第2話 夢と殺人

夢とはいったいなんであろう?夢。あの寝るときに見る夢である。夢の中では現実と区別ができず、それでいて現実とはかけ離れた現象が起こる(こともある)。


今、小生が体感しているのも夢である。なぜか高校の一室で目が覚めた。黒板がある。机があり、椅子がある。おお、なつかしい。ここでひたむきに受験勉強に励んだ日々を思い出す。わが母校、わが教室、わが机ではないか。すべすべ。いい手触りだ。夢のくせに。


「ちょっといい?机と抱きつくのはいつでもできるでしょ?」


と小生に話しかける女がいた。4人。


肩まであるセミロングの黒髪の女。

金髪でショートカットの女。こいつは目がでかい。

同じくショートカットの栗毛、こいつはとても小柄。

体格が一番よい地味なロングヘアの女。


の4人である。

小生は先ほど「核兵器部」を名乗る彼女たちにこんこんと説教をしたばかりである。部とは何だ、部とは。ふざけるのもたいがいにしなさい。その悪魔的な破壊力と、放射性物質による人体への影響を知っているのか?知っているのか。ならば知見を深めるために部の名前を改めなさい。物理同好会でいいではないか。素粒子研究会なんてどうだ?ここには女生徒しかいないのか?顧問の先生を紹介してくれ。というか、なぜ小生はここにいるのだ?


セミロングが代表となって小生に話しかけている。


「今日はもう遅いからさ、私の家に来なよ」


という。


はは、さすが夢である。破廉恥なお誘いを女性から持ちかけてくるのだ。よしわかった。おまえの言うとおりにしようじゃないか。さあ、小生をどこに連れて行ってくれるのだ?


「だから言ったでしょ、私の家」


なるほど、そうゆう展開か、あいわかった!よし頼む!とセミロングの女についていくことになった。


「この世界に慣れるまでちょっと時間がかかるかもしれないけど、慣れるしかないからね、いま私の言ってることも理解できないかもしれないけど、いつか分かるから、それにしても混乱してないのはさすがだね、私は最初はしばらく混乱していてダメだったな・・・」



「この世界はね、心がオープンになっちゃうからね、隠し事できないし、それがルール、だから私の家についたらとっても驚くかもしれないけど、幻滅するかもしれないけど、ごめんね、慣れてね、できれば嫌いにならないでね」


家に泊めてくれるという女性を嫌いにはならないぞ。


「うん、あなたは純粋だからね、その純粋さを汚すかもしれないのが心苦しいの」


?よくわからないが、嫌ならほかに行くぞ。


「いいの、これが私の役目だし、私のカルマだし、私の希望だから」


女はわけのわからぬことを言い出し、なんだか宗教っぽい雰囲気にこれ以上つっこむのはやめようと本能的に小生は判断した。カルトな宗教に勧誘されたらどうしよう?と頭のなかでシュミレーションをする。が、どうせ夢なのだ。ほっペをつねればよい。


黙りこくったセミロングの後について歩くこと10分。女の家についた。


「ただいま」

とセミロングが言うと

「おかえりー」

と声が聞こえた。どこか聞き覚えのある声だと思っていたら、先ほど教室で会った金髪の女だった。


「キリ、とグラは買い物してくるって」


姉妹なのか?


と聞く。


「いえ」


とセミロングが答える。


では家の人は?


「いないよ」


と言う。


いない?


「存在してない」


どういうことだ?


「殺したの」


とセミロングは言った。

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