第82話
アルラとガウスの報告により住民が急激に増える事になった俺達は急ピッチで受け入れ態勢の準備に取り掛かった。
グラムは張り切った様子だが少し複雑そうな表情をしていたが何か別の事をしたかったのだろうか?
「いえ!何でもありません!住民が増えるという事はそれだけ出来る事が増えます、人手が増える事は良いことです!」
と言っていたのでグラムも歓迎してくれているようだ。
とりあえずグラムには俺の街のイメージの図面を渡してみた。
「区画はこんな感じで設計したんだけどどうだろうか?なるべく生活しやすいような構図にしてみたんだが」
「そうですね、この『コミュニティセンター』というのはなんでしょうか?」
「ああ、色んな種族がいるからね交流の場とかあったらいいなと思ってな。まあ簡単に言えばだれもが使える多目的施設。個人が企画して交流会とかに利用してもらう予定だ」
「なるほど、我々の会議室のようなものですね」
まあ会議室は基本的に仕事メインの場所だけどな。
「その他にも一定の範囲に子供達が遊べる公園を作りたい」
「ここも交流の場として使えそうですね」
「そうだな、あと重要となるのは『役所』って所だ。ここは主に住民達の住居情報の管理、相談窓口など生活のサポートを担う場所だ。ガウスが担当してもらう事になっている」
今でもガウスは住民達の意見を聞いたり纏めてくれている訳だし、正式に役職として地位を与えようと考えたのだ。
「なるほどそれは重要ですね。でしたらかなり立派なものを用意しなければ」
その他にも迎賓館やお店をまとめた商店街など説明しグラムは早速準備に取り掛かった。
「さて住民が増えるとなればあれも必要だよな・・・」
そう言い残し俺は次の人物へ会いに動き出す。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「『警察』・・・ですか?」
「ああ、リンドって時折住民達をを鍛えているよね」
リンドの仕事は主に担当フロアの調査と食料調達がメインだった。仕事内容はカーツとカルラとさほど変わらないがリンドのフロアはかなり特殊であらゆる自然現象を想定したステージが用意されている。そのためかなり危険な場所へ行く事も多いのだがいつも平然と食料といくつかのドロップアイテムを回収してくる。
「鍛えているというか、最初は俺に突っかかってくる奴らが何度も挑んできては返り討ちにしていたんですが、いつの間にか関係ない住民達が『俺達も鍛えてください!』とか言い出して相手をしていたのです」
「はぁ?フロアボスに挑むとかもしかしてダンジョンに対して敵意があるのか?」
「そんなことありません!ただ竜としての性なのか常に格上の相手に挑む習性があるのです・・・圧倒的な実力差を見つけない限り挑み続けてきます」
そうなのか・・・まてよ?リンドが勝てる相手だけど圧倒的ではない実力者というと・・・
そう考えていると、噂をすればなんとやらで三人の男女が俺達の前に現れた。
「リンド様!今日も相手してもらうッス」
「前回の失敗の対策は取った、某の刃今度はどれくらい届くか確かめさせていただく」
「ふふふ、楽しみね」
最初に喋り出したのは薄青髪でいかにもクールな外見なのに口調が妙に軽い男性。二人目は身の丈を超えるような刀を背負った黒髪ポニーテールの女性。そして三人目は黒いゴシックロリータを身に纏った少女とも言える銀髪の女性。全員外見が個性的ではあるが共通して体の一部に鱗のような模様が浮き上がっている。
つまり全員有鱗族である。
「ソウキ、アイガにカクラ・・・だったよね」
三人は確かリンドが担当するフロアにいた元ユニークモンスター達。薄青髪の青年のソウキは41階層の氷竜ニブルヘイム。黒髪ポニーテールの女性のアイガは42階層のグラディウスドラゴン。銀髪少女のカクラは43階層のアビス・デスドラゴンだったな。
「お名前を憶えていただき光栄でございます」
まあ全員俺がデザインしたドラゴン達だったからな。始めて会った時は顔合わせのような挨拶ぐらいでそれ以降はあまり話す機会は無かったな。
「お前ら今はコウキ様と仕事の話をしている。地べたに這いつくばるのは少しまて」
「「「あぁ?!」」」
リンドの挑発にすぐ反応する三人組。だが俺がいるせいなのか今にも飛び掛かりそうな身体を必死に抑えている。
「おい、リンド挑発するなよ」
「いいんですよ・・・その方があいつらも本気でやって来ますから」
うししと言った感じにリンドは笑いって言うがその分三人の殺気が増していく。
「なぁ二人とも今すぐにでもあのアホ龍を氷漬けにしたいんだがやっても良いッスよね?」
「馬鹿!コウキ様に何かあったらどうする!」
「あんたの氷シャレにならないんだからやめなさいよ!アホはあんたでしょ?」
「うっせーッスな、能筋に陰湿!」
「「「あぁ?!」」」
おいおい、今度は三つ巴になったぞ・・・こんなに仲が悪いのか?
「あいつらは無視してください。それでその警察とはどういうものなのですか?」
「・・・えーと簡単に言えば犯罪と取り締まる部署だね。このダンジョンってまだ決まった法律とかは無いけど暴力沙汰や殺人とかはしてはいけないって事は皆理解してもらっているよね?警察はそういう事をした人たちを捕まえて刑務所・・・まあ厳しい反省室みたいな場所に入れるのが仕事」
まあこの二つも今の所まだダンジョンで発生はしていないけどヒトが増えれば暴力沙汰くらいは起きる可能性は高い。現に三人の殺気とかヤバいし居住エリアで暴れたりしたら大惨事になりそう。
「なるほどこのダンジョンの治安を守るという事ですね」
「そう!そういう事!」
治安という言葉がすぐに出てこなかったがリンドが言ってくれたから結果オーライ。
「ああ、治安以外にも困った人達を助ける事も仕事の一つだな。住民が増えれば問題も起きるし早めに対応できる人材を用意したいんんだ」
「それで俺が鍛えている奴らをその警察に?」
「それもだけどリンドにはその警察部隊を取り仕切る役を頼みたいんだ」
意外とリンドは鍛えるのが上手だし腕っぷしがある人は確保したい。
「了解しました・・・その役目是非ともこのリンドにお任せください」
「ただそうなるといつも行っているフロア調査や食料調達とかに支障がでないか?」
「それは問題ありません、そういう仕事はこいつらに任せますから」
「「「はぁ?!」」」
いきなり振られた話題に三人が目を見開いて驚いているが大丈夫なのか?
「実力は申し分ないし、俺以外の格付けも担当するフロアのダンジョンモンスター達に叩き込まないといけませんしね」
今までリンドが一人でやっていたみたいだし、三人の実力は俺もステータス上は知っているから大丈夫だとは思うが・・・
「これは元々コウキ様が俺に与えられた仕事なんだ。つまりこの仕事はコウキ様からの仕事だしっかりやれよ」
『俺からの仕事』という言葉に反応したのか三人とも不満そうな顔はしていない。
「まぁ・・・コウキ様からの仕事ならしっかりやるッスけど」
「これを機に某達が活躍するのもありだな」
「それに私達が仕事をすればその分リンド様に挑める機械は増えるよね?」
「まぁ、お前らの相手する時間くらいなら今でも余裕だが?」
「「「上等だオラァ!」」」
仲良いなお前ら
「まあ警察の仕事とかはガウス達とも交えて考えていこうと思う」
「了解しました。では俺はとっととやることを済ませます」
そう言い残しリンドは三人を連れて自分のフロアへ向かったのだった。
「もしかしてアレがリンドなりのコミュニケーションの取り方なのかな?なんだかんだで三人を鍛えているみたいだし」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます