第6話
「さて、次の問題だが・・・お前たちは強い・・・俺が考えた高難易度のダンジョンとして相応しい強さを持っていると思っている」
俺が褒めると全員が満足そうな顔をしていた。
「だが、さっきの映像で見たようにあの程度の挑戦者たちではダンジョンの1階層でリタイアは、ほぼ確実だろう。まず考えてグラムのいる11階層までたどり着くのは現状で無理だ」
サラマンダー10体は小手調べのステージだ。2階層からは迷宮とはいえサラマンダーよりも強力なモンスターや集団で連携取るモンスターなどを配置している。攻略難易度でいえばかなり変わる。
せっかく作ったダンジョンも誰も来なければ本末転倒。財宝や珍しいものがあるからと言って、無理なものに挑戦する物好きはそうそういないだろう。たとえこのダンジョンで死んでも五体満足で入り口に戻るとしても。
「では、何かお考えがあるのですか?」
「まず1階層は2階層以降と同じ迷宮に変えるつもりだ、あのサラマンダーたちをまとめて倒すのは大変そうだから散らばして他のモンスターたちと同じように徘徊するようにする」
いきなりサラマンダー10体は難易度的にも厳しそうだしなるべく入りやすい仕組みにしないといけない。
「あと、ダンジョン各所に安全エリアを創ろうと思う。一定のエリアにはモンスターが近づかないようにする」
「なるほど、常に不安な迷宮を捜索では長続きはしないでしょうし休息をとれる場所があるのは良い配慮かと思います」
メリアスの言葉に皆も納得して頷いてくれくれる。
「できれば安全エリアでも色々とコンテンツを入れたいと思う。将来的には安全エリアで寝泊まりができる施設とかあったらいいなと思う」
ゲームだと思いつかないけど、現実的に考えて簡易式ホテルとかトイレとかあると結構便利なのは間違いない。
「休憩場所ですか。確かにそれがあれば冒険者たちも何日でもダンジョンに滞在できますな」
「ダンジョンの安全スポットは難易度が低い場所は多く、難易度が上がっていくごとに少なく、あるいは狭くしようと思う」
「食料はどうします?冒険者でも、持ち込める食料には制限があります。長くて1週間ぐらいでしょう」
「一応、モンスターのドロップでたまに食料が落ちるようになっている」
モンスターのドロップには食料系がある。味はどうなのか分からないが。
「ダンジョンで現れるのが魔物化した動物であれば、アイテムをドロップして消えることは無いんですけどね」
おや?エイミィが重要なことを言ったぞ。
「え?魔物ってダンジョン以外でも生まれるの?」
「生まれますよ。動物が魔物化するのがこの世界で一般ですから。ダンジョンみたいな場所から生まれる方が珍しいです」
エイミィの話ではこうだ。この世界にも魔物はたくさん存在しその殆どが動物が魔物化して繁殖したことで生態系を作っているそうだ。原因は大量の魔力を体内に溜め込み魔核と呼ばれる石が生成されて魔物化するらしい。
ドラゴンとかも元は爬虫類系の生き物が魔物化して進化したそうだ。
また魔力溜まりと呼ばれる場所がたまに出現し、そういった場所でも魔物が誕生するみたいだ。仕組みはダンジョンモンスターに近いがこちらはドロップアイテムが落ちない代わりに魔核となった石を落とす、
「もしかして人間も魔物化とかするのか?」
「いいえ、この世界の人間には魔力を体内で循環させて魔法や【スキル】を発動させられるのでその心配はありません。まあ魔人族と呼ばれる種族は存在しますが、彼らはそういう種族であって魔物とは人間とサルと同じくらいの違いです」
なるほど、人間以外にも様々な種族が存在するのか。つまりカルラみたいな獣人とかもいるわけな。今度エイミィに詳しく教えてもらおう。
「魔物の肉は一般的に食料としても扱われています。繁殖力が強く成長も早いため、ダンジョンで飼育するのはこちらとしても食料問題を解決できるはず」
「そういえば俺たちも食料が必要だったな」
忘れていたがこのダンジョンは出来立てほやほや、食料調達とかやるべきことがあった。
「そうなると、食料となる動物や魚を集めないとな」
「でしたらその仕事、私にお任せください!」
真っ先に声を上げたのはカルラだ。てっきりカルラに張り合うようにリンドも挙手すると思ったが彼は静観している。
「そうね、カルラなら迅速に森の食料を集められるでしょう。現状、挑戦者がグラムのフロアにすらたどり着くのは無理でしょうし」
確かにカルラがダンジョンを離れていても特に問題は無い。
「あれ?そういえばエイミィ、このダンジョンの外ってどうなっているんだ?」
モニター越しで兵士たちが外に送られたのは見たがここがどこに建てられているのかまだ知らなかった。
「このダンジョンは『ノフソの森』と呼ばれている深い森の中心地に建てられているわ。ダンジョンモンスターと比べたら大したことないけど魔物も結構生息している危険な森として知られているわ」
「深い森の中か・・・ならなおのことカルラに適任だな。カルラ、初仕事だ森の中で食料の調達を頼む。魔物化していない動物や魚を見つけたらこっちに運んでくれ。ついてにダンジョン周辺の調査も任せたい」
「御意!お任せくださいコウキ様!」
「おそらくエイミィを狙う輩が次々とこの森に入っていると思うからそいつらに見つからないようにしてくれ」
「その者たちの討伐は?」
「必要ない。むしろ、ダンジョンで返り討ちにしたい」
ダンジョン運営のための貴重な魔力だし色々とデータは取っておきたい。
「コウキ様、カルラが連れてきた動物は私のフロアで管理させていただきます。私のフロアが一番魔力濃度が高いですから早く魔物化が進むと思います」
メリアスが挙手して提案してきた。
「そうですね、ではメリアスには今後食料関連の管理をお願いします」
仕事を任されたカルラとメリアス以外のフロアボスたちは羨ましそうに二人を見た後、期待した目でこちらを見ていた。
「安心してください。他のフロアボスたちにも今後の為にダンジョン守護以外にも仕事をお任せする予定です。ですがそれはダンジョン運営が軌道に乗った後です。それでいいですね光輝さん」
「ああ。そうだグラム、カーツ、リンドは担当する各フロアの調査を頼む。ダンジョン内部で何か異常があったら報告をして欲しい。」
「「「了解しました」」」
俺の指示に皆が頷いた。
会議が終わり、フロアボス達はそれぞれ自分の階層に戻った。
「さて、忙しくなるぞ」
「光輝、うれしそうね」
俺はやれやれという風なつもりで言ったが、エイミィは俺がうれしそうにしているように見えたらしい。
「そうか?」
「うん・・・ごめんね。光輝に完成してもらうばかりか、ダンジョンを任せるような形になって」
「まぁ・・・ここまでやったんだ、最後までやり通させてくれ」
最後が何なのかは分からないがだけど、中途半端な状態で放り投げることは俺は許さなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます