第81話

ダンジョン建国計画が発表され住民達の意見を纏めていた俺は農場エリアにある休憩所エリアで早速頭を悩まされていた。


「思ったよりも要望はあったのは良いが現状の住民の数で回せられるか?」


ポイント制の導入でダンジョンの流通のテストも兼ねて今後は欲しいものをポイントで買う仕組みをガウスを通して住民達に伝えたのはいいが、そのポイントを使う店の種類が思いのほか多かった。


「給料としてポイントを給付する事で今後皆の生活へのモチベーションを上げる事には繋がる、だがその働き口の種類が多いのは少し問題だよな」


現状、住民の大半は生産部門の農場か技術開発部門の魔法具開発で働いている。亜人達が移住したことで休ませる時間を確保できたのにここで仕事を増やすのも少し気が引ける。


「長い目で見て人口がもう少し増えるのを待つべきかな」


よく考えてみると200人程度で国と呼べるのだろうか?・・・ダンジョンモンスターを含めたら数十倍に増えるけど。


「何を待つべきなんですか?」

「うぉ!アルラとガウスびっくりした」


資料を見るのに集中していたからなのか彼女達がやって来た事に気付かなかった。


「お忙しい所申し訳ございません。何か悩んでいる様子でしたが何か問題でも?」

「ちょっと建国計画の件でな。人口の少なさが気になってな」

「確かに今の住民の数を考えると規模的には大きめな村ぐらいですからね。生活環境は村以上ですが」

「そうなんだよね・・・これから店とか迎賓館で働く人とか考えると人手が足りなくてな。ゾアの魔法具を使えばある程度解決できるけど・・・」

「そこまで頼るのは良くないと?」

「便利に活用するのはまだいい・・・だけどその内魔法具だけで全ての仕事を賄えてしまいそうだからね」


地球でも技術発展によって職を失った人が大勢いたというニュースを目にしていたしある程度ボーダーラインは決めておかないと。


「国交ともなれば作物の種類は増えまし生産部門としては人手は欲しいですね。現状でも何人かは休みなのに手伝うと言い出すヒトもいますし」


ただでさえ農場エリアは広いんだからやっぱり一番人を割いているよな。


「でしたら新しい移住者を募りませんか?」

「移民募集ってか・・・当てはあるのか?」

「実は私達以外にも亜人の集落はいくつもあるのです」


そうだったのか?・・・全然知らなかった。


「ノフソの森は広いですからね。精霊契約の仕組みを教えてそれぞれが住みやすい場所で集落を作っているのです。幸いそのおかげでルヌプの被害は我々だけで済みましたが」


元々ノフソの森で隠れるように暮らしていたわけだし、その方が見つからないと考えたのだろう。


「ダンジョンへ向かう国が増えた今、彼らも見つかるリスクを恐れています。ならいっそここで保護をするのはどうでしょう?」

「それは構わないが・・・」

「エイミィ様にはすでに伝え済みで後はコウキ様の許可で全員に連絡を入れる手はずとなっています。邪神に憑りつかれていないかもノバ様を中心に精霊達がチェックしていますので問題ありません」


あ・・・もうエイミィの了承を得ているのね。


「分かった、そうなると家も必要だけど、しばらくは仮設住宅でも大丈夫かな?」

「あれでも十分に高性能な住宅なんですけどね・・・彼らも文句は言いません」


そんなわけでガウスが精霊達を使って各集落にいる亜人達に引っ越しの準備を進めるように伝えた。数日後にはエドが彼らを回収しに行く算段だ。


ガウスが嬉しそうにして出ていくがアルラは残っていた。


「それで?アルラが残っているという事はまだ何か報告があるのか?」

「はい、ただセフィロト関連のものなので出来ればエイミィさんと一緒に作業部屋で話をしたいと思います」


表情は明るい感じではあるが声のトーンが落ち着いた感じのアルラ。彼女もエイミィ同様二面性の持ち主なのかもしれない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「それで?セフィロト関連と言ったがどういう内容なんだ?」


作業部屋に集まった俺とエイミィにアルラ他には誰もいない。


「はい、実は光輝さんがテイムしている魔物なのですが自我が芽生えているのを確認しました」


自我?・・・という事は魂が宿ったという事?


「どういうことだ?魂はアルラが管理していてダンジョンモンスター達にはもう宿らないはずなんじゃ?」

「はい、そのはずなのですが・・・光輝さん最近テイムした魔物達に変化を感じていませんか?」


変化かどうなんだろう?最初の事は欲しいものをねだっていたが最近は仕事の成果とか報告していたな。あとなんか上位種への進化先の種類が増えていたような・・・


「随分と物覚えが良くなったなってくらいだが。あと殆どが上位種へ進化できるようになっていたな・・・まだ試せていなかったけど」

「それです・・・自我のある魔物は学習能力と成長速度が異常に高くなります。これまでテイムした魔物にそのような変化が出る例はありません・・・おそらく」

「おそらく?」

「光輝さんが異世界人である事と私の【ゴッドスキル:リンク】による影響で変化したのだと思います」


なるほどなるほど・・・


「つまりテイムした魔物達もヒト型になれるわけか」

「はい・・・ただその数はあまりにも多く」

「テイムした魔物達の間に子供も出来て、そのままテイムしたからもっと増えたんだよな・・・」

「正確には8504体ですね・・・管理していた魂がごそっと減っていました」


マジか・・・


「私は彼らに加護を与えてヒト型にすることは賛成よ、人が増えればやれる事も増えるし」


エイミィは受け入れる方向でいるしこれは人口爆発じゃないか?


「元々食料は賄えていましたし、一応魔物達の要望を聞いて地下45階層に移住してもらうのはどうでしょう?」

「最大8000人以上の住民が増えるのか?ちょっと急すぎないか?」

「はい・・・なのでガウスさんの亜人達を受け入れた後に少しずつ移住させた方が良いかもしれません。住民達には増える経緯を説明すれば納得してくれます」


まあ自分達と同じ元ダンジョンモンスターだから納得はしてくれるか。


「そうなるとますます居住エリアに家が必要になるな・・・設計図とか描き直す必要んがありそうだ」


ガウスから亜人、アルラからダンジョンモンスターという移住者が現れ問題は解決するようでさらに積み重なったような気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る