運命

春。

それは恋の季節。


……何を言っているのかって?

春は鳥にとって、恋の季節なのです。

つまり、発情期。

秋もそうですが、オカメさんは春にその兆候が顕著に表れるようです。


『失恋』の回に書きましたが、オカメさんは以前、ケージに吊るすタイプのおもちゃに恋をしました。

おバカ飼い主に敢え無く引き裂かれた恋でしたが、今年の春、オカメさんは再び運命の相手に出会ってしまったのです。




それは、四月のある日のこと。


ウピ ウピ……


ん? 今のは…?


ウピピピピ……


わあ!

オカメさんのラブコール!?

今度は一体、誰に恋してしまったと言うのでしょうか。

急いで、扉の影からこっそり覗きます。

見られているとやめてしまうからです。

誰に恋しているのか、確認せねばなりません。


ケージの中のオカメさん、以前おもちゃを吊るしていた角に向かって、恋の歌を歌っています。

何もない空間に向かってです。


……え。妄想彼氏なの?


そ、それは撤去しようがないではありませんか!

仕方なく、ケージを開けて放鳥します。

ちょっと気分を変えて頂かないと。



しばらく好きな所で遊んでいたオカメさん。

私の肩に飛んできました。

そのまま家事を続けていると…。


ウピピピピ ウピウピ……


は? 誰にラブコールを…!?

肩を見ると、キラキラしたお目々で私を見ながら、恋の歌を歌っているではありませんか。


えええっっ!? 私なの!?




その後は、もうどうしょうもなく。

私の肩でも膝でもお腹の上でも、度々求愛行動をしていたオカメさん。

完全に発情モードに移行して、卵を産んでしまいました。


飼い主が運命の相手(疑似)じゃ、引き離しようがないじゃないですかぁ!


こうして、この春も抱卵期に突入しちゃったのでした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る