第88話
ヒュウ達がダンジョン攻略を開始してから10日、とうとう11階層に到着した。
「ヒュウ、明らかにこの扉今までのとは違うわよね?もしかしてこの先にエイミィ様が?」
「いや、それはないだろう。中ボス・・・守護者の部屋って所かな。今までの魔物とは比べ物にならないくらい強いに違いない」
ヒュウを含め11階層に到着できた者は10名。ここにいる者達はダンジョンを通し幾度もの苦難を乗り越え、間違いなく強者と呼ぶのに恥じない実力を身につけていた。
だがそんな彼らもヒュウとケイトがいなければここにたどり着くことは不可能だったという事実を受け入れなければならなかった。これまで何度も脱落しそうなトラップやモンスターに遭遇してもヒュウ達によって助けられたのだ。
もし、今の実力でダンジョンを最初から挑んだとしても再びここに来れる自信はなかった。
だからこそ全員は二人を信じここまでやってこれたのだ。
『挑戦者よ、よくぞここまでたどり着いた。儂の名はグラム。このフロアを守護するものだ!勇気あるものはこの扉を潜るがよい』
扉に施されている拡声魔法によって響く声。
だが腰を抜かす者は1人もおらず、全員がヒュウについていく形で扉を潜る。
「お前ら!ここからが本番だ!」
『応!』
・・・・・・・・・・・・・・
管理室
「挑戦者、計10名がボスエリアに入りました」
「ボスエリアに配置済みの映像全て正常に作動しています。地下45階層の巨大モニターも異常ありません」
「いよいよか・・・10人だとキツイだろうが・・・どんな戦いを見せてくれるか楽しみだ」
管理室はまるでテレビ局のような慌しい状態になっていた。フロアボス、大地の巨人・グラム、その初の戦いが始まろうとしていたため、その準備に取り掛かっていた。
本当ならこんな風にするつもりは無かったのだが、グラムの初の戦いが行われる噂が広まり。ゾアの提案と住民の厚い要望で街に巨大モニターを設置してフロアボスの戦いを生放送で見れるようにした。
完全にスポーツ大会のライブ中継みたいだ。
ダンジョンの命運が関わっている戦いがこんなのでいいのか?
などなど思う所はあったが、始めて見ると意外と楽しくもうこのままやっちまえと思えてきてしまった。
「各フロアボスの担当部署のモニターも異常ありません・・・いつでも初めて構いません」
フライから配信準備OKが出たので俺はグラムに連絡を入れる。
「よし、グラム。こちらの準備はいいぞ。今回はお前の初の挑戦者だ、気合を入れていけよ!」
『もちろんです。この日をどれほど待ち望んでいたことか・・・大地の巨人・グラム、その戦いをコウキ様の目に焼き付けてみせます!』
グラムの気合の入った返事に俺は少し冷や汗が出た。
本気出しすぎて予想外な展開が起きないといいが。
・・・・・・・・・・・・・
11階層
「すげえ、これが本当にダンジョンかよ」
「とても綺麗」
ヒュウ達は目の前の建物の規模にあんぐりした表情をしていた。
扉を潜るとそこには巨大な空洞、そして巨大な宮殿が建てられていた。真っ白な石柱で支えられた建物、壁には芸術ともいえる装飾が施されていた。
「はは、調査隊の奴らが見たら興奮しそうだな」
「でも彼らがいたらここまでたどり着くのにさらに時間がかかってたわよ。とりあえず映像記録の魔法具は作動しておくわ」
全員は辺りを警戒しつつ宮殿の中に入ると、広間らしき場所に1人の男性が待ち構えているのが見える。
アロハシャツにジーンズ、サングラスをかけた角刈りの男性。だが身体から溢れる魔力は桁違い・・・かつて、ヒュウが才達と共に戦った魔王に匹敵するくらいの魔力を持っている。
「おいおい、無理ゲーすぎるぞ!明らかに魔王クラスじゃねえか!」
「・・・コレが守護者?ヤバいわね」
一目でただモノではない事を見抜くヒュウ達、だがグラムは至って落ち着いた様子でヒュウ達を見定める。
「あんたがフロアボスのグラムか?」
「いかにも、よくぞここまでたどり着いた。出来れば歓迎してゆっくりと話をしたいがそれは別の機会に取っておくとして、死ぬ覚悟でかかって来るがよい」
何を言っているんだ?という風に首をかしげるヒュウの後ろにいる挑戦者達だが始めから戦う気であったためすぐに武器を構える。
全員の準備が整ったのを確認するとグラムが指パッチンをした瞬間どこからかドラが鳴る音が聞こえ、戦闘が開始したことを告げた。
「「先手必勝!」」
2人の戦士、ニックとスティーブの速攻組がスキルを駆使して猛ダッシュでグラムに接近する。
【肉体強化スキル】による加速、これまでのモンスターもこの戦術でまずは力量を測る・・・一撃でしとめれば良し、ムリだったら即離脱というヒットアンドアウェイの戦い。このダンジョンで考えた戦術パターンの一つ。
「なかなかのスピードだが・・・」
『はぁ?!』
迫る剣を軽がると握り潰し、ヒュウ達を唖然とさせた。
「ふむ・・なかなかの武器だな。流石に素手で握ったせいで切り傷がついてしまったか」
(((素手で剣を握りつぶす奴なんているか!)))
「さあ、儂を楽しませてくれよ!」
この魔力、そして迫力。間違いなく魔王クラスの強さをこの男は持っている、ヒュウはグラムの迫力を肌で感じそれを確信に変えた。
「全員距離を取れ!接近戦は危険だ!俺が時間を稼ぐから魔法を詠唱しろ!ケイトは俺の援護を頼む」
全員がヒュウの指示に従い、距離を取って杖を取り出し詠唱を始める
「ほお、剣術だけでなく魔法も使えるのか・・・優秀だな」
グラムが関心しているとヒュウの猛攻が襲い掛かるも、ボクシングのスパーリングのように攻撃を受けている。
「おらおら!よそ見している暇は無いぞ!」
グラムもヒュウの実力を瞬時に把握し警戒し始める。
この男だけがこの中で飛び抜けていると。
そう思っただけなのだがグラムは無意識に笑っていた。
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