第6話 「ダンジョン支配の真の能力」
ダンジョン内での実習は中断になって、零斗たちは学校へ帰ってきていた。
真理先生は書類を書かないといけないとか言って職員室へ戻っていったから、今は自習になっている。
「ねえ、月島君、ちょっといい?」
「なんだよ」
「ここで話したくないから、屋上行きましょ。確かめたいことがあるの」
「一応授業中なんだから、教室抜け出して屋上に行くのもな……」
「そんな真面目なこと言うキャラじゃないでしょ。いいから早くついてきて」
「俺のキャラを勝手に決めないでくれる!?」
まあ、ついていくし真面目なキャラでもないけどさ。
一目につかないよう、静かに教室から出て階段を上る。屋上の扉を開けて、ようやく一息吐いた。
「それで、確かめたいことってなんだよ」
「月島君、さっきのゴーレムが再生した時の状況をイメージできる?」
「あ、あぁ……できるけど……」
本当についさっきの出来事だし、忘れている訳がない。
目を瞑り、土と瓦礫の集まる様子を鮮明にイメージする。目を開けると、零斗の腕に土や石が集まり巨大な手ができていた。
「な、なんだこれ!?」
「それ、恐らくさっきのダンジョンのボス……ゴーレムの能力よ」
「マジかよ……。なんでサナエは、俺がボスの能力を奪ったって分かったんだ?」
「ボスになれるなら、ボスの特性が月島くんの身体になんらかの影響を与えるんじゃないかって、ただの予想ね。丸々能力を使えるとまでは思ってなかったけど」
確かにゴーレムを倒した瞬間、零斗の身体の中になにかが入ってくるような感覚があった。意識しないと、感じ取れない程度のものではあるが。
「これが確認したかったの。前に話したでしょ。月島君には攻略したダンジョンの支配権を得ることができるのかもって。二回も同じことがあればほぼ確定で良さそうね」
「俺もこんなことができるなんて知らなかった。俺の腕じゃないのに俺の意思で動かせるって、なんか変な感覚だな」
「月島君の強さを知ろうと思って追いかけてきたけど、知れば知るほど分からなくなってくるわ。本当に、月島君はなんなの?」
「俺が知りてえよ!」
自分でも知らない一面が次々出てきて零斗自身もビックリしてる。つい最近まで普通の高校生だったのに、いきなりスキルを持ってるとかゴーレムの腕を出せるとか困惑する他ない。
「とにかく、今大事なことは二つ。月島君はダンジョンボスを倒すとダンジョンの権限を奪えて、そのダンジョンのボスの能力を得られること」
「未だに実感はないけど、認めるしかねえよな」
「それと、ラスボスごっこだっけ。あれもできれば続けてほしい」
「……なんで?」
「ダンジョンボスがいなくなったのにダンジョンが維持されてるなんて明らかに不自然でしょ? ボスなしで形を維持してるダンジョンに月島君が関わってることが突き止められたら、色々危険だわ」
ダンジョンを自在に扱えるスキルなんていくらでも悪用できてしまう。この力が知れ渡れば零斗の力を求めた悪人達に狙われるかもしれない。
零斗だけならまだしも、零斗の家族や友達まで被害を受ける可能性があるとなるとサナエが危険視するのも納得だった。
「それに、月島君がダンジョンボスだったら、探索者は殺されないでしょ? 私も手伝うから、これからも続けてくれない? ――これ以上、ダンジョンで人が死んでほしくないの」
サナエはダンジョンで友人を失った。だからこそ、ダンジョンで大切な人を失う悲しみを誰よりも理解している。
そんなサナエから頼まれてしまっては断れるはずもない。
「分かった。俺とサナエで、これから一緒に頑張っていこう」
零斗はサナエに手を差し出す。サナエは優しく微笑んで、零斗の手を握り返してくれた。
ダンジョンボスと、探索者。両方をこなすのは大変だろうけど、サナエと一緒ならできるような気がしてくる。
チャイムが鳴った。授業の終わりを告げる合図だった。
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