第27話

「疲れた~・・・マジでシンドイ、疲労感が半端ない」


あの後、アルラにダンジョンを連れまわされグラムの時のようにフロアボスたちが担当フロアのダンジョンモンスター達を集めており全員俺のテイムモンスターになった。


モニターには全てのダンジョンモンスターが登録された形になり結果的に俺がダンジョンモンスターを管理しやすくなったというメリットはある。裏ダンジョンはまだ一部しか開放していないから数は少ないけど総勢で6000体の魔物がテイムしたことになる。6000の魔物を従えるとか完全に魔王じゃないか!


「連れて行くなら6体まで・・・ってそんな制限ないよな」


そんな事を言いつつも俺はモニターに登録されているモンスター達を眺めていた。


「そういえばこんなにテイムしたのに【テイムスキル】はIIIのままだな。何か条件があるのは間違いないか・・・」


あの数のダンジョンモンスターをテイムしたから【テイムスキル】も上がっていると思っていたが変化はなかった。まあ今の能力も検証出来ていないしまた上がるのはもう少し先でもいいか、


「今更だが、とんでもないバケモノたちがいるな」


現状ダンジョンで戦っているのはグラムの担当フロアのダンジョンモンスターだ。だが言い方はアレだが彼らはダンジョン全体で言えば前座。進めば進むほどダンジョンの難易度、モンスターの実力は上がっていく。


「特にヤバいのはメリアスの所だよな逢魔・麒麟、テンペスト・フェニックスとか明らかにダンジョンの外に現れたら大災害になりかねん」


メリアスにいるダンジョンモンスターだけは外に出してはいけない。出会った時はメリアスに従順だったがあの存在感はフロアボスに匹敵する・・・いやフロアボスの方が強いのは間違いないんだが・・・あれ?なんで俺はフロアボス達とは平然にしていられるんだ?


「・・・馴れなんかな?まあ、ゆっくり接していけばいいか。それよりもこっちを何とかしないと」


俺は10階層までのダンジョンのマップを見る。ダンジョンモンスター達は5階層と同じようにモンスター専用の居住エリアを設定することにした。俺のテイムモンスターになった事で死んでもダンジョン内であれば復活できる設定が可能になったのだ。


「まあ、ダンジョンの構造を弄って5階層と似たようにすればいいだけだから、そこまで大変ではないが」


俺はダルイ身体を起こして10階層のマップを編集した。12階層からは迷宮ではなく広々とした空間のフロアが多いから今は縄張りを作って生活してもらっている。放し飼いにしている魔物化した動物もいるからそれらを狩って生活する予定だ。


「食料問題も解決しないとな。ヒト型だけでなくダンジョンモンスター達も養わないといけないし・・・まぁこれはフロアボスと要相談だな」


難しい事は抱え込まない方が良い・・・俺しかできない問題ではないし。


「ああ・・・癒しが欲しい」


・・・・・・・・・・・・・・・・・


光輝が部屋で休んでいる時、彼を振り回したアルラはというとエイミィの部屋で正座をさせられていた。


「セフィロト・・・いえ、アルラ何か私に言う事はあるんじゃないかしら?」

「あの・・・なぜ私は正座させられているのでしょう?」

「そうじゃないでしょ!光輝の事よ!なんであの【スキル】を彼に与えたのよ!本来あのスキルは扱いが難しいから簡易化させたものを【勇者】に与えるものでしょ?まあ今期の【勇者】は簡易化させたあの【スキル】ですら使いこなせていないみたいだけど」

「素直に言えば?『光輝さんと契約するのは私だけ』って」


アルラはクスリと笑いエイミィを見たがその行為は彼女の怒りの炎に油を注ぐことになり、エイミィは無表情のままアルラの後ろに回り彼女の足の裏を軽く踏んだ。


「っちょ!足が!・・・この足の痺れ、女神だった頃では感じることは出来なかったわね」

「変なところで感動してんじゃないわよ!アルラ、もう一度言うわ、なぜあの【スキル】を与えたの?」

「もちろん光輝さんなら【ゴッドスキル:リンク】を使いこなせると思ったからです。それにダンジョンを運営するのにあの【スキル】は光輝さんの役に立つと思ったのです」


アルラの言う通りフロアボスを含めダンジョンモンスターがテイムされた事で光輝は大幅な強化に成功した。今後は彼がフロアボスの力も使えるようになればまさに最強になれるだろう・・・だが。


「強すぎるのよ・・・私だってアルラの力を貸してくれて嬉しいと思ったわ。だけどもし光輝の強さが世界に知られたら・・・」

「・・・邪神以上の脅威と認識されると?」

「フロアボスの実力はすでに魔王並。その気になれば一人で国を亡ぼせるほどの戦力よ・・・私は光輝がそんな風に見られるのは嫌なの」


光輝はまだダンジョンの外に出たことは無いためその存在を認知されていない。だがもし彼の存在が知られた場合、世界の標的が彼に移ってしまう可能性もある。巨大すぎる脅威の前に団結する国を彼女は数多く見てきた。光輝ほどの力ともなれば世界中が一致団結して彼と戦うかもしれない。そうなれば彼がどれほど傷ついてしまうか。


「光輝は異世界人だけど一人の人間・・・それこそ一般人だったの。過去の英雄たちと違い彼はあっちの世界で平和に暮らしていて・・・私がそれを奪った」


自分が光輝にしてしまった事を再認識し、言葉が出ずに倒れ込む。


「これは私だけの罪なの、あなたまで彼を留める理由にしなくていいのよ」


エイミィの中で渦巻く感情。光輝を連れてきたことへの罪悪感、彼が協力し得た安心感、彼が今度世界からどう見られるかの恐怖。エイミィにとって光輝は大きな存在となっていた。


「・・・エイミィ。あなたは私が復活した時、真っ先に泣いて喜んでくれました。私が眠っているせいで世界が大変な事になっているのにも関わらずあなたは私の事を想ってくれていた。それがどれほど私の心を救ってくれたとか」

「アルラ?」


エイミィはアルラの顔を見る。幼い子供の姿になってもその慈愛溢れる瞳は以前の姿と全く変わっていない、エイミィが良く知っている顔だった。


「だからエイミィ、私にもあなたを救わせてください。悩んでいれば相談に乗りますし、力を貸してほしければ遠慮なく貸します・・・もっとも、私が貸すまでも無いくらい周りは頼もしいですが」


そう言って彼女は光輝を含めエイミィを守護するフロアボスたちの事を考えた。


「これは女神としてではなくあなたの友人としてのお願いです。私にもあなたの力になりたいのです」


エイミィは今にも泣きそうな気持を必死にこらえてアルラを強く抱きしめた。セフィロトがいなくなってからの数百年、頼ることも出来ず一人で逃げていた日々。彼女は改めて一人ではないと認識できたのだった。


「ねぇ、アルラ・・・なんか光輝に会いたくなったんだけど良いかな」

「ふふ、エイミィって以前と比べて随分と甘えん坊になりましたね」

「っちょ!私は別に甘えたいわけじゃ!」

「はいはい」


そんな風に楽しく言い合いをしながら彼女たちは光輝がいる部屋に向かい・・・・


「すぅすぅ」

「何?これ?」


部屋に入るとそこには大量の動物型の魔物達が光輝を囲み、その中心で光輝は寝息をたてながら熟睡していた。柔らかい毛皮を持った魔物達に囲まれとても幸せそうに寝ている光輝の姿に2人は顔をそろえて笑い出す。


「「コレが世界の脅威とか無いわね」」

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