第7話
会議が終わり、俺はひとまず玉座に戻って俺用の部屋を作った。
「よし、ここなら集中して作業ができる」
作った部屋の中は俺が地球で作業していた職場を再現してある。と言っても魔力の節約のために家具は無く、見慣れた照明とオフィスデスクを配置しただけだ。
やはり慣れている場所の方が仕事ははかどるものだ。違いがあるとすれば部屋には防音効果を施されており、たとえ玉座で5万人のライブが行われていても一切の音が漏れない。
「とりあえず、まずは1階層から始めるか」
俺がモニターを開くと、複数のモニターが周囲に出現した。
「すげー、マルチディスプレイも可能なのかよ。じゃあ、こっちの画面には出現モンスターのデータ・・・こっちはにはアイテムリストで・・・・」
俺はもう一度確認するつもりで、ダンジョンのデータを細目に見た。
「しかし、改めて見ると本当にすごい量のデータだな。没頭していた時はあまり気づかなかったがこれ、普通にゲームとして使っても大ヒット間違いないと思うぞ」
ダンジョンの構造、モンスターのデータ、事細かに記されたデータは言わば芸術と呼びたいほど綺麗に並んでいた。
「まあ、そのダンジョンは異世界にできて、俺たちは今その異世界でダンジョンの運営をしているんだが・・・」
俺はあくまでプログラミングを専門にしている。ゲーム運営とかそういう知識はそこまで持っていない。
「それで?グラムの階層はどうするの?」
エイミィは興味深そうに俺が操作するモニターを覗き込んでいた。
「ああ、さっきの会議でも言ったように1階層は迷宮にするよ。あと大人数で攻め込まれたときの対策で一定数が纏まって入ってきたらダンジョンの入り口を変更する仕組みにするさ。運が良ければ目の前に次の階層への階段があるかもな」
ダンジョンゲームと言ったら定番のマップ構造が変わるものだが一々構造を変えていたら魔力が勿体ないからとりあえず入り口だけランダム化することにした。
「マップは2階層の構造を元に簡略化させて、各階層に安全エリアを創ればOKかな」
俺は次々と表ダンジョンの各フロアに安全エリアを設置していった。魔物が寄り付かないように魔物侵入不可設定にしておく。
「そういえば、俺にもレベルがあるのかな?」
メリアスの情報が見れたことを思い出した俺はモニターを開くと『ステータス』という欄を発見した
コウキ・エドワード・カンザキ
種族:人間
職業:ダンジョンマスター
【ゴッドスキル】:迷宮創造
「おお~」
改めてモニターに自分のステータスが表示されると異世界に来たなと改めて実感した。ってちょっと待て、なんだこのゴッドスキルって?名前からしてなんか痛いんだけど。名前からしてこのダンジョンwお作るためのものだとは思うが。
「なぁ、エイミィ。このゴッドスキルって何だ?」
「あ、それ?それは私があなたに与えた特別なスキルよ。いうなればチートスキル?
ってやつ。このスキルを与えたから光輝はダンジョンをプログラミングで作ることが出来るの」
予想通りこれはダンジョン創りにかかわる【スキル】みたいだ。
「ちなみに一般的に【スキル】には【コモンスキル】と【ユニークスキル】が存在するの」
「ますますゲームっぽいな。じゃあ【ゴッドスキル】は何なんだ?」
「簡単に言えば女神である私の加護ね。レア扱の【ユニークスキル】とは比べ物にならないくらい凄い力なんだから。世界の理に干渉できる特別な能力なんだから」
確かに魔力があれば無からなんでも創れる力なんてとんでもない能力だな。
「【コモンスキル】とかは生活に役立つ技術や戦いに役立つ能力ね。【料理スキル】や【剣術スキル】なんかが良い例ね、取得条件や難易度はそれぞれだけど基本的に覚えようとする意志があれば誰でも習得できるものね。ちなみに【コモンスキル】にも熟練度は存在するの。【剣術スキル】の熟練度が上がれば【剣術スキルII】になったり派生してより強力な【スキル】へと変わるわ」
「ふーん、じゃあ【ユニークスキル】は?」
「【ユニークスキル】は言うなればその人の代名詞とも言えるものね。複数の【スキル】を極めた人にしか手に入らないレアスキルよ。だから【スキル】を管理している私でも【ユニークスキル】だけは与えることは出来ないの。まあ中には生まれ持って【ユニークスキル】を持つ人もいるけど」
エイミィの話は実に興味深い。ちょっとしたチュートリアルを聞いている気分だがそういう仕組みを知るのは結構楽しい。
「だからこの世界において【スキル】の習得はステータスなの。強力なスキルやレアなスキルを持っていればそれだけで地位を獲得できるわけ」
「なるほどね、スキルを与えることが出来るエイミィは喉から手に入れたい存在なわけか」
改めてエイミィを狙う目的を理解したが、同時にそんな奴らにエイミィを渡すわけにはいかない。
「ならダンジョンの難易度はしっかりと考えないとな。グラムたちが負けるとは考えられないが負担を減らすためにも色んなギミックを考えないと」
「っちょ!魔力はそんなに多くないんだから節約は大事よ!」
そんなやり取りをしていく中、俺は久々に仕事中に笑ったなと思った。
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