おじさん変なのと相対する
二十メートルほど離れたところにいる緑色の変なのと、バッチリ視線が交差したのがはっきりとわかった。
なにも身につけず全裸。身体全体が緑色で体毛は無い、痩せた身体に不釣り合いに大きい頭、禿げ上がった頭には額に小さいコブがあり、大きなつり上がった目、大きな尖った耳、大きな鷲鼻、口は頬まで裂けて尖った牙が見えている。
そのつり上がった大きな目で私と見つめあっている。
え、本当になにこれ。動物? 仮装? 人形? 着ぐるみ? それにこの距離でこんなにはっきりと細部を観察できるくらいに、私は視力が良かったか? おかげで変なのの局部がはっきりと見えているんだが。
変質者かもしれんと警戒しながらなにかないかと視線を巡らせ、近くに長さが七十cmほどで腕周りはありそうな太さの、まだ細かい枝と葉っぱの付いている太い枝を発見。
ゆっくりと枝に近付き拾い上げるが、予想外に軽くバランスを崩して一歩下がってしまう。鉄アレイ拾おうとしたら割り箸を拾い上げた感覚だった。
それをじっと見ていた変なのが急にギャギャギャと笑いだし、すたすたと警戒も無しに近付いてきた。
近付いてきたことでよりはっきりと確認できる緑色の変なのは小さかった、身長が私の腹くらいまでしかないんじゃなかろうか。
子供か? それに臭い、獣臭というのだろうか風下だったのか一気に匂ってきた。
しかし人を外見で判断してはいけないと思っているので声をかけてみる。
「すみません、遭難したみたいなのですがここがどこかわかりますか? 事故を起こしたので警察を呼びたいのですが」
緑色の小さいのはこちらの呼び掛けには答えずギャギャギャと笑いながら、さらにすたすた近付いてくるので焦りながらも再度呼びかける。
「ちょっ、申し訳ないがそこで止まってもらえますか」
止まることもなく、呼び掛けに答えることもなく、ギャギャギャと笑い続けながら近付いて来るのが気味悪くて後退りしながら三度目の声かけを行う。
「待ってくれ一旦止まってくれ、あんた誰だ。ここでなにしてる」
武器の構えなど全然知らないが、緑色の小さいのが止まらないので拾った枝を前に突き出す。
すると止まったので枝を下げようとしたら両手を振り上げ急に飛びかかってくる緑色の小さいの。小さく痩せた身体からは想像できない、かなりの身長差がある私を飛び越えようかという跳躍を見せて突っ込んでくる。
突然の跳躍にびっくりして下げようとした枝で身を守ろうと枝を持ち上げると、私の想像以上の速さと軽さで枝が振り上げられて緑色の小さい変なのに当たってしまう。
「悪い! 当てるつもっ!?」
咄嗟に枝を振り上げてしまい殴ってしまったので、当てるつもりはなかったと謝ろうと枝を下げる。
そこには腹部が消失し胸から上、腰から下を残した緑色の小さいのが少し離れたところに転がっていた。
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