第22話侵食


つまり、聞き方がいけない。

「魔女はどうして魔女になるの?」


「世界と世界を、例えば宇宙と宇宙、

 時間と時間を乱れなく繋ぐ為に、です。

 我々の竜の王が我々を遣わすのです。」


うん。惜しい。もうちょい。

「竜と魔女はなんの為に遣わされるの?」


「そうです。竜と魔女なら人類と会話が出来る。

 その世界で対話の成立するものが、

 その世界の友人となります。」


思ったより、大きな話だな……。

「どうして異世界人の私が魔女なの?」


「世界を繋ぐためです。貴方自身が楔になる。

 それに、同一世界の者ではどうも難しい。

 過去から学び、違う世界のものに祝福を与え、

 生まれ変わらせるのが最適と結論しました。」


「第三者ってこと?無責任にならない?

 生まれ変わるなら転生でいいじゃん。」


「……いいのですか?私に命は扱えません。

 我々の既存の方法にない考え方ですが、

 やってくれというなら、やってみますか?」


「出来るの?」


「出来ないと言っています。

 正確には、試した事が無いのです。

 命など、勝手にして良いようには

 思いませんが、出来るかもしれない……。」


「あ、いや、いいです。

 でも魂が移って来てしまってるでしょ?」


「移すことは出来ます。ですが、転生とは、

 死から始まることと知っています。

 その死に責任は持てません。

 死後の魂を導くなどということは、

 我々、竜に出来る事ではないのです。」


一度死ぬと、なんか違うらしい。

「ユイマの魂は今、どうなってるの?」


「我々と共にあります。

 魔石には色々なものを収める事が出来ます。」


「この、魔石の中にいるの!?」


「眠ったままですよ。

 魔石に眠る竜や魔物は珍しくはない。」


「純粋な魔に近い存在なら、でしょ。

 人類は珍しいよ!」


「魂なら可能です。」


……左様ですか。出来るんだ、そんな事……。

確かに、伝説とか昔話ならあるんだけどな。

…いや、違う。少し脱線してしまった。

「……今、世界と世界の繋がりが乱れてるの?」


「乱れるのです。大きな魔法戦争が、

 身の丈に合わない魔物や魔獣の召喚、

 異界との無法な出入り、聖にも魔にも、

 粗雑な契約を乱発させるためです。」


「戦争が起こるの!?」


「そうです。貴方のいた世界は、その時、

 比較的近くに存在したために、大きく

 その被害を被る形になります。」


「私の…いた世界?被害って?」


「この世界に侵食されて、最悪、無くなります。

 大変なことです。捻れの中の果て、

 王の手も届かない所では、その末路までは、

 我々も把握していません。」


……はい?

「え……と、だから……私のいた世界から、

 魔女を連れて来たという事…。何故私?」


「世界と世界、時間と時間の重なりが、

 近くにあり、繋がりやすかったからです。

 すべてが始まる前の時間に、

 連れて来ないといけませんから。」


「……たまたま、私がそこにいたんだ。」


「そうですね。ユイマと魂が近い存在として、

 貴方だったのでしょう。」


「どうしてユイマだったの?」


「世界を越える魔力をもって、この時代に、

 彼の地で魔法を使ったからです。

 私は、そこを利用してこの世界に入り込み、

 丁度よく貴方が見つかった。」


「!?そんな大したことしてないって!

 魔獣ホロンを召喚しただけで。」


「骨董品を使ったスピアを作って

 魔法陣を描いたでしょう。

 水の竜が魔法弓兵ファルーに与えた、

 あれはもともと貴方の世界の矢じりです。」


「………は?そんなもん出回る訳無いでしょ。」


「矢などいくらでも渡しています。

 何万本の中のひとつですよ。」


「矢が……貴重だったの?」


「そうでしょうね。ただの矢ですが、

 魔法をかけたのは、紛れもなく水の竜です。

 今も生きていますから、魔力が影響します。」


「そんなもんが、今も何万とあるって、

 大変じゃない!」


「大変ではありません。

 我々が働きかける事がなければ、

 ただの骨董品の矢じりです。」


 …………そういうものなの?

もう理解が、実感が追いつかない。

けど何より気になるのは、利用するとか丁度よくとか、自分達に都合よく使うようないい方だ。

そんな簡単に、世界の行く末とやらになんて干渉出来ないんじゃないのか、本来は。

「王は、ライトニングさんのしてることを、

 許してるんだよね?」


「私は、王に遣わされる身です。」


 う〜ん。グレーないい方だなぁ。気になる…。

「……水の竜は、自分の魔力の影響なんて、

 わかってるのかな?」


「我々が働きかけたからこそ起こった事です。

 この事変を起こしたのは、水の竜ですよ。」


「え?」


「世界の破壊と創造を司る神、我々の王に、

 救援の狼煙を上げたのは水の竜です。

 魔女には我々の同胞、

 水の竜を助けてほしいのです。」

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