激臭

今年の春、約三週間の抱卵を終えて、オカメさんは通常の生活に戻りました。


抱卵期間は、ものすごく気が荒くなっていたオカメさんですが、期間を終えると、憑き物が落ちたかのように穏やかになります。

普段のおっとりよりも、さらにおっとり。

普段なら指を出したら威嚇する家族に対しても、ぼんやりして乗ってしまうくらいです。




さて、そんなオカメさんですが、三週間ひたすらに卵を温める生活を続けていたために、羽根はなんとなくボソッとして見えます。

卵に栄養をまるっと持っていかれた上に、頻繁に行っているはずの羽繕いを殆どしていないからでしょうか。


オカメさん、とにかく体力を戻す為に、ごはんをもりっと食べて、ひたすら産後ケアに集中です。

遊びは少なく、羽繕いに普段よりも時間をかけます。

あっちをゴジゴジ、こっちをゴジゴジ。

身体中、痒くて堪らないという感じにも見えます。



そこで、水浴び。


三週間以上、一度も水浴びをしなかったオカメさん。

インコ臭も、とても濃くて籠もった匂いです。

そんなオカメさんが、嬉々として念入りに水浴びを行った結果…。


……前話をお読み頂いた方にはお分かりでしょうか?


水浴びを終えて、濡れそぼったオカメさんを嗅いだ瞬間。


「くっっさぁっ!!」


思わず大声で言って、顔を背けてしまいました。

「臭くても可愛い♡」とか言えるレベルではありません。

激臭です。

非常に臭い。

これはひどい。


……あ、ごめんなさい、オカメさん。

傷付いちゃった?


オカメさんは全く気にした様子はなく、狂ったように羽繕いを始めています。

それどころか、おバカ飼い主の存在も、今は目に入らない様子。



あのぅ、オカメさん、三週間我慢したので、もう少しかまってもらえませんかね?


羽繕いを邪魔するとめちゃくちゃ怒られたので、涙を飲んで、ぐぐっと耐えたおバカ飼い主でありました。


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