第13話
ダンジョンに新しいメンバー、ホワイトリーが加入したことで俺はこれまでの経緯をエイミィに報告した。
「という訳でかくかくしかじかで・・・」
『なるほどね・・・死者の魂を呼び出すとかフロアボスの行動力は私にも予想外だったわ』
「まぁ、魂を呼び寄せたと言っても本人の記憶は無いみたいなんだけどね」
ホワイトリーからいくつか質問したが、彼は生きていた時の記憶をほぼ残っていなかった。自分がどんな人生を歩んでいたかとか、どんな種族だったのかすら覚えていなかった。ただモノ作りが好きで色んなものを作っていたことだけは覚えているらしい。
「ホワイトリー本人もダンジョンで生活することに不満は持っていないようだし、ゾアの管理下で助手として働くそうだ」
『わかったわ、ユナとデューオの事もあるし今日は彼女たちの歓迎会をしましょう。私もちょっと試したいことがあるから』
「試したいこと?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その後、他のフロアボスたちにも連絡を入れて歓迎会という名目の宴をすることにした。
「それじゃ、新しく加わったホワイトリー、デューオにユナの歓迎会を開催する」
並べられた料理はいつも通りメリアスのお手製であるが、日に日に彼女の料理のレパートリーが増えている気がする。着々と食材の種類や調味料の作成が進んでいる証拠だろう。
デューオとユナは最初料理を運びたがっていたが今回は歓迎される側、運ぶのは俺やフロアボスたちで行った。
「コウキサマ、ジブンタチニコノヨウナカンゲイハカブンデス」
「ソウデス、ワタシタチハタダノオセワガカリデス!」
デューオとユナは最初は欠席しようとしていたがダンジョンマスター命令としていう事に従ってもらった。お世話ロボットとは言え、自我があるし彼らもこのダンジョンの一員なのだから歓迎会を開かせてほしい。
「まぁまぁ、二人ともええやないか。コウキさんはあんたらとの親睦を深めたいわけやし。これは言うなればダンジョンの一員となる儀式みたいなもんや」
ゾアはそう言って納得させるが別に俺はそんな大げさなつもりはないんだがな。
「ソモソモ、ジブンタチニショクジハヒツヨウアリマセン」
「ソウデス、ワタシタチハアイアンゴーレムデスカラ」
「そういえばそうだったな・・『なら食事ができるようにすればいいのですね』・・・え?」
突然のエイミィの発言に俺たちは一斉に彼女の方へ振り向くとなんかいつも以上に神々しく輝いている彼女の姿があった。
「ホワイトリー、デューオ、ユナ・・・あなた方をダンジョンの一員として歓迎します。そしてこれは私からのささやかな気持ちです」
エイミィの光が一斉に三人を包み込むと、俺やフロアボスたちの目の前にモニターが出現しメッセージが浮かび出した。
個体名デューオがアイアンゴーレムから機甲人族へと人化しました。
個体名ユナがアイアンゴーレムから機甲人へと人化しました。
個体名ホワイトリーがホムンクルスから屍人族へと人化しました。
人化?どういうことだ?
そして光が収まるとそこには姿が変わった3人の姿があった。
まずホワイトリーはそこまで大きな変化はない。以前と変わらない10歳前後の子供の姿に真っ白な髪。だがホムンクルスの時と違って健康そうな体つき、そして一番の変化は青白く輝いている瞳だった。
「ホワイトリー・・・大丈夫か?」
「はい・・・記憶は戻っていませんが以前より頭がすっきりしたような気がします。それに・・・」
ホワイトリーはそう言って自分のステータスを俺に見せてくれた。そこには色々と驚く内容が表記されていた。
【鍛冶スキルIV】、【装飾スキルIV】、【木工スキルIV】、【錬金術スキルIII】、【鉱物性質アップ】、【設計スキルIII】、【刻印魔法IV】、【付与魔法III】、【ユニークスキル:魂眼】
なんというか鍛冶師にメッチャ偏ったスキルが習得されたいた。まさかこれ全部エイミィが与えたのか?
たしか【スキル】のランクはIが初心者、IIが一人前、IIIがベテラン、IVが達人、Vがレジェンドクラスという割り振りだとエイミィから聞いた。つまりホワイトリーは達人級の鍛冶師ということになる。
「エイミィ、これ全部与えたのか?ちょっと奮発しすぎじゃないか?」
「何を言っているのです?私はただ彼らにスキルを得られるように加護を与えただけで・・・え?」
どうやらエイミィもホワイトリーのスキルは予想外だったみたいでホワイトリーのステータスを見て冷や汗をかいていた。
「ウソ・・・子供の時点でこのスキルってことは、まさかこの子の生前って・・・」
「エイミィ、どうかしたのか?」
「光輝、ホワイトリーのスキルについては私は全く関与していません。ただ生前培っていた技術は魂に刻まれます。今回私の加護を与えたことでその培われた【スキル】が一部解放されたみたいです」
これで一部かよ、ホワイトリーって生前どんな職人だったんだ?それに今のホワイトリーの種族は屍人族とかなんか物騒な名前の種族になっているんだが。
「コウキさん、ホワイトリーに構ってくれるのは嬉しいんやけど。あちらの二人をどうにかした方がええですよ」
ゾアはそう言ってデューオとユナの方に視線を向けた。
デューオは執事服を身に纏った青髪のイケメンへと変化している。ロボットの姿と打って変わってこちらはアンドロイド風になっていた。
ユナも同じようにセミロングのピンク髪にメイド服を纏った美少女に変化していた。
二人とも自分の姿を見て困惑しているのかさっきから全然動いていない。もしかして何かエラーでも起きたのか?
「デューオ、ユナ大丈夫か?どこか異常はないか?」
「コウキ様、いったいこれは・・・」
「あれ?なんか、喋りが流暢になっていないか?」
「そういえば・・・あーあー、私はデューオ、コウキ様の忠実なるお世話係。たしかに以前より話しやすいです」
テステスみたいに何言っているんだ・・・とはいえ、ロボットの時と比べて表情も分かりやすくなったし、なんか親しみが持てる。
「凄いな、見た目は完全に人間だな」
「みたいですね・・・あ、でも・・・」
デューオは右手を掲げると次の瞬間。腕の部分が物凄いスピードで変形してレーザーブレードが出現した。その光景に殆どの者が目を丸くした。ゾアとホワイトリーだけは目を輝かせていたが。
「アイアンゴーレムだったころの性能は引き継いでいるみたいですね」
「そ、そうか。それよりエイミィが食事ができるようになったって言っていたが」
「そうでした、ユノ、食べてみましょう」
「はい、いただきます」
そう言って二人は早速目の前の串焼き肉を口に運んだ。
「こ、これは・・・」
「甘いタレにほのかな酸味、お肉にとても合います。それに噛むと肉汁があふれ出して口の中でタレの味と合わさって広がります」
なんか、ユノは食レポみたいな事を言い出しているが、どうやら味覚は持っているみたいだ。
「機甲人族は人工物の身体を持っていますが、五感も備わった種族です」
「そんな種族がいるのか?」
「ええ、と言っても今では殆どいないでしょうけど・・・まあその話は今度しましょう。今は三人の歓迎会です」
「そうだな・・・それじゃあ、改めて三人を歓迎して乾杯だ!」
この日、ダンジョンに新たに3名のメンバーを迎え入れたのだった。
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