【REMAKE版】ぶらついてて出会った少女の手伝い＆冒険者をする

第二章 〜手伝い、そして新たな出会い〜

第6話 少女の趣味

　夜になった。

キシは約束通り、ビダヤの街の広場に到着した。

レイはもうすでに広場の中にある噴水のところで待っていた。

「ごめん、待たせたか？」

「ううん、さっき来たばかりだから大丈夫。それじゃあ行こう。私についてきて」

　キシはレイについていくと、街の外れにある細い道に入り、坂を上っていく。

進むに連れて周りには建物がどんどん少なくなっていき、逆にどんどん木々が増えていき――――雑木林に入った。

「な、なあレイ……？ 、ま、まだかかるのか？」

「もうちょっとで着くよ。頑張って！」

　1キロメートルくらいの歩きだけならまだいいが、道が石敷から土に変わり、状態も悪くなっていく。

体力に自信があったはずのキシの足は少しずつ悲鳴をあげ始めていた。

　しかし、レイは相当慣れているせいなのか、それともまだ無尽蔵な体力を持つ子供だからなのか疲れているようには見えない。

呼吸もあまり乱れていないようだった。

「着いたよ！ ここがわたしがいつも来ている場所、霊園です！ って、キシ大丈夫？随分疲れてるみたいだけど……」

「こんだけ歩いたの、久し振りだし……途中から、ぬかるんでたから……思ったより、体力持っていかれた……。ぜえ、ぜえ……」

「もう、男の子なのに情けない」

「うぐっ……」

　歩いて約１時間、しばらく雑木林の中にある道を歩き続け……遂に目的地に着いた２人。

キシは体力が限界に近づいていた。

膝に手を置き、肩を大きく上下させる。

　しかし、『男の子なのに情けない』という言葉は、疲れ切っているキシの心に突き刺さり、精神的にもやられてしまった。

「まあとりあえず、まずは見てもらわないといけないね。キシは近くで見ててね」

「わかった。」

　レイは大きく深呼吸する。

「よし！」

　そう言って頷くと霊園のほうを向き、手をその場所に向ける。

そして手で何かを形作ると、霊園の中央に魔法陣が現れた。

（なるほど、あの魔法陣で彷徨う霊たちを帰してあげるのか）

　　キシがそう思っていると、レイの周りが段々と明るくなっていき――――魔法陣も徐々に大きくなっていく。

そしてレイの髪と服がなびき始めたと思えば、さらに魔法陣は力を増して大きくなっていく。

「――――えっ……ちょっ、はぁ！？」

　どんどん範囲が広がっていく魔法陣にキシは固まってしまった。

レイが形成した魔法陣は、墓場の全体をすべて覆ってしまったのだ。

この霊園も決して小さなところではない。

おそらく、はるか昔の先祖たちや他の国の人たちのもあるため、それなり広い霊園だった。

　しかも、そんな広いところに魔法陣で覆うことができるほどの魔力を持っているとするならば、この世界でも片手で数えられるほどの、いや、それ以上の魔力量を彼女は持っているということになる。

　さらに、この紫髪の少女は深呼吸をしたあと、なんと無詠唱で霊園を魔法陣で覆ってしまった。

本来魔法を使うのなら詠唱と言って、その魔法を使うための呪文を唱えないと発動しないはずだ。

規格外すぎる彼女に、キシは放心状態になってしまった。

◇◇◇

　５分くらい経っただろうか。

儀式が終わったレイは形作っていた指を解いた。

それと同時に、魔法陣も一瞬にして消えてしまった。

「ふぅ……これで終わりっと」

　レイはそう言うと地面に倒れ込み、大の字になる。

この儀式はかなりの魔力を消費するため、体力が奪われ、かなりの汗をかいていた。

息も相当乱れている。

「お、お疲れ様……」

「はあ、はあ……あ、ありがとう。ってなんでそんなに顔が青ざめているの？」

「そ、そりゃあんなもん見せられたら……青ざめちゃうに決まってるな」

「そ、そう？」

「レイ、あんな馬鹿でかい魔法陣街の人たちに見せたら、たぶん俺と同じ反応すると思うぞ？」

「そうかなぁ？」

「いや、自覚なしかよ……」

　レイは首を傾げているが、その反応がもはやおかしい。

彼女は自分が規格外すぎる魔力量を持つ者だと自覚がないのだ。。

「まあ、とにかくキシに手伝ってもらいたいのはこれ」

「こ、これをやれって言うのか！？」

「うん」

「いやいや、こんなもん見せられたらさすがに……」

「大丈夫。それに、キシって相当魔力がないのは知ってるし……そこらへんはちゃんと考えてるよ」

「いや、だってあんなもん見せられ――――なあ、今なんて言った？」

「キシって相当魔力がないよね？」

「――――なんで知ってんの？」

「そのくらい分かるよ。だって、キシの体内に流れてる魔力がほとんどないって見たら分かるもん」

「は、はは……。そうかそうかぁ〜」

顔が引きずるキシ。　

キシは相当優秀な子の手伝いをすることになってしまったようだ。