第14話反応
そもそもどういう事情でこの家に泊めて貰えていたのか、最初から整理しておかないとスッキリしない。事実は知りたくとも敢えて避けている。人の怒りを知れ、少しは。
かといって何もすることも無くて暇で暇でミニ本棚の魔法学問書にまで手を伸ばす始末。内容は学が浅くても読めてしまう深いもので、単純に読み物としても面白い良書だった。イメージとして解る気がするけれど全く使いこなせない知識と理論が書いてある。意外と一般人が読める本もあるんだな。そういう意味で客人向きのものが揃えてあるのかもしれない。生意気を言うと。
竜と私の間には会話も何もない。昼過ぎの陽射しが斜めに入って暖かく心地良い部屋の中で、お互いを無視したままの虚しい時間が過ぎていく。
私は本棚の横に置かれた籐の腰掛け椅子に座ると、パラパラとわかりそうな所だけ読書しながら、一応、たまに、竜の様子を見ていた。竜はベッドの上で丸くなっている。居心地良さそうで何よりですな。
そのまま寝るのかと思ったら、ふと何か思い出したように話しかけてきた。
「…ファルーの話は聞きましたか?」
……誰?
「彼はきっと貴方に会いたがる。」
知らんよ。
「この世界は久しぶりですが、
彼の子らには会えるでしょう。」
知らんて。その人に会うつもりなら、
来る所間違えてない?
「二人の竜と魔女は貴方を歓迎しています。
けれど 心配もしています。
良くないことを考える者達に
気を付けるようにと。」
………………。
私の性格なのだろうけど、長くなりそうなことは手短に済ませたい。始める前に終わらせる方法を考える。出口が見えないものに自ら首を突っ込みたくないのだ。人はそれを面倒くさがりと呼ぶ。
この竜が私を連れて来た理由には、何か長い長い話が隠れている……。
今更気付いてしまった…
もしかしたら私に何も言わないのは、
ここにいるだけで人助けになる、
なんて甘い話ではなくて、
ここで何かが起こるのを知っているからでは?
「魔女には我々が理解出来るはず。
しばらくこの石を使いなさい。」
珍しい。命令形だ。
まるで心を見透かされたようなタイミング。
その気になれば出来るタイプだったのか……。
石を使えと言われても、どうすんの?
とりあえず持ってみる?
竜から渡されたはいいが、どういう物かも解らない(だからといって聞きたくもない)ので、ミニ本棚の上に置きっぱなしにしていた小石を再び手にしてみる。
……………………………。
「何も起こんないじゃん。」
……………………!!!!!!!
一連の私の反応を愉しむように竜は小さく頷いた。
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