短期決戦だ!無茶を通すぞ!」


 気合いを入れ直したアズが再度加速。俺もロックオンをして引き金を引くも。


「ダメだ、当たらねえ!」


 距離が有りすぎてロック精度が低い!相手は空を旋回し弾を避け、白い大きな種みたいな物を撃ちだした。


「なんだ?」


 地面に着弾した種はそのまま変形し、灰色の魔物に姿を変えた。その目線は友軍の方だ。


「クソ!」


 両手のバズーカとライフルを一発づつ打ち込むと破壊。というか、こっちの射撃攻撃を一発耐えたぞ、結構強力な魔物だ。


「あー、これ一時撤退とか無理だな…」


 この魔物がバラ撒かれるとたぶん対処できる者はそう多くない。だがその魔物は数発程度で打ち止めとなったのが幸いか、本体を二人に任せて俺は撒かれた魔物を処理する。


 この機体であればこの程度の相手、物の数ではない。直ぐに殲滅し、改めて空を見上げるとやはり射程外。リルウとアズが応戦してるが押されている。


「はあ、やるしかねえか!」


 俺は白石ひっつかんでマルチプル緊急格納、そして。


「新型展開!二人とも今行くぞ!」


 俺はまだ名前も付けていない新型を展開して空に飛び立った。空戦開始だ。



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「クソ、強い!」


「疲弊もありますがそもそもが強いですね、この龍。」


 空中でにらみ合う龍三体。だが朽ちた始祖龍はその姿と相反する威圧感の元、力を溜める。


「来るぞ!」


 アズダオが身構えたその瞬間に俺は追いついた。


「こっちだ!」


 油断している背後に赤いレーザーライフルを打ち込む!足に命中!始祖龍は怯みこちらを見た。


「大丈夫か!」


「ありがとうございます。」


「これで勝ち目が出たな。」


 改めてレーザーライフルをチャージ、お互いの手口が解らない今、緊迫の一瞬が長くも短くも漂う。


「ギャ!」


 動いたのは始祖龍、突っ込んできた!距離はある、ならば。


「行くぞ!」


 こちらも突撃。組み付こうとしてきた龍に対して、


「おらあ!」


 蹴りを一発、怯んだ一瞬の隙にレーザーブレードを振りチャージショットを撃つも、ブレードは掠り、射撃は外れた。その移動は予備動作も一切なく、いきなり水平に動く様子だった。


「くそ、なんであんな動きができるんだ。」


「仕組みは先ほどの黒マナを腕にしていた始祖龍と同じです。ただこちらはそれを自身を引っ張る為に使用しています。」


 冗談みたいな水平移動だったがそういう仕組みか。こういう時マナや魔力が見えない俺は対処が一拍遅れてしまう。


「ならば!」


 こちらは火器管制を近距離型に変更!これであればあの移動速度でもロックが追従するはずだ。格納庫を起動し新型機体の組み替え画面に移行するが、なぜか動作が遅い。


「おい!逃げるぞ!」


「何!」


 そこでもたついたからか相手が逃げ出した。仕方なしにそのまま追従しようとすると。


「あ、やべ。」


「どうしました?」


 機体のブースト切れである。そう、この機体空飛べるのだが一時的なものなのだ。一応地面に着地しジェネレータを休ませれば再度飛ぶ事はできるのだが。


「なんじゃそりゃ、なんとかなんねえのか!」


「ゲームの仕様上そうでして…。」


 まだ平地だったのでそのまま着地し、地面を走りながら回復、再度突撃巡航状態に移行して二人に追いつく。


「おい、このままだと山岳地帯に突っ込むぞ!」


 アズがそう叫ぶと同時にその意味に気づく。そうなると地走する必要がある俺だけ置いて行かれる事になる!


「ならばここで!」


 追撃の今なら二人を巻き込まない!肩部ミサイルを発射!追撃時の今全弾命中し、始祖龍の体を消し飛ばしていく。しかし始祖龍はそれにひるまず飛び続ける!


「駄目だ、あいつもコアがあるっぽいんだ。そいつを壊さない限り止まんねえ!」


「しかも魔物の生成能力を自身の再生に回している様です。半端な攻撃では意味が無い上、強力な魔術はあの機動力で避けられるんです。」


 リルウの仰る通りにミサイルの再充填中にみるみる再生していく。


「こっちが真打じゃねえか!残業でやる相手じゃねえぞ!」


「弱音吐くんじゃねえよ旦那!とりあえず俺が掴んで引きずり落としてやる!」


 ここで気合いと共にアズダオが自身の翼に陣を描き、魔術ブースターを発動させて一気に加速!しかし後少しという所で山間部にたどり着いてしまった。その上でアラート音!


「げ、魔物射出!」


 始祖龍に肉薄していたアズダオに魔物弾が命中し墜落!


「うお!」


「おい、大丈夫か!」


 一気に距離が離れ見えなくなるが、間髪入れずに通信が入る。


『一応動けるが、これ放っておいていいやつか?』


「あ、たぶん駄目なやつ。」


『だよなあ!片付けたらまた追いつく!』


「頼んだ!」


 ここでアズダオ脱落か!ならば、俺が取り付く!ジェネレータの容量はまだ半分、今の内にブースターを換装して速度を上げる!格納庫起動!


「な、なんだ?」


 しかし起動した格納庫の画面はなぜか虫食い状態で、その上機体から軋み音が鳴り始めた。次の瞬間、一瞬で機体が消えた。


「ぬあ!」


「危ない!」


 そのまま空に投げ出された俺を後ろのリルウが掴んでくれた。その衝撃に咽るも、消えていないボディアーマーのおかげで体は無事だった。


「ゴホ、すまない。」


「背中に乗せます、後、通信はできますか?」


「あ、やべ、白石も吹っ飛んだな…。」


 リルウの背中で現状確認。格納庫を起動すると能力危険域の文字が。使い過ぎって事か、マルチプルと新型は起動不可と表示されている。初めて見たぞこの画面。


「すまん、機体が出せなくなった。戦力外だ。」


「いえ、まだです。あなたは勇者なのですから、その剣があります。」


「え?」


 そう言われて腰に手をやると、確かに刀は先の衝撃でも変わらず腰にぶら下がってる。


「取り付いてコアを破壊しましょう。」


「嘘でしょ、空で?」


 すごい嫌な案が出てきた。

 

 

-----------------------------------------------------------------------------------



 その後で運よく空中で始祖龍を追い続ける硬直状態に陥った。どうも始祖龍側は飛行時でもマナ消費をしており、その使用済みのマナをリルウが吸って飛び続けられるという異世界スリップストリーム状態で相手を疲弊できるとの事だ。


「ですが黒マナなので、たまに首ポンポンお願いしますね。」


「はいはい。」


 そう言うリルウに首をポンポンしてやると黒マナもポンという音と共に剥がれていく。そしてその間に俺は格納庫から予備の小型白石を引き出し、耳につける。


 この硬直状態にどうせだからと水や食料を食べて一息入れる事が出来たが、しかしこのまま飛び続けるわけにもいかない。取り付くタイミングを悩む途中で、相手が動いた。


「急旋回します!摑まってください!」


 いきなりのリルウの声に驚きつつ、返答もせずに抱き着く。左旋回なのか、左内股に力を込めた上で全身でリルウにぎゅっと抱きつく。


「何だ?」


「攻撃です。」


「なんのだ?」


 一応始祖龍を見ていたが旋回している以外に変化は無かった。しかし、しばらくして矢が流れてきた。矢?


「鳥の国に入ったので、鳥人達が追い出す為に我々を攻撃して来ています。」


 そっちかよ!そういや獣人連合国の東の山岳地帯は鳥の国だったな、そこに入ったという事か。


「ですが好機です!始祖龍が回避の為に速度を落としてます!」


 機会がやっと来た、というか半分来てしまったかといった気持ちで俺は腰の刀を確認していると、まさかの白石から通信が。


『そこの龍、止まれ。領空侵犯だ。』


 それと同時に前方から火を噴く翼が。アズか?だが、来る方向が逆だし炎の量が多すぎる。


「おや、鳥の国の王、不死鳥ですね。一応訳を話していただけませんか。」


「え?あー、わかった。」


 そのまま白石のオープン通信で交渉、すごい舌打ちとため息の元、協力を取り付けた。


「オッケーだ!一応援護してくれるって!」


「ふふ、それじゃあ私の方にも矢が飛んできた事は許しましょうか。鳥だけに良いダシにしましょう。」


『ふん、その龍の頭も腐っているんじゃないか?』


 やめてよぉ。ここで種族間の仲の悪さ出すの。



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 この協力のおかげで始祖龍は方向をUターンした上で追いつく事が可能となり、作戦の目途がたった。だが。


「それでは準備良いですか?」


「ほんとにいくのお?」


「ふん、純人ごときが空に来るからだ。」


 その作戦は、リルウがブレスで始祖龍に穴をあけ、そこに俺を投げ込んで勇者の刀でコアを破壊し、不死鳥がキャッチするという物。


「それでは!」


 矢が流れる中リルウがマナブレスを収束させて始祖龍の上から照射、胸部に直撃した。それと同時に瞬間的に加速して一回転半捻りの間に投擲フォームに。


「行きます!」


「おう!」


 下手に迷った方が危険だ、覚悟を決める!今回リルウが俺にバリアを張ってくれたが、これは風の影響が受けない為の物で、物理障壁は一切ない。


 投げ出され重力加速を越えて落ちる嫌な感覚の中、集中強化を起動しながら大腿部ブースターで姿勢制御、軌道予測から体の位置の微調整を行う。


 投擲の精度はよく、位置決めよし。集中強化を解除してそのまま直進。


「見えた!」


 コアを確認!集中強化再起動!同時にコア破壊用の数珠を潰しアタッチメントを使用する。破壊の際、突きだとそのまま引っかかって軌道が反れる、ガルムの様に切って破壊を狙う!


