第12話


「コウキサマ、チョウショクヲオモチシマシタ」

「ああ、ありがとうデューオ」


俺の部屋に入ってきたのは一体のロボット。分類ではアイアンゴーレムという括りなのだが外見はどう見てもどこかのアニメとかに登場しそうなシャープなフォルムのロボットである。


以前、ゾアがダンジョンの鉱石から動物の管理用としてアイアンゴーレムを創ると言ってくれて10体用意してくれたのだがそのうち2体を俺とエイミィのお世話係として置くことになったのだ。


ちなみに俺のお世話係をしてくれているこのロボットには『デューオ』と名前を付けた。由来はラテン語の「2」のデュオからで、エイミィのお世話係にはラテン語で「1」を意味する『ユナ』と名付けている。こちらもデューオと同じようにシャープなロボット外見である。


「コウキサマ、ツギノゴメイレイヲクダサイ」

「いや、今は特にないかな。休んでいていいよ」

「ソウハイキマセン。ワタクハ、ソウゾウシュデアルゾアサマヨリ、コウキサマノオセワヲニンメイサレマシタ」

「そうは言っても食事を持ってきてくれるだけでもかなり楽だしな」


使用人みたいな存在なんて今まで考えられなかったし部屋も特に汚いわけでもないからやって欲しい事なんてないのだ。仕事を手伝うにしても俺しかできないことだし何を頼めばいいか。


というか、カタコトとはいえこのロボット随分と喋るよな。ゾア曰くエドワード一緒に作った特別性とか言っていたな。


「ユナは何をしているんだ?エイミィのお世話係だし参考に聞きたいが」

「ユナハ、エイミィサマノオヤクニタッテイマス。アサカラミジタクヤ、ヘヤノソウジ、トキドキハナシアイテナドシテイマス。ショウジキ、ウラヤマシイデス」


エイミィのやつ早速お世話係を使いこなしてやがる。というかロボット相手だと素の状態で話しているのかな。というか羨ましいとかこれゴーレムが言うセリフか?


やはり急いでゾアに問い詰める必要があるな。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

地下22階層


「ゾアいるか?」


ゾアがいる地下22階層に行くと内部はマッドサイエンティストの研究所と思えるような怪しい機械がズラリと並べられている。本来であればただの背景の一部なのだがダンジョンとして現実化したことでこの辺の機器も本物となったのだ。


「おや、コウキさんどうかしてん?」

「ああ、ゾアが開発したアイアンゴーレムについてなんだが」

「ああ、デューオでしたっけ。あれはなかなかの力作やで。あの見た目で様々な武器を仕込んであります。特に腕にはレールガンやレーザーブレードなんかも入っていて、護衛もできるで」

「いや、デューオの性能についてじゃなくてお前あいつについて何か隠していることないか?」

「え?・・・えーと、なんのことや・・・」


すぐさま視線を逸らしながら話すゾアを見て確信した。


「話せ!お前何をしたんだ!」

「ええと、もっとコミュニケーションとか取れたらおもろいかなと思いまして。エドワード一はんと協力して魂の召喚魔法をやってみまして」

「はぁ?!」

「実はエドワードはん、魔法の研究をしてまして、その中に死人の魂を呼び出す魔法があったので試しにゴーレムに定着させてみたんです」

「つまりデューオはただのゴーレムじゃなくて魂を宿して・・・つまり自我を持っているわけか」

「はい、まだテスト段階のためゴーレムは一号機・・・つまりユナと二号機のデューオにしか魂を定着させていません」


つまり残りの8体はただのアイアンゴーレムという訳か。というかなんちゅー実験を行っているんだこいつは。


「ちょっと待て!お前さっきゴーレムはと言ったな」

「えーと・・・」


またしても視線を逸らすゾア。とりあえず一発ゲンコツが必要だな。


「あったあ!コウキさん、暴力反対!」

「アホ!なに勝手にとんでもない実験やっているんだよ!ホウ・レン・ソウ!これ大事だからな!」


メリアスもだがフロアボスたちの行動をしっかり把握する必要があるな。なんか良かれと思って色々とやらかす気がする。


「それで、何をしたんだ?」

「えーと、実はワイ用に話し相手と助手が出来る人材が欲しかったので適任となる魂をエドワードはんに呼び出してもらいまして、その魂をここの機械に保存してあったホムンクルスに定着させました」


ホムンクルス、別名人造人間であるがそれは生物ではない。簡単に言ってしまえば限りなく人間に近い人形。魔法とかで動かすことは出来てもそこに意思は宿らない。


「ホムンクルスを使って魂の定着とか、発想がぶっ飛んでいるな」

「そりゃ、ワイの頭脳にかかればお茶の子さいさ(ギロリ)・・・はい、すみませんでした」

「はぁ・・・もう呼び出してしまったのは仕方ないそれでその新しい助手は『我が主よ、ここにきていらしていたのですか』・・・エド?」


振り向くとそこには漆黒のローブを纏った青年、地下33階層のフロアボス、エドワードがやってきた。


「エド、お前ゾアと一緒にとんでもない事やっていたみたいだな」

「報告を怠ったこと、ここに陳謝します。ですがゾアとの開発は必ず我が主、ひいてはダンジョンの為になると確信しています」

「ダンジョンの為、それで死者の魂を呼び寄せたわけか?」

「っは!ダンジョンにはフロアボスという巨大な戦力があります。しかし巨大な力と言えど個人の力。発展のためには個人ではなく多くの優秀な人材を集める必要があります」


まあ確かにメリアスの畑仕事やカーツとカルラの魔物の生態調査とかも一人ではさばききれない数になるだろうなとは思っていた。ゾアの開発だって今は一人で出来ても今後規模が大きくなればマンパワーは必要だ。


「エド、それは今すべきことなのか?」

「はい、我はそう確信しています」


はぁ、どうもエドワードには俺がやりたい事を見透かされている気がする。


「分かった。そこまで言うなら今回の件は許すが以後はちゃんと報告しろよ」

「「っは!」」

「それで新しいダンジョンの一員はどこにいるんだ?」

「それならコウキさんの隣におるで」

「え?」


ソアの視線の先に目を向けるとそこには真っ白の髪をした少年が立っていた。見た目は10歳ぐらいだろう。痩せ細った身体でどことなく不健康そうな感じがした。


「初めまして、俺は神崎エドワード光輝。ここ、ダンジョンの管理をしている者さ。君の名前は?」

「ホワイトリー・・・です」

「ホワイトリーか、いい名前だね。よろしく、今日から君もこのダンジョンの一員さ」


予想外な展開ではあるがダンジョンに新しいメンバー、ホワイトリーが加わった。

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