18 歪

「あ、おはよう。」


「おはようっす。」


 そう言ってヤナは足元をかけていく。雑巾がけだ。あれから片目の色は相変わらず青だが彼女の体もすっかり治った。


 そして体の具合に反比例して顔色が悪くなっていったが、その理由が判ったのは前の会議。前回の潜入ミスと俺の脱出リスクを作ったという事で罰則が発生しており、結構きつい話も出たのだが、俺がフォローして王宮掃除一カ月となった。


 結構大きい王宮は全部やると一日かかるだろう。なので早朝から分割して掃除をしているようだが、かなり真面目に頑張っている。何よりも会議中黙っていた彼女が一番きつかっただろうとも思う。


「勇者さまおはよう!」


 そういってオシュが玄関から入ってくる。朝の配達から戻ってきた模様。修行が終わり、弓をメインに相当強くなった上、近接ではかなり強力な蹴りが撃てるとの事。十二分に生身の俺より強くなって帰ってきた。


「ねー、また乗ってよー。」


 早速そう言ってくるが、そういえば修行も相まって全然乗ってあげてないなと思っていると、通路に刺す朝日が埃を映す。埃の元を見ていくとオシュの尻尾からだ。


 今かなり尻尾を振っているが、あの埃は走っていた時の土埃だろうか。ふとヤナの足音が聞こえないと思ったら廊下の角から覗いている。その表情は怒り半分、困惑半分といった所か。


 せっかく掃除したのにと、それでも会議の時フォローしてくれたオシュだし、とで絶妙な顔をしている。そして俺の視線に気が付いて引っ込んだ。


「まあ乗る前にお前の弓の新調かな。」


「え、新しい弓?」


「ああ。」


「うーん、でも僕弓はそんなに…。」


 かなりセンスがあるらしいが。だが弓自体がそんな好きではない事は、ある意味でいいことなんじゃないかなと思いつつ一緒に朝食に向かった。




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「よし、それじゃあポータル開くねー。」


「ああ、たのむよ。」


 そう言ってガルムはポータル前で構える。一度大切な物を取りに戻りたいという事だが、魔力を感知されてこちらに押し入ってくる可能性もある。速攻でとり、戻ってくるという構えだ。


「はい!どうぞー。」


「え、あれ?」


 ポータルを開くと前には沢山の兵士がばたばたと動いていた。


「見つかったか!」


「いや、痕跡もまだだ!」


 そう言っているのを呆然と見ていると兵士のうちの一人と目があった。一拍置いた後、


「なんだ、あれは!」


 そう言うと兵士全員がこちらを見た!


「やっべ!」


 急いで閉めなければと思うがフィルは焦るばかりで動けてない。一応ボディアーマーを展開済みの俺は、まずいと思い緊急用のハンドガンをポタポタ石に向かって撃つ。一応フルオートなので数発当たるとバグって音と共にポータルが閉まる。一息つくと今度はフィルが青い顔をする。


「バカバカバカ!急いでにげるよ!」


 え?と思い呆然としてるとフィルはガルムの手を引いて逃げていた。なんで?と思いながら一緒について行くとバギュン!という音と共に何かが爆ぜた。部屋の方に戻ると部屋が球形に消滅していた。


「空間いじくる物なんだから、急に壊したら異常動作で周辺の空間を吹き飛ばすの!あー、もう。ポータル用の部屋が…。」


 その被害と扱っている物の力に恐れ直すが、それでも緊急時であった事は確実なので追及はされなかった。一応周辺が吹き飛んだ為に大工の親方に連絡を頼むと王宮の侍女にお願いして、その場はお開きとなった。だが俺とガルムは居心地悪い故に散歩に出て行った。


「はあ、全くやばかったなあ。ところでその大切なものって何だったんだ。」


「絵本だよ。」


「絵本?なんで。」


 何となしに話を聞いたら、大切な物がたかが絵本であるという事に怒りが出て来るが、そもそも吹っ飛ばした判断は自分なので抑える。


 だがその怒りがガルムに伝わったらしく、耳と尻尾が下がっていた。


「あの本は僕の外のすべてだった。僕にはあの部屋と、実験室と、その本しかなかったんだ。」


 ガルムはそう力なく言うと歩きながらも下を向いた。ポータルを開く前ははしゃいでいるのが見て取れた分、絵本と言えど大切な物だったのだろう。


 仕方なしに頭を撫でてやると耳が段々と立ってきた。10秒撫でると尻尾も振っていた。意外とタフだ。


「んじゃあ山でも散歩しようか。」


「わかった!」


 声にも大分元気が戻り山へと進むが、その際にメノウとすれ違う。


「あ…。」


 目が合うとメノウはスッと道を譲った。この反応は会ってからしばらくしてだが、何となくメノウとリノトはガルムを避ける。理由はまだ聞けてない。


 なので俺が声をかけようとするが、ガルムは軽く会釈をして足早に道を進んだ。それに気が付いた俺もすまんと一言言い、ガルムを追いかけた。やはり国家間の立ち位置からして、いろいろと思うところがあるのだろうか。しばらく歩いた後にガルムに話しかける。


