おじさん混乱する
突然の強烈な光に目がなにも映さなくなりとっさにブレーキを全力で踏みこむが、その前に浮遊感と人生で初めてのとても強い物理的衝撃を感じ轟音を聴いた。
なにが起きた!? 事故った!? 対向車はいなかったはずだ。なんかぶつかったか!? 車のライトにはいつもの道路しか見えなかった。まさか人をひいた? 助けないと! 救急車! 携帯はどこだ!?
あの強烈な金色の光はなんだったんだ? どこかのライトが飛んできたのか? 目が眩んで視界は真っ白だ。
ブレーキを踏んだが直前に浮遊感を感じた。人生で一番の物理的衝撃も感じた。衝撃は前方から二回と真下から一回の三回感じた気がする。エアバッグの衝撃かな。エアバッグってかなり勢いよく出てくるんだな。
痛みはないがこれが事故直後は興奮して痛みを感じないということかな? でもなんか身体が動かないような気もする。
自分で混乱していることがわかっているのに思考がまとまらない、というよりは思考が濁流のように流れてくるようだ。
落ち着かない、人がいるなら早く助けないと、真っ白な視界となんか動かない身体と濁流のように流れてくる思考で時間感覚が全然わからない。
どれくらい時間が経ったかわからない。一分も経っていない? 一時間以上も経ったか? 時間感覚がわからないが、エアバッグがしぼんだのがわかるからまさか数秒?
光で眩んだ目が視界をぼんやりと取り戻す。
目の前には無事だったフロントガラスいっぱいに映る茶色。意味がわからない。
幸い車のフレームが歪んで脱出できなくなることもなく、動くようになった身体を必死に動かして運転席のドアを開け愛車から這い出る。
目の前にはデカイ木。
やや呆然とするも人を轢いたかもしれない! と思い周りを見回すが、倒れている人はおろか人工物がなにもない。デカイ木に囲まれた森に、私と車体前方の潰れた愛車が佇んでいるだけだった。
「はぁぁぁ!? ゲホッ!」
人生で初めての絶叫だった。喉が痛い。おじさんの喉はデリケートなんだぞ。でも、喉の痛みで少し冷静になった、まだまだ自覚できるくらいに混乱しているが。
事故の混乱も落ち着いたところで、追撃のように環境で混乱させないでほしい。
改めて辺りを見回す。緩やかな起伏の大地に苔が生え、デカイ落ち葉や折れたのであろう細い枝や倒木かと思うような、ぶっとい枝が落ちており見たことのない植物が生えている。
さらに周りにはデカイ木が、視界から見えなくなるまで「ここはワシらの縄張りじゃ」と主張するように存在感を放っている。
いやそんなんどうでもいい、ここどこ?
地元には山も川もあり海にも面しているが、こんなデカイ木が乱立している場所なんて見たことも聞いたこともない。
田舎ではあるが自宅から会社までの通勤路は、民家もありしっかりと道路は舗装されて街灯や電線がありコンビニだってある、人工物が視界に入らないなんてことはない。こんな森林があるなんて記憶にもない。
事故ったと思ったら森の中でした!
「なんでだよ!?」
本当に意味がわからない。
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