第3話

気絶した兵士達の状態を確認した後、俺はエイミィと共に打ち合わせをすることにした。


「さて、どうしたものか」


自分が思いつく難易度の高いダンジョンを想像して作ってみたが、この世界の住民のレベルが思った以上に低かった。


「もう一度確認するが、この世界の一般兵士の強さは皆あんなものなのか?」

「彼らはメゾン共和国を名乗っていたわ。この世界の大国の一つだけど兵士の実力でいえば下の方ね。他の大国の精鋭だったらあのサラマンダーたちを倒せていたと思うけどそれでもかなりの被害は出ているはず。さっきも言ったけどあのサラマンダーレベルでも大国が軍を引き連れるほどなのよ」


呆れた様子のエイミィを見て俺は少し気持ちを落ち着いたがふと疑問が浮かんだ。


「そういえば、あの兵士達なんでこのダンジョンにお前がいることを知っていたんだ?ちょっと早すぎないか?」

「それは私が女神だからです」


理解不能


「あ・・・つまり、教会から私の居場所を察知できるのです。光輝さんの世界で言えば、私の存在がGPSの発信機で、教会はそれをキャッチするアンテナ」


なるほど、だからエイミィがこの世界に戻ってきたことを察知し、急いで兵士たちを引き連れてここにやってきたわけか。



「たしか、聖・メゾン王国はこのダンジョンがある森と隣接していますから、私を感知した時にすぐ出発したのでしょう」

「・・・・」

「なんですか?」

「エイミィの話し方・・・無理していないか?」

「っ!」

「俺に説明するときの口調は大人っぽい雰囲気を出しているけど、俺がサラマンダーの話したときの話し方は子供っぽかった。どちらかというと、こっちが素のお前なんじゃないのか?」


「・・・・・・」


エイミィは引きつった顔で固まっていた。おそらく、今まで大人ぶった態度で威厳を保とうとしていたのだろう。


「別に素の状態で話していても構わんぞ。そっちの方が話しやすいし」

「・・・はぁ。せっかく苦労して大人の女性ってイメージを作っていたのに、すぐボロがでちゃうんだから・・・・」


観念したかのようにエイミィはくだけた話し方になった。てっきり幼児体系にでもなるのかと思ったが、内面が子供っぽくなっただけみたいだ。なんか、これはこれでギャップがあって面白い。


「まあ、無理をしているようだったし。気楽なほうでいいよ」

「そうね、光輝ならこの状態で話していても大丈夫かも。あ、でも威厳を見せたい相手にはちゃんと大人モードになるから」


もう呼び捨てかよ・・・いいけど。


「それで光輝、これからどうする?多分しばらくしたら新しい冒険者や兵士たちがやってくると思うけど」

「ん~、一応お前を守るためのダンジョンだからな・・・強いのに越した事は無いんだけど」

「問題はフロアボスね・・・・」


そう、このダンジョンには11階層ごとにフロアボスと呼ばれる存在が配置されており、最強戦力の8人の総称でもある。これがステータス設定の例外の一つなのだ。


フロアボスのステータスは完全に俺の自由にできて、武器や能力など俺が思いつくものを色々と詰め込んんだ存在。後に調整しようと思って階層難易度を無視して全員個性に合わせたぶっ飛んだステータスにしている。


「・・・設定を変えることはできるか?」


「出来ないわよ、だから問題なの。このダンジョンの構造や出現するモンスターの設定はいじれるけど、フロアボスは重要設定の一つだから一度更新しちゃうと変更が出来なくなっちゃうわけ」


つまり、フロアボスは自力で何とかしろと。もし暴れだしたら俺が止めろとでも言うのか?


うん、無理ゲーだ。


「はぁ・・・どうしたらいいのか『お困りのようですね、コウキ様』・・・え?」


二人で悩んでいると、玉座に一人の美女が現れた。翡翠のように輝く髪にギリシャ神話の女神が着ているような衣服、そして神々しいオーラを放っている。この世の人間半数以上は必ず彼女に見惚れると断言できる美女がそこにいた。だが、その美女を見た瞬間、すぐに誰なのか分かった。


「もしかして、メリアスなのか?」


「はい、地下44階層フロアボス、メリアス、創造主であるコウキ様がお困りの様子だったので勝手ながら参上いたしました」


メリアスは片膝をついて頭を下げた。彼女を見ると、名前やレベルなどが見えた。


メリアス

種族:聖樹神

職業:フロアボス


フロアボスって職なのかよ!まあ、役目とか考えたらそうなのかもしれないが。しかし、俺がプログラムしたとはいえ、想像以上の美貌だ。エイミィが人気雑誌のモデルタイプの美女なら、こっちはハリウッド映画に出てくるような美女だ。


「メリアス、どこも異常はないのか?」


「はい、五体満足、魂魄共に正常。この世に誕生できたことを感謝しております」


大袈裟すぎだろ!むしろ勝手に生み出したこちらが謝りたいよ!


「他のフロアボス達も大丈夫か?」

「はい、表ダンジョンフロアボス4名、裏ダンジョンフロアボス、私を含め4名、無事この世に誕生することが出来ました。現在は持ち場で待機しております」


どうやら、他のフロアボス達もしっかりいるみたいだ。


「ところで、コウキ様?エイミィ様と何か相談していたようですが。もしお困りでしたら私達にも協力させてください」


「私達?」


メリアスが頷くと、まるでター○ネーターのタイムスリップで現れたかのように、7人の男女が片膝をついた状態で現れた。


11階層フロアボス:大地の巨人 グラム

22階層フロアボス:深海の覇者 カーツ

33階層フロアボス:元素の神獣 カルラ

44階層フロアボス:天の支配龍 リンド

地下11階層フロアボス:魂魄の悪魔姫 ミーシャ

地下22階層フロアボス:虚無の皇帝 ゾア

地下33階層フロアボス:原初の魔術師 エドワード

地下44階層フロアボス:世界樹の女神 メリアス



以上、8名のフロアボスが玉座の前に現れた・・・ヤバいな、正直このメンツを従えるとか凄く不安なんですけど!ちょっとリセットボタンとか無いですかね?設定とかいろいろ練り直したいんですけど!


「コウキ様、我ら『オリジンダンジョン』フロアボス、あなたに忠誠を誓わせてください」


メリアス達は真っ直ぐな視線を俺に向けた。一瞬困惑したが、エイミィに視線を移すと安心したような表情をしていた。


そして俺は思った、勝手な理由で彼女たちを生み出し、そして消そうと一瞬でも考えた自分が愚かだと。もし彼女たちが暴走したときは、俺が責任もって止めなくてはならない。


ぶっちゃけどうすればいいのかは分からないけど責任は取らないといけない。それだけは断言できる。


「分かった・・・改めてよろしく頼む。お前達は神、エイミィを守る盾であり、矛でもあることを自覚しろ!」


『っは!』



俺の指示で全員が一斉に返事をした。

ここからが俺達のダンジョン運営の始まりだ!






・・・・・打ち切りじゃないからな!

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