第9話
自分の見た夢で、誰かが傷つくことのないように。そうしているから、そうなる。そういう夢。に、している。自分が、他者の感情を貪ってきた、その反動で。誰かを助けることに固執している。
夢を見る。そして、夢を変える。現実的な物理法則が通じなくてむずかしいこともあれば、手をひとつ伸ばすだけで解決してしまうこともあった。
彼はいない。
今日も。
彼の夢とわたしの夢は、繋がっていた。お互いに、もう夢での接点もない。というより、お互いの現実は、たぶん繋がっていない。別な場所、わたしの知らないどこかにいる、彼。もうわたしを思い出すこともない。
彼は、いつかわたしを殺しに来るのだろうか。彼に殺されるために、もういちど彼を探したけど。見つからなかった。
悪夢。そう。この現実そのものが、悪夢を見ているようだった。気分が沈む。彼の感情を食って、彼に恋するわたしが生まれて。彼は、わたしとの夢を忘れた。もうここにいない。
悪夢は悪夢。現実とは関係がない。彼の口癖だった。
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