第6話 北緯26度の知らない校舎
「ここはどこなのだ?」
と小生はキリに尋ねた。
「どこだとおもう?」
とキリは答えた。
小生たち一団はぞろぞろと廊下を歩く。キリ、小生、巨悪、マイ、グラ。HRが終わって廊下には生徒、喧噪があふれ、若い人間特有のエネルギーがみちみちている。廊下を突き当りまで歩くと階段があった。階段を降りると1階で、そこから外に出られる。大きなドアを開いて外に行く。渡り廊下になっていて、旧校舎へとつながっている。間違いない。わが母校だ。なので「東京の府中にあるわが母校だ」と答えた。「ふうん」とキリは言った。
「ここまでは、わが母校だ」「ここまでは?」「こんな旧校舎は無かった」「そうなんだ」「なあ教えてくれ、ここはどこなのだ?」「東京ではないと思う」「では、非常によく似た校舎なのだな」「いや、君の母校で間違いない」「だが・・・」
と、同じ質問に戻ってしまう。小生、そのような愚を嫌っている。キリは考えろと言っているのだ。考えもせず答えを欲しがるのは西岡研にはいない。さあ、考えろ。
「観測する」
と小生はつぶやいた。こう言っておくのが西岡氏にマナーだと教わったからだ。風、太陽の角度、時刻・・・北緯26度ぐらいか!?遠くから何かが接近する音、ゴッ!!と音の発生源が突然現れて消えた、戦闘機だ。
・・・
場所は確定できた。だが、なぜここにわが母校があるのかがわからぬ。それに巨悪の実家はどこだったか?そうだ、いつぞや「私は北海道の出身だよ」と言っていたのを思い出す。うむ、ヤツは北海道の旭川市がふるさとだったはずだ。そもそも、われわれは福島県にいたのだ。なぜ、ここにいる。理由は1つしかない。だが、それはここがどこか?の答えにはなっていない。
整理しよう、疑問は2つある。
なぜ、ここにいるのか?
と
ここがどこか?
の2つだ。この2つの答えにたどり着けば
この現象はなんなのか?
の答えにもつながる。
小生は目を見開き、目の前のキリに言った。
「ここは沖縄だ」
太陽の高さと方角が分かれば緯度が計算できる。北緯26度。そこにあるのは日本では沖縄本島しかない。
「うん、正解」
「では島袋氏はどこにいるのだ?」
ブクロ氏。最初に殺された人物。彼は沖縄出身だ。「なぜ、ここにいるのか?」という問の答えは「最初にやってきたのがブクロ氏だから」となるのだろう。小生にとっての教室、巨悪にとっての実家のように。ここでは人物が建物や環境に影響を与える。というか作られる。やはり夢のような世界だ。
「そこまで理解できたのなら次のステップに進もうか、じゃまずはボクの視点からのこの世界について話そう」
と、キリは言った。
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