ダンジョン 建国編
第80話
ダンジョンの建国計画が決まってからしばらく住民達の気持ちは一丸となってこの計画に乗り出していた。住民達がそれぞれ意見を言い合い、生活するに当たって便利な配置、必要な施設などを考え建設していく、
そんな活動の会議室でフロアボス達が集まりある密談を行っていた。
「ほな、皆さん集まったようなんで会議を初めまっか」
取り仕切るようにゾアが言うと空気に緊張感がのしかかる。
「ゾア、議題を話す前にこの場にコウキ様とエイミィ様がいない理由を説明してもらえないか?」
グラムが質問するとゾアは待ってましたと言わんばかりに笑い答える。
「今回の会議はどうしてもエイミィさんとコウキさんには内緒にしたい内容だったんで、お二人はガウスはんとユノに頼んで引き留めて貰っておるんや」
「二人には内緒・・・ふむ、あの方達に隠し事というのは気が引けるがお前がわざわざそうしたという事はそれほどの理由なんだろうな?」
グラムを含め他のフロアボス達も賛同するかのようにゾアに向けて圧をかけるように視線を送る。並の者だったら白目を向いて気絶しているだろう。だがゾアは気にしない様子で答える。
「前回ワイはコウキさん達とジェコネソに行った」
「ああ・・・お前がいながらコウキ様に怪我をさせてしまったあそこか」
「っちょ!リンドはんその件はさんざん頭を下げて謝ったやないか!」
「リンド、あの件はコウキ様も咎めないようにと言われている。これ以上掘り返すな」
リンドが冷めた目でゾアを見て言い放つがミーシャがすぐに止める。ジェコネソの件フロアボス達の中でゾアの株が下がったのは間違いない。ただ状況が状況だったために光輝からはゾアを責めないようにと言われている。
「ゾア、話を続けてください」
「・・・例の件でコウキさんは報酬として貴族が使用していた屋敷を譲ってもらったんや。全体図としてはこんなもん」
そう言ってゾアが全員の中央に円盤の魔法具を置くと、屋敷の立体映像が浮かび上がる。その映像にフロアボス達は興味深く観察した。彼らにとってもダンジョンの外の建物などは珍しいものだ。
「んー言っちゃなんだが、俺達が住んでいるフロアボス用の寝床と比べたら随分と小さくないか?」
「まさにその通りなんや!」
カーツはそんな風に呟くとゾアがすぐに肯定すると全員がゾアに注目した。
「コウキさんはこの屋敷を気に入った様子なんやけど、中を見ている時にこう言ったんや『へぇダンジョンの俺の部屋より豪華だし広いな』って。ちなみにその部屋っていうのがここ」
立体映像の屋敷は分解されるように壁が外れ、中の構造が見えるようになっている。そしてゾアが指を指した部屋は確かに他の部屋よりも広いが屋敷全体から見ればそこまで広いというわけでもない。
そしてゾアの言葉に全員が何を伝えたいのかがすぐに理解できた。
「コウキさんはワイらの主。そうとなればそれにふさわしい建物を用意すべきとちゃうん?」
「まさかコウキ様がこの部屋以下の部屋で寝ていたとは」
「・・・ゾア、お前意外としっかりと見ているんだな」
「リンドはん『意外』は余計や・・・まあ、コレは主にグラムはんの建設部門が仕事になるんやと思うんやけど、ワイら全員でコウキさんとエイミィさんに相応しい家を用意すべきやと思うんや」
「・・・確かにサイ殿も言っていたな。建物の豪華さは威厳を象徴するとか」
「俺達が寝泊まりしているフロアも確かにそれにふさわしい場所って感じはするよな」
フロアボス達が守護する担当フロアには光輝が設定した寝床がしっかりと用意されている。
「今後国の交流が増えるとなればやはり象徴となる建物は必要や。そんなわけで早速ワイが色々と情報を集めたで」
そう言ってゾアが円盤の魔法具を触ると、今度は複数の建物が浮かび上がる。
「ワイがジェコネソに滞在している間にテオプア中の建設物の映像を記録しておいた。参考にはなると思うんやけど」
「うむ・・・テオプアは確か歴史ある国と聞いている。なるほど中々立派な物だな」
建設部門担当という事もありグラムは興味深そうに色んな映像を見る。
「だが参考にしてもそれはつまりテオプアと同等か少し上程度の仕上がりにならないか?」
「せやな・・・ワイらの寝泊まりする場所を超えるのは流石に厳しいとは思っとる」
「なら、我の図書館で建設物の資料を探すとしよう。テオプア以外の国の建物の情報はあるはず・・・様々な建設物を参考にすれば我らの住処以上の物が出来るかもしれん」
「せやな、豪華はもちろん機能性や住みやすさとかもしっかりと考えんと・・・」
「なら儂は立地の調査をしよう・・・まだまだ土地はあるが相応しい場所となれば限られてくるしな」
「では、私、リンド、カルラは資材集めを担当しましょう。ミーシャとカーツはコウキ様達に悟られないように住民達への指示をお願いします。ゾアはエドワードと共に情報集めと設計を担当」
メリアスがそれぞれに指示を出すと全員が頷く。
「ほんなら、コウキさん達を驚かせるすんごい城建ててみようやないか!」
『応!』
光輝とエイミィが知らない間にフロアボス達の計画も進められていくのであった。
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