第32話
この黒白院女子高等学校は多くの資産家の令嬢が通う学校だ。
一般的に富裕層の家庭の子が大半を占めているが一部例外で通ってる者もいる。
私は現在、黒白院の中等部に在籍している。
この学校は初等部からあるが私は中等部からの外部生だ。
こういう閉鎖的な世界は保守的な者が多い。
私も入りたての頃はすぐには受け入れてもらえなかったが橘家の娘だとわかると目の色を変えて交流を持ちかけてくる者ばかりだった。
ここまで分かりやすい手のひら返しはそうないでしょうね。
令嬢との学校生活は常に裏の読み合いだ。
資産家や大手企業の娘に旧華族の血筋をもつ名家の娘もいる。
この黒白院はまさに
正直、一度しかない学校生活。普通の公立の学校に行ってみたかった。
私はそんな考えながら生徒会室で資料整理をしていた。
1人で黙々と作業していると生徒会室の扉が開く。
「こんなところにいたんですか!?会長」
「どうしたの?平沢さん」
「探したんですよ!今日は部活の活動チェックの日ではないですか」
「あー、そういえばそうだったわね。うっかりしていたわ」
この黒白院では月に一度、生徒会メンバーが各部活がしっかりと活動をしているか確認する風習がある。
黒白院の部活はどれもハイレベルだからこんなことする必要なんてないと思うけどルールなので仕方がない。
私は一度書類チェックを中断して平沢さんと一緒に校内で活動している部活のチェックに向かった。
〜〜〜〜
「野球部もバスケ部も問題ないですね。いつも通り熱心に練習に取り組んでますね」
「野球部とバスケ部は2連覇かかっているからね。ちゃんと練習して当然よ」
「次はどの部活をチェックしますか?ここからだとサッカー部が近いですが…」
「…それ私も行かないとダメなの?」
ほんの少し気まずいので私はダメ元でそう問いかける。
「ダメですよ!生徒会業務に公私混同は認めません」
「…分かったわよ」
実は私はサッカー部に所属している。
右サイドバックのレギュラーでちなみにキャプテンだ。
生徒会長になってからは部活に割く時間が減ってしまってほとんど副キャプテンに任せているのは申し訳ないけど…。
私と平沢さんはサッカー部のグラウンドに向かう。
グラウンドではサッカー部のみんな熱心に練習をしていた。
私が来たのに気づいたのか副キャプテンが号令を出す。
「よし!休憩だ!各自、水分補給をしてくれ」
副キャプテンである根山さんがこちらの方へと来る。
「生徒会の業務ですか?橘キャプテン」
綺麗なショートヘアが特徴でボーイッシュなタイプの根山さんは人から信頼されるタイプだ。
私からしても彼女が副キャプテンなのは非常に助かる。
「うん。一応そんな感じよ。…あと何回も言ってるけど橘キャプテンはやめてちょうだい。恥ずかしいわ」
「え?でも橘さんは私たちのキャプテンじゃないですか」
「…い、いやそうだけど。せめて私も部活をしている時に呼んでよ。部活を休んで生徒会業務で来ているし…」
「はは、別に気にしてませんよ。生徒会をましてや会長をしながらサッカー部のキャプテンもしてくれているんですから」
「みつこ!そろそろ休憩終わりにしてもいいんじゃないの?」
私たちが話しているとグラウンドの方から根山さんに話しかける声がした。
あまり長居するのも良くないし、私ももう行くことにした。
「邪魔をしてしまったわね。練習頑張ってね。根山さん」
「はい!」
私と平沢さんはグラウンドを離れる。
数歩歩いた先で私はグラウンドの方を振り返る。
根山さんと他の同級生のサッカー部員と楽しそうに話しているのが目に入った。
「たかこ!!サボってないで練習再開するぞ」
「みつこはストイックすぎるのよ。もう少し楽にいこうよ」
そんな会話が耳に入る。
根山さん、他の部員にはあんな感じでフレンドリーに話しかけてるのね。
他の人とは下の名前で呼び合ってるし。
私と話す時は同級生なのにいつも敬語だし、苗字にさん付けだし。まぁ、これは私もそうだけど…。
せっかく同じ学校に通っているんだからもう少しみんなと仲良くなりたいんだけどなