第15話 異世界転生核兵器部

小生の体に痛みはない。魂だけが『川』に吸い込まれ、光速に近いスピードで動いている。それによりウラシマ効果が発生し、肉体はあと数秒で死ぬが魂はのんのんとこの中で生きていた。ブクロ氏も、グラも。キリもマイも、そして巨悪も。肉体が死にかけて魂が体外に抜け出しつつあり、現実に戻った瞬間死ぬだろう。


「終わりは必ずやってくるのだ」


と巨悪に言った。巨悪はぼろぼろと涙を流している。膝枕。その涙は小生の顔面に直撃する。あたたかい雨だ。この雨に打たれながら死ぬのなら、わるくない。


「巨悪よ、最後に伝えたいことがある」


「・・・うん」


「我々は魂状態である、そして、川、はウラニウム濃縮装置である」


「・・・」


「魂状態で我々は川に引き込まれ、お互いのイメージを共有することになった、どうゆう作用でそうなっているかは謎だ、できれば研究テーマにしてみたいものだな」


「生きていればね・・」


「うむ、そしてここからが小生の仮説なのだが、魂状態でも川の内部にいるのだから、おそらく大量のウラニウムの中に我々はいる、そしてまちがいなくウラニウム235もこの中に存在している、もともとそれを集める装置なのだからな」


「・・・」


「天然のウラニウムの中にウラニウム235は0.7%しか存在しない、これは臨界量まで集めるにはかなり絶望的な数字だ、おそらく何回も何回も川にウラニウムを投入して、やっと臨界量10㎏の核燃料を集めることができる、だが、今の我々にはもっと効率よくやれるはずだ」


巨悪は何も言わない。


「1㎏でも純粋にウラニウム235を集めることができれば、おそらく自然臨界に到達する、宇宙から降ってくる中性子にそれが当たれば、川はJ-PARKごと破壊されるだろう、100%、ウルトラピュアなウラニウム235の塊は、おそらくこの宇宙が始まって以来精製されたことはないだろう」


・・・


「これを」


と巨悪の手に指輪を渡した。


「ブクロ犬が巨悪に渡したのもこの指輪だな、ブクロ氏も気づいていたのだ、この世界でウラニウム235を集めることができることを」


「・・・これ、ウラニウム?」


「うむ」


「どうやって集めたの?」


「光速で飛ぶ戦闘機に乗って、窓から手を出してみた」


「そんなことが・・?」


「できるのだ、この世界では、イメージさえできれば何でも可能だ」


「じゃあ、この指輪を集めれば・・」


「臨界量のウラニウム235を集めることができる、そうなれば、後はゆっくりと中性子が降ってくるのを待てばいい・・・・」


この世界が憎いなら、核兵器でぶっ壊してかまわない。


「ありがとう、巨悪よ、愛している」


そうして小生は消えた。


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