第28話
エイミィがダンジョンモンスター達に祝福を与えてからしばらくが経ち、俺は地下45階層の住居づくりのチェックを行った。
「グラム、街の方はどうか?」
住居エリアの入り口に行くとタンクトップにジーンズそして頭には『安全第一』とかかれたヘルメットを被ったグラムが映し出された。まるでアメリカで見た作業員みたいだな。
「これはコウキ様、木材はメリアスさんのフロアから、石材は儂のフロアから調達し物資の問題はありません。転送装置も問題なく行えていますので作業は順調です。コウキ様が予定されている区画もだいぶ形になってきました」
「・・・そうか」
「どうかなさいましたか?」
「いや、予想以上に早くて驚いている」
住居のイメージとしては中央にある大樹を中心に南を居住エリア、東が農場エリア、西は研究所エリアで北が娯楽エリア。北エリア以外はメリアスとゾアがそれぞれ中心となって作業を行っているが、ある程度落ち着いたら建設関係の仕事は全部グラムとその配下に任せる予定だ。ちなみに北の娯楽エリアはまだ何を作るか決めていないから平地のままだ。
住居エリアの家は基本的に『組み木』を活用したログハウス。かなり技量が必要だから始めは無理かと思ったが【加工スキル】を持った者達によると可能らしく、仕組みさえ分かれば取り掛かれるらしい。
日本文化の技術がまさか異世界で活用するとか、まるで定番の異世界小説の世界だな。
以外にもここで活躍したのがワイトだった。鍛冶スキルでノコギリやハンマーなどを作り【建設スキル】や【加工スキル】を持った住民に渡して作業する。だがワイトが作った工具は非常に性能が良く、他の【鍛冶スキル】を持った住民が作った物で作業するよりも効率が段違いだった。
結果ワイトは研究所エリアだけでなく、居住エリア、農場エリアでも道具を作ることになった。本人は作るのが楽しいから喜んでやってはいるが後でご褒美を考えておかないといけないな。
そして俺はグラムと一緒に居住エリアを確認しているとすでに立派なログハウスがいくつも建てたれていた。技術力なら間違いなく地球のほうが上だが、効率性ならこちらも負けていない。【加工スキル】を持った職人達が運ばれてくる木材を一瞬で加工して、力のある住民達がそれを組み立てる。
「かなりいい感じになってきているな。だけど、住民たちに無理だけはさせるなよ。食料とかはどうなっている?」
「はい、まだこの階層で自給自足は出来ないため、現在カルラが部下を引き連れて担当フロアで狩猟をしています。同じくカーツも担当フロアで食用の魚を調達。野菜や果実はメリアスさんのフロアでまだ沢山ありますのでその心配はありません」
まだ魚や動物たちはこの階層で生態系を作っている途中だしこれはまだ様子を見る必要があるが概ね予定通りではある。
「そうか、フロアボスの仕事もあるのに悪いな街づくりの殆どをお前に任せて」
「いえ、コウキ様から頂いた仕事。これほどやり応えのあるものはありません。他のフロアボス達も自分達の仕事を任されて気合を入れています。それに正直、冒険者を待つだけではやはり退屈になってしまいますので」
「はは、そうか。すまないなお前達に退屈な思いをさせて」
「い、いえ!すみません先ほどのは失言でした」
「いや、構わないよ。お前達がそうやって本音を言ってくれると俺もどうすればいいのか分かるからな。些細なことでもいいから何か要望とかあったら言ってくれ」
「御意。それでは儂は作業に戻ります」
居住エリアを見終わった後グラムは部下たちとの打ち合わせに向かい、俺は次のエリアに向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
次に向かったのは農場エリアで、ここではメリアスが先導して農作業する配分を行っていた。その他にも畜産物を生産できるように牛、羊、鳥系のダンジョンモンスター達をここに移動させている。俺たちの食生活を支える大事な役目を担ってくれている。
意外にもモンスターから作れる畜産物はかなり美味で特にミルキー・カーオから採れる牛乳から作られたチーズは一級品で、あれで作るピザは俺の大好物だ。
意外にも驚いたのはコカトリスやバジリスクからも畜産物がありこれも美味だ。本来であれば危険生物であるためその卵を食べるという発想は出ないが、俺のテイムモンスターという事でちゃんと卵を提供してくれる。エイミィやアルラも初めて食べたそうで、その美味しさで何度もバジリスク卵のオムレツをおかわりしていた。
俺がテイムしたモンスター達も一部はこうしたエリアで放牧して生活してもらっている。メリアスはまだ数が足りないと言っていたためまたテイムモンスターが増えるかもしれない。
「あ!ご主人様だ!ご主人様~」
「コウキ様コウキ様ご飯ちょうだいちょうだい!」
「あ、ズルい僕も欲しい」
放牧していたモンスター達が俺を見つけるとすぐさま走り出し俺に群がってきた。当初はあの巨体で走り出して来たらすぐ逃げ出そうとしたりメリアスの結界で守ってもらったりしたが今はもう慣れてしまった。というかテイムモンスター達は皆俺に懐いているのがビックリだった。
ついてに【テイムスキルIII】によるモンスター翻訳もかなり活用でき彼らとの交流もスムーズに行えている。
「お前たちここでの生活には慣れたか?」
「うん、ご飯は美味しいしお仕事もちゃんとやってるよ」
「そうかいつもありがとうな・・・じゃあご褒美を『ダメですよ、コウキ様』・・・メ、メリアス?」
俺がテイムモンスター達にご飯をあげようとすると止めに入ったのは笑顔にしているメリアスだった。
「この子たちはさっき食べたばかりなんです。あまり甘やかしてはいけませんよ?」
メリアスの圧に負けて仕方なく手をモニターから放し、モンスター達も何も言わずにおとなしくなった。
「ところでコウキ様はどうしてこちらへ?まだ農場は完成していませんが」
「いや、ただの視察だよ。連絡入れなかったのは悪かった。ちょっとだけ覗いていこうかなって思っただけだから」
「そうですか。ではまだ何も育っていない状態ですが畑の方へ見て行かれますか?」
メリアスの提案で俺はそのままテイムモンスター達と別れ彼女に案内されるままに畑の方へ向かったのだが・・・
「これはまた見事な畑だな」
辺り一帯広がる耕された土、そこに住民たちが丁寧に種や苗を植えていた。
「皆さんが手伝ってくれるおかげで作物の種類はかなり増えそうです」
「それは今後のご飯が楽しみだ。ところで畑の周りになんか透明な膜みたいなのが見えるんだがアレは何だ?」
俺が目を凝らすと畑の作物ごとに長方形のガラスケースみたいなのが見える。
「あれは機構管理のための結界です。作物がもっとも育ちやすい温度、湿度、光の加減などを調整しているのです」
なんか凄くハイテクな農作業が行われているんだけど!
「本当なら時間魔法で作物の成長を速めたいのですがコウキ様がそれを禁止にしてますから」
「できれば住民たちが育てる作物はしっかりと育てたいからね。メリアスの魔法は緊急時のみ使用って事で」
「そうですね・・・それにこうして作物が育つのを眺めるのも楽しみの一つです」
メリアスもそう言って納得してくれたがここで一つ俺にとって誤算だったことがある。今住民たちが植えているのはこれまでメリアスが品種改良を行ったものであり、普通の作物ではないという事。
結果、数日後には見事な巨大作物が誕生してしまうなんて俺は予想していなかった。
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