第5話
彼の語り口は訥々としていて。それだけに、現実味をいやでも感じてしまった。彼の言っていることは。たぶん本当。
「感情を食われたんだ。だから、起きることはない。夢の中にいると、たぶん夢も食いに来る。そこで心中する。俺の夢のなかに閉じ込めるんだよ」
言ってることは、めちゃくちゃだけど。たぶん本当。それがちょっと、かなしかった。
「それでいいの?」
「いいもなにも、任務だし」
なんの任務よ。
「任務をやめたら、起きられるの?」
彼。ため息。息がかかるほど近いけど。彼の息は感じなかった。
「正直、もう、いいかなと思っている」
なにがよ。
「ここで終わったほうが、綺麗な気がしている」
「なにそれ」
「わからなくていいよ」
「ねぇ」
「夢の中で会ってるとき。たのしかった。ありがとう」
「ごめんなさい」
わたしなの。わたしが。
あなたの感情を食べたから。
わたしが感情を獲得したから、あなたは。
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