「なあ、メノウは苦手か?」


 その言葉を聞いたガルムは少し困った顔をした。


「なんというか、避けられているんだ。何かしてしまったのかもしれない。」


 そう苦笑する彼女は寂しそうだった。その後無言で先を進み、湖へと出る。それを見たガルムはわかりやすく目を輝かせ、わあと小さく言って湖に近づいた。俺も近づき湖近くの切り株に腰かける。すると水柱がざわざわと音をたてながら大きくなっていく。


「お久しぶりです、龍神様。」


「うむ。」


 そう言うとそれにもガルムは目を輝かせた。珍しい物が見れてうれしいのだろう。微笑ましいが、冷静に考えれば生前でも普通に目を輝かせる案件か。そんな事を考えると龍神様もガルムをじっと見た後口を開いた。


「なんだ、その気味の悪い生き物は。」


 その一言に俺とガルムは固まった。


「なんだ、あまりにも、歪すぎる。なんなのだ。お前は。」


「僕、ぼくは。」


「すまぬ、王よ。できれば遠ざけてほしい。」


 龍神はそういうと水となって戻っていった。残されたガルムはうつむいている。俺が急いで近寄ると耳をびくっとあげて、


「あはは、嫌われちゃった。」


 そう苦笑した。今回は頭を撫でても復活が遅かった。そして散歩ついでにご神木の方へも行ったが、そこでも似たような事を言われ、王宮へと二人で戻る事にした。食事をしても、ガルムの元気はその日戻る事はなかった。




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「はあ。」


 次の日に縁側でため息をついてガルムの事を考えていた。なんというか、王宮でもちょっと浮き気味であるとの事。


 仲良くしてねと話すのも難しい。そもそも多妻の状況でなんやかんやうまくいっていた事が奇跡であったかと考えなおし、改めて悩む。


「おぬし。」


 後ろから声をかけられる。


「リノトか。」


 そう言うとリノトは微笑み、ゆっくりと隣に座った。


「どうなんした。」


「いや、そうだな。あー、ガルムの事だが。」


 そう言うとリノトはぴくりと反応した。そういえばガルムはリノトとも仲が悪いとも言っていた。だがリノトは立場的にも嫌う理由は多分にある。あまり相談すべきではないかもしれないが。


「あの子か…。」


「あー、何が嫌なんだ?」


 単刀直入に言う。嫌な顔をしながら、陰口でも来るかと身構えるもその反応は意外であった。


「なんでー、なのかはわらわも判らぬ。」


 その表情は戸惑いであった。


「ただ、なんというか、敵国の娘である事以上に、とても歪な感じがしてしまっての。」


 そう口元を隠しながらリノトは言う。そこで気になったのは龍神たちと同じ、歪であるという言葉。ある意味で皆その感想が共通している。こうなると、恐らくメノウもそうなのだろう。


「うーむ、すまない。だができれば仲良くしてやってくれ。あいつも外に出られてうれしいはずなんだ。」


「ぬう…。」


 そう言ってジト目でこちらを見るリノト。だがそんな目を向けられてもこれは大切な事だ。


「頼むよ。」


「むうう、わかり申した。」


 そう言うといそいそと立ち上がるリノト。だが、このままだと要らぬ禍根ができるかもしれない。


 更に唸りながら悩むと庭の先に見える通路に三人一緒に歩いているのが見えた。それはテト、アズダオ、そしてガルムだ。ずいぶんと珍しい組み合わせを見て俺は立ち上がり彼女達へと向かう。


「おお、何してんだ?」


「ん、旦那か。」


「おう!旦那もくるか?」


 そう挨拶する二人と後ろでもじもじしているガルム。目を向けると笑顔になる。


「んで何しに行くんだ。」


「ああ、組み手だよ組手。前はリルウに頼んでいたんだけどあいつ付き合い悪くて、最近はアズダオとだからさ。それに一応、ガルムもどんな腕か判らねーから一緒に誘ったんだ。」


 よかった、なんかいじめみたいなもんかとひやひやしていたが、こいつらのカラッとした人間関係はとても助かる。だが押しが強かったのかガルムはちょっと迷っているみたいではあるが。


