第6話絶望


 人を疑うことは良くない?

とりあえず、面と向かって否定するのは失礼に当たるかもしれない。だとしても。

こっちは突然放り出されて、わけもわからず絶望していたのだから、また突然持ち上げられたところで気も漫ろである。

 えっと……一体どうしてこんな事に?

 何が理由なんだろ…竜と行動してること?

 それ以外思い当たらない。

 この世界の竜って、何者……?


「宜しければ、ラダ、とお呼び下さい。」

まったく落ち着かない私に、何とも優しいお言葉。神か天使の対応だが、ユイマが本当に大魔女と呼ばれるのに相応しい娘なら頷ける。

「わかりました。」

……出来る限り簡潔に答えた。

大魔女については、その過去が謎の部分も多い。

 ユイマが、というより、

 今の私が"大魔女"だというのが正しいなら、

 私みたいなのが"中にいる"人が"大魔女"??

 他に特別な事なんて無いはず。

 竜に会ったのは、もちろん偶然ではなくて、

 世界を跨いだ現象が起きたから、

 竜が現れ……そして友人となる……

 そのほうが辻褄が合う……。

だからといってそうと決まった訳では無い。

竜は"誰か"と話していた。

 破壊と創造を司る……竜の王

 友人……自らの開放……

うまく思い出せない。ユイマの記憶ほど鮮明ではないのだ。

 つまり、中身が私になってからは、

 インプット性能がガタ落ちしている……

 ふふ……あはは……短い夢だったな………。

頭カラッポでわけがワカリマセン、と正直に話してしまおうか。


 ボンヤリしているのを、疲れていると判断してくれたようだ。ラダさんは目を伏せて会釈をすると、後ろに下がり、珍しい竹製の簡素なドアに向かって何か声を掛けた。ユイマも聞いたことのない言語だ。

こちらに向き直ると、また頭を垂れる。

「お暇の時にお邪魔いたしました。

 今日はご挨拶にお伺いさせていただいた

 まででございます。

 御用がありましたらベルをお使い下さい。」


 あ、行っちゃうんだ?寂しいな…

 男か女かハッキリ聞きたかった!

 ローブ着てるから魔術師以上の方?

 こんなのが大魔女?でスミマセン……。

などの複雑な思いでサイドスタンドに置いてある金色のベルを一瞥し、ただ頷く。

この年齢で魔術師であれば天才だ。現代ならギフテッドとか呼ばれるのだろうか。そんな雲上人に対して極めて不遜な態度である。

 竜のせいです。スミマセン。

 あいつが見た目とボイスに反して

 嫌なヤツなもので……

私としては、相手が勝手に大魔女だと信じてるだけとも言えるので、申し訳ないけれど何も応えられない。例えその通りだとしても、私は平和な日本でさえ何も出来ない只の人だったのだ。

 竜が言ってた助けてほしい人というのは、

 あの子なんだろうか。

 私が助けられることなんか、ある?


 ラダさんが退室してから、しばらく目を閉じて考えをまとめようとしたのだが、そうする程に自分が小さくつまらない物であると痛感して、なんだか嫌な気持ちになり、またベッドに伏して眠ってしまった。

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