第12話 変身

「・・・・犬?」

全員が顔を見合わせる。


「グラちゃん、犬ってなんノコト?」


「う~!」


「教えて、犬って?」


「犬!」


「だめだな」


「う~!」


グラがマイの腕を振りほどき、こちらに襲い掛かってきた。その両手首をつかむ。グラは馬乗りになって「犬!う~!言葉出ない!」とボロボロ泣き始めた。


「なんのことだ?」


「文脈から読むと・・・」とキリが話し出す。


「順番?」


コクリとグラがうなずく。


「順番?お前の前に犬がいたのか?」


「違う!」


「じゃあ、お前の後に犬が来たのか?」


コクリ。


「・・・・・なんということだ」


「グラちゃんがやってきて、犬がやってきたということは、順番的にブクロ君が犬ってことになるね」


キリのその言葉で巨悪が青い顔をして話し出す。


「じゃあ、犬ってもしかして・・・わたしをここに案内してくれたあの黒い犬・・あの犬が島袋さん?」


「山月記か・・・」


国語の時間でやっていた山月記のようだ。あの主人公は虎になったが、ブクロ氏は犬になった。なぜ犬に?故郷を創造したのなら、せめて人間になっていればいいのに。

「人間嫌いのブクロ君らしいといえば、らしいね」



「Why he come turned a dog?」


「でも・・でも・・・そういわれてみれば・・・たしかに島袋さんだったかも・・」


「巨悪よ、なぜそう思うのだ?」


「なんか、そう、いきなり指輪とか・・・まえにもいきなり告白してきたことがあって・・」


「告白?なんの告白だ?」


「ホシミー、告白といえば一般的には愛の告白のことだよ」


「そうなのか?」


巨悪はぐすぐすと泣き出してしまい、答えることができない。


「ここではなりたい存在になれる、島袋氏は犬になりたかったのかな?」


そう言ったキリにグラが襲い掛かった。


「違う!」


「ちょ、どうした?」


「違う!!」


「だから何が違うんだ!」


「人!」


「犬だろ」


「人!」


「助けて!マイ!ホシミー!」


暴れるグラを羽交い絞めにしてキリから離しにかかる。少女の姿をしているとはいえ、とんでもない力でキリにつかみかかっていたのではがすのは大変だった。マイは助けもせず、ただ呆然と立ちすくしている。


「マイよ、手助けしてくれ」


「マイ!」


「・・・・・・」


・・・・・マイ?


バタバタ暴れるグラを後ろから抱きしめて、小生はやっとマイを見ることができた。マイは一歩も動かずに立っている。グラをなだめるのはいつもマイだったので、予想外の反応であった。


「・・・・そっか」


とマイは言い、涙をぼろぼろと流し始めた。


「何かわかったのか?」


「うん・・・・ミスター島袋は、最初は人だったんだね」


グラは「そう!」と叫んだ。

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