 大腿部ブースターで空中でも斬撃の反力に耐えれるように備え、刀の振りはミズタリで習った刀の型をそのまま行う!


 この斬撃で命運が決まる。緊張のままコアを見つめるが、集中強化故に長い、長い時間がかかる。


 その間にこの足の踏ん張りの効かなさにいらつく。今の状況を考えると、なんか正座状態でローションの上をすいーっと滑って切る感じかと思って一人吹き出す。


 そんな馬鹿な事考えていたらコアは目の前、これでミスったら本当に馬鹿だぞ!


「今!」


 鞘から抜刀!一刀目が入るも妙に重い!違和感を感じながら急ぎ二刀目!


ガギン!


「何!」


 違和感所か完全に弾かれた!のけぞった体を急ぎ安定させ、納刀する刀を見ると光が前回よりも弱い。


「まさか初期不良?」


 くそ、ぶっつけ本番だからか?後悔と共に空で力が抜けた後、目の前に大きな鉤爪が迫る。不死鳥の足だ、遠目で見ていたがやはり結構でかいな。一応、念のため集中強化して確実に爪の元を掴む。


「やったか?」


「駄目だ、失敗した。」


 始祖龍は少しの失速の後に急速再生して再加速、獣人連合の方へ向かう!


「すまんリルウ、失敗した!コア破壊がうまくできなかった!」


『それなら、もう一回です!』


 この一回で心折れた俺に対し、彼女は変わらずだった。そこで不死鳥は体を翻してリルウに俺を投げた。


「うお!なんだ!」


『もうそろそろ鳥の国を抜ける。ここまでだ。』


「中途半端ですねえ。」


『王が先陣を切る必要などないだろう。』


 一瞬、え?と思ったが常識考えればそうだよなあ。


『待て、あれはなんだ!』


 急に焦る不死鳥は嘴を遠くに刺す。その先にはあの巨大な方の始祖龍が崩壊していた。


「よし、あっちは仕留めたな!」


「そうです、ならばもう一体、もう一度行きましょう!」


『何!あんな山一つの大きさの、あれをやったのか!』


「そうだよこっちは連戦で残業なんだよ。だがまあ、協力感謝する。」


「行きましょう、ミズタリの王。」


 協力に感謝はするが散々悪態つかれながらだったので、ここぞとばかりに皮肉を込めたら説明口調になってしまった。しかしこの時ばかりはリルウも俺も息が合っていた。


「それじゃあ、アズダオ呼んでもう一回だ!」


「わかりました!呼びます!」


 その後しばらくすると、地面の始祖龍から赤い光が飛んできた。恐らく魔物の処理をした後、あちらの加勢に行ったのだろう。


 空の始祖龍はアズダオを避ける様に空へ上昇を始め、赤く光るアズダオも我々と合流して三人で始祖龍を追撃する!


「てめえ!あの呼び方はねえだろ!」


「あん?リルウなんて呼んだんだ?」


「ふふ、犬の国で聞いた、迷子の子を呼び出す放送をフィルのネットワークに流しました。」


 それを聞き俺は一つ大きく噴き出した後、作戦を説明する。内容は先ほどの勇者投擲コア破壊のキャッチがアズダオに変わっただけだ。


「はあ?馬鹿かなんだその作戦!」


「もう一回やってんだ!刀が機能すれば確実に仕留めれる!」


「行きますよ!先の攻撃のおかげか始祖龍も速度が落ちています!」


「ま、まて、ここ高すぎて火がうまく起こせねえんだ、速度が…。」


「私も高度高過ぎてマナが無くなってきました!急ぎで行きますよ!」


「おっしゃ突っ込め!」


「クソ、ヤケだ、やってやる!」


 ここに居る空の三人はもう疲労で逆にハイになっているなあという自覚の元、皆がそのテンションにそのまま乗る!


「行きます!」


「おう!」


『来い!』


 再度ブレスの後投擲!二度目の重力加速度越えだが、慣れか覚悟か怯みは無い。そのまま位置調整を行いあっという間に突入位置につける。地面が丸く見える程の高度だ、一応この世界も球体なんだな。


 数珠の最後を割り、ローション正座居合突撃の構えを取る!一瞬だけ刀を見ると、まばゆい光が。


「いける。いけなくてもやってやる!」


 そのままの勢いで斬る寸前で雑念を取り、集中強化の元、型通り丁寧に一刀、二刀と切り結び、我流の三刀目も入れてコアを通り過ぎる。


 引っかかりも無く安定した斬撃。納刀の後、始祖龍の体を通り抜けた辺りで仰向けになり、コアを見ると斬った方向に吹き飛んだのが見えた。


「よし。」


 そのまま脱力しつつ落下姿勢を安定させるとアズダオが優しくキャッチしてくれた。ありがたい、斬った後、どうにもならない強烈な疲れが襲ってきたんだ。


「やったな!やったぞ!」


 アズダオの声の後に甲高い龍の断末魔を聞く途中で、意識が無くなってしまった。

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