 なおリルウは最近フィルと一緒に居る事が多いらしい。それでも偶にアズダオが喧嘩売りに行って返討ちにあっているそうだが。


 そんな愚痴を聞きながらついて行くと荒野のような場所に出た。辺りを見て気が付いた、ここ前リルウとやった演習場か。確かに二人の戦闘だ。室内じゃ持たない。


「そんじゃあ、二人は見ていてくれ、やんぞテト。」


「おうさ、いくぜ!」


 そう言って光る爪を出すテト。アズダオは体躯が小さいが手足を上手く龍化させて光る爪をさばいている。巻き立つ風から結構な速度であるが、なんというか、俺もちょっと見えるようになってきていた。


 意外と強くなっているのかも。思い返せば結構いろいろ頑張ったものなあ。ガルムの方も見ていると目を輝かせていた。意外と戦うの好きなのか。


「うっし、こんなもんか。旦那もやるか!」


「いえ、遠慮します。」


 能力使って頑張ってもいいが、ちょっと怯んだ。だが横のガルムは立ち上がった。


「僕も少しやっていいかい?」


 そこに居た三人が思わぬ進言に驚くが、二人は笑っていた。


「んじゃあ、どっちとやりたい?」


「テトさんとで。」


 へえと思うとアズダオが笑いながら暫定観客席のこっちに来た。入れ替わりでガルムを見送ると、テトは改めて光る爪を出し直した。その爪は四対である。そして対するガルムも腕を振り上げ気合いを入れるとテトと同じ用な爪が横に発生した。


「何?」


「えへへ。」


 だがガルムの爪は三対だ。しばらくじりじりと間合いを確認しているが、動きも無いのに横に居たアズダオが目を凝らしてガルムを見ている。


「なんだ、ありゃあ。」


 その言葉が気になっているとガルムの光る爪が飛んだ。また三人が驚く。というのもあのテトの光る爪は手の甲を起点に連動して動くものなので近接武器だ。


 なのにガルムのは5メートルほど飛んだ。驚いたテトは掠ったのか出血が見える。だがテトは焦らずにそのまま飛び込んだ。するとガルムの爪は戻り、テトの爪とかち合う。その時には火花が散った。


「ありゃあ、魔導だな。見たことがねえ。」


 そうアズダオが言う。そして互いが武器を擦り合うが、明らかにテトの方が動きが速いのにガルムは緩慢ながらも爪自体が自在に動く故に手数が多い様だ。そして、


「が!」


 テトが蹴り飛ばされて起き上がろうとすると周りがガルムの爪で埋められていた。まずいと思い前へ出ようとするが。


「があー負けた!」


 テトがそう言って寝っ転がるとガルムの爪は彼女に戻っていった。息を切らせながらもガルムが笑っている。その様子に安心すると今度はアズダオが声を上げた。


「次俺な!」


 そういって手を上げながらガルムに歩いて行く。ガルムも、ええ?という顔をしているがため息を吐いて向き直っていた。


 そしてとぼとぼとテトが観客席のこちらに戻っていく。すれ違いざまにアズダオが、


「俺との組手で正面から行く戦いに慣れちまったのが敗因だな。」


「くっそ、やっぱそうだよなあ。」


 そう言って肩を落とし直してた。隣にドカッと座るテト。そして改めて戦うが、今度はアズダオがガルムを圧倒していた。


「むむう。」


「あっはっはっは、お前戦い方がリルウと似てるな、でも性格が良すぎるぜ。」


 悔しそうにしているが攻撃を龍腕と炎でうまくしのいで、本人同士でのパワー勝負になると差が圧倒的だった。


「もういっかい!」


 倒れた体を起こしたガルムの第一声がそれで少し安心したが、


「何言ってんだ先にこっちだ!」


 テトがそう言って飛び起きて向かっていくのをみて微笑みは苦笑となった。結局回数を重ねていくとテトも見切ったのか、最終的には安定して勝てるようになっていった。


 結局夕方までやって、俺も数回だけアーマー着て参戦させらて四人で帰った。こうやってテトは修行していたのか。どうも最近は五本目の爪が出そうだという話だ。確かに組手中に爪が変に光る時があった。


 また後半負け続けだったガルムは、アズダオからいろいろレクチャーを受けていた。どうも魔力で出来ている爪なので自由がきくらしいが、そもそもとしてエンチャントに近いらしく、光る爪そのものもあり、それを魔力で大型にしているのだそう。テトが言うには光る爪は猫族が持つもので、犬族が持つ話も聞かない上、猫族は魔法が使えない種族らしい。潜入前に言った言葉が本当になっていまったようだった。




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 翌日はアズダオの進言もあり、ガルムと二人でフィルの所へ行く。すると一緒にリルウもいた。ちょうど良いので魔法、魔術の訓練を依頼してそれに立ち会った。


 するとガルムは魔術は苦手の様で、魔法はちょっとできる。だが首をひねりながらやっていたので本人的にはそんな得意ではないようだ。


「うーんガルム、昨日やった爪もう一度出してくれない?」


「え、ああ。」


 そう言って爪を出してもらう。すると先生二人の目つきが変わる。


「これは。」


「魔導ですね。」


「へー。」


 そう言われてもいまいち解っていない俺だが、試しにとフィルがガルムに短刀を持たせて使ってみてと言われると、ビームソードが出来上がりこれには俺だけが感動していた。


 いろいろ話をした結果、魔導士、というか格闘能力もある為に魔導戦士となるらしい。


「なんか、いろいろあるんだなあ。」


 部屋を出てしみじみと言うが、気力と魔力の併用は割と純人以外では前代未聞らしく、先生二人の目は興味津々だった。なので魔導力を強化するならばジンウェルの女王に話を聞くべきではとの事。


「ただ、旦那様が一緒に行くなら絶対お守りは持って行ってくださいね。」


 そういうリルウは真顔であり、残り二人も真剣に頷いていた。





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 今日はまた三人の組手の見学を行っていた。今回は俺もちょっと積極的に組手入りたいなという腹積もりもあった。


 というのも昨日ジンウェルからの魔導技術士団が来て、土木作業の立ち合いを行ったのだ。土と岩からゴーレムを作り出していたが、なんかゴーレムの形状が俺の機体っぽい。


 というのもこちらのマルチプルを参考にしたとの事。それのおかげか速度、精度が上がったようで、頭数を複数確保できる向こうの方が仕事が早いかも、という話が出ていた。


 ちょっと面白くない俺が作業後に向かうと、握手を求められる。曰く、星を貫いた時避難先で見ていたのでファンなのだそう。尊敬の眼差しの前で何も言えなくなってしまった。


 一応、俺の仕事を無くすわけではないが、今後の土木はジンウェルの魔導士がメインとなる話になった。そしてジンウェルからゴーレム職人を何人か常駐させるという話も決まった。


 そのため仕事が一つ奪われた感じとなってしまい、ちょっとした憤りが今の気合いになっているのだ。


「なんかすげえ粘ってるなガルム。」


 今はテトとガルムが組手をし、横でアズダオが魔導の使い方を見るという流れとなっている。結局ジンウェルの魔導技師団も戦闘経験が無いのでアドバイスが出来ず、手探りでやる事となった。だがアズダオ曰く、教えたら教えた分だけ強くなるので二人も楽しいそうだ。


「旦那様。」


 シュッという音がして上からヤナが降ってきた。一応周りを見ると木も何もない平原である。どっから降ってきたんだ。


「ちょいとお話しが。」


「ああ、なんだ。」


「ガルムの事なんすけど。」


「ああ、まあ、話してくれ。」


 そういいながらガルムの組手を見る。お、テトがまた押し始めた。


「彼女、犬の国の頭領の娘らしいっす。」


「なにい!」


 驚きそう言うと、その声に驚いたのかガルムのカウンターをもろに喰らったテトが吹っ飛んだ。


 そして組手組三人から説教を受ける羽目になるが、その件を遮ってヤナが緊急会議を開く事となった。




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「ええと、あの後旦那の回収した書類の中から面白い物みつけまして。」


「というと?」


「一応ガルムは魔導技術で作られた人間である事は間違いないっぽいっす。」


 そう言うヤナに疑問が出る。


「あれ、ヤナ英語読めたっけ?」


「いえ、うちはエイゴとやらは読めないっす。ですが普通の文字で書かれている書類に面白い物があったんすよ。」


 そういって胸から紙を取り出すヤナ。おお、このアクションを生で見る事が出来るとは。だが胸ばかり見てもられず取り出した紙の方を見る。すると、報告書というよりもチラシがあった。


「神の親?」


 なんというか、プロパガンダ広めるやつみたいな奴だった。


「犬の国は今、ウォーローというおっさんがトップっす。更にこいつが今独裁しているんすが、どうも強権すぎて内部で不満がたまってるらしいんす。それで内部を安定させるために象徴としてガルムを作ったらしいんすよ。」


「はあー。んでもなんで神の親?」


「どうもこの神ってのがガルム本人、そしてガルムを作るのにこのウォーローの種使って作ったらしいんすよね。」


 うーわー、気持ちわる。そしてあっと思いガルムを見ると暗い顔で俯いている。そして俺の視線を感じたのかこちらに振り向くと、


「いや、いいんだ。僕も自分が何者なのか、知りたかったんだ。」


 そう頑張って笑顔を作っていた。かける言葉を迷っていると会議室前の廊下から走る音が聞こえてきて、大きな音をたてて扉が開いた。


「大変です!」


 入ってきたのはメノウだった。会議の最初にはいたが、途中で抜け出していた事に気づかなんだ。だがその焦りようは見た事のない物だった。


「なんなんだ?」


「犬の国から宣戦布告が届きました!」


 流石の展開でその言葉の意味が頭に染み渡るのに数秒の時間を要したが、理解して頭を抱えた。

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