第10話 豹変
(――――眠れない)
元気よく瞬きをしながら、天井を見つめるキシ。
真夜中になっても、キシは全く寝られる気がしなかった。
それもそのはず。
何故なら彼の隣には、
「すぅ……」
心地良さそうに寝ているレイがいるからだ。
女の子と一緒のベットで寝ることなど、キシにとって幼い時か2次元の話でしかありえないと思っていたからだ。
しかし、今の状況はどうだろうか。
もうすでにキシの腕にレイの腕があたり、完全に密着している。
そんな状況に男というものは心臓の鼓動が速くなってしまうことなど普通のこと。
当然、キシも例外ではなかった。
(レイはまだ子供! まだ小学生くらいの女の子!)
キシは心の中でそう言い聞かせるものの、効果は全く現れず……。
彼の目は充血しつつあった。
「――――! レ、レイ?」
すると突然、夢の中にいたはずのレイが突然上半身を起こした。
あれだけ寝息を立てていた彼女が、突然起き出したのに驚いた。
「レイどうした――――!?」
起きているのか寝ぼけているのか分からない。
とりあえずキシは声をかけた――――その瞬間だった。
キシは体中に電気が走ったような感覚に陥った。
それだけではない。
「レ、レイ……?」
レイから今まで感じたことのないような魔力。
そして、今まで味わったことのない恐怖感がキシをさらに襲う。
「はっ……! はっ………!」
キシの呼吸が小刻みになっていく。
恐怖感が勝ち、息をするのも苦しくなっていく。
「――――」
レイの顔がゆっくりとキシの方へ向いていく。
目を大きく見開いて、目を細くなっていた。
何かに取り憑かれたような表情をして、最後はニヤッと怪しげな笑顔を見せた。
「うわぁぁ!!はぁっ、はぁっ……!」
キシの体は怯えたネズミのように動かない。
真夜中で周りも静かなため、余計に恐ろしく感じた。
キシの体から勝手に汗が滲み出てくる。
「――――」
レイは無言のまま、キシの顔に自分の顔を近づけた。
本当はここから逃げたいのに、キシは全く体が動かない。
自分の目の前にあるレイの顔が恐ろしくて、ただ見ることしかできないのだ。
レイはキシの顔をしばらく見つめた。
そして、さらに怪しげな笑顔を見せると、
「アハッ!」
不気味な笑い声をして、そのまま気を失ったように倒れてしまった。
彼女の体はキシの手元に倒れた。
「はあ、はあ……。な、何だったんだ……?」
この後キシはしばらくの間、硬直したまま動けなくなってしまった。
そして、彼が気づいた時には太陽が昇り始めていた。
◇◇◇
翌朝、眩しい日差しが部屋の中を照らす。
キシは結局眠ることが出来なかった。
別人のように変わってしまったレイのあの様子を、キシは頭の中で永遠と流れていた。
レイには何かがある。
しかし、分からないことだらけだった。
何とか出来ないかと考えたが、すぐに解決なんて出来るはずもなく……。
おかげで、キシの目の下には大きな隈ができていた。
「ん――――ふぁぁ……おはようキシ。ん〜? なんか大きな隈出てるけど大丈夫?」
「おはようレイ……。大丈夫、じゃない気がする……」
「――――もしかして夜中わたしに何かあった?」
「えっ?いや、えっと……」
「やっぱりあったんだ……。ごめんなさい、またキシに迷惑かけちゃった……」
「いや、それは何ともないから大丈夫なんだけど……」
「うん……ごめんね、私が一緒に寝たいって言ったのにこんな事になってしまって……」
「――――もしかしてあれって無意識だったのか?」
「うん……」
レイの表情が曇った。
そして、ベットを見つめるように俯いた。
「これ、誰にも言ってないけど――――絶対に誰にも言わないって約束してくれる?」
「あ、ああ。約束する」
レイの言葉に重みを感じた。
キシは慌てて布団から出ると、眠たい目を擦って目を覚ます。
そして、行儀の良い正座をしてレイの話を真剣に聞いた。
「わたし実は……記憶がないの」
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