おじさん救助を期待する
緑色の小さいやつ腹部消失事件から数日が経過した。
初日は自分のやったことにビビり散らかした。散々ビビり散らかして大混乱して落ち着くのにかなり時間がかかった。
日が落ちてきたので車の中に閉じ籠った。やっちまったことに恐れ、気が動転し腹部の消失した緑色の小さい被害者を見るのが怖かった。
警察に出頭しようと決めたら家族に迷惑がかかってしまうと涙が出てきた。涙を流しながら頭を抱えて、その日は混乱したままだった。
食欲は全くなかったので、そのまま気絶するように眠りについた。自覚できない重いストレスがかかっていたのだと思う。
二日目
車の外がうるさくて目が覚めた。そっと外を覗くと、昨日の被害者の緑色の小さいのがでっかい犬に群がられていた。たぶん食われている。
悲鳴を上げたら見つかると思い、口に手を当てて必死に身動きしないように音を出さないように身を伏せた。
時間の経過がわからないくらい憔悴していたが、気がついたらいつの間にか外の音が聴こえなくなっており、でっかい犬は消えて血だまりだけが残されていた。
外に出る勇気がなくその日は車の中に閉じ籠った。
スマートフォンのバッテリーが半分になったので電源を切った。生命線だ。緊急の時まで電源を入れないことにする。
防災用の水だけ飲んで、また気絶するように寝たようだ。気絶は睡眠に入らないのだろうか? 全く眠った感じがしない。
三日目
気持ちも大分落ち着き、このままではまずいと危機感が爆上がりするがなにが最善かわからないが、当初の予定の煙を焚こうと思い出す。
慎重に車から出て周辺から大小さまざまな枝を確保する。めちゃめちゃ集まったが、なんだよこの倒木みたいなでかい枝。藪は集めるときに音がうるさそうなのでやめておいた。あのでかい犬がまだ近くにいるかもしれん。
ノートを破りターボライターで着火、細い枝にどんどん燃え移り火が大きくなっていく。火を見ていると心が少し癒されているようだった。
煙がめっちゃ出る。なんか目に染みるし。周囲に燃え移るとやべぇと慌てて焚き火周辺を円を描くように角スコップで掘る。
火が消えないようにずっと枝を追加し続けた。ここで初めて空腹を自覚しブロック栄養食を食べる。うっっっま!
四~七日目
夜に車外に出るのは危険だと思ったので、枝の追加をしなかった。案の定鎮火していたので再度着火。途中小雨が降ったが火は燃やし続けた。
でかい犬事件以来警戒してはいるが盛大に煙を出してそれなりに音も出ているし、排泄物の匂いで生物が寄ってきても不思議ではない。しかしあれから生物を見ていない。
ちなみに排泄物は角スコップで地面に穴を掘って都度埋めている。
定期的に枝を追加し、車に戻る、喉が乾いたら水を一口飲む、ブロック栄養食をかじる、日が落ちる前に一番でかい枝を投入するを繰り返した。
近隣住人や救助どころか消防すら来ない。
そして八日目
ついに水がギリギリ一日ほど持つ程度になり、ブロック栄養食は節約していたのであと三箱ある。
遭難時は移動せず、その場で救助を待つと聞いたことがあったが限界だろう。脱水症や餓死をするくらいなら動くしかない。
まずは水を探そう、食料はこれだけ暖かいならなにか果実や木の実があるかもしれない。毒や寄生虫は怖いが餓死するくらいなら、集めた食料の毒で死んだ方がまだマシのような気もする。
使えそうなものや貴重品を防災用品を入れていたリュックと仕事用の肩かけ鞄の中に入れ、不要だと思ったものは荷物軽減のため車の中に残しておくなどの準備は済ませてある。
もしかしたら今まで守ってくれた愛車とは、ここでお別れになるかもしれない。今までありがとうと過去一番の感謝を愛車に捧げ、ひと撫でして出発する。
でかい犬や緑色の小さいのが怖かったが、なんとなく大丈夫なような変な確信はあった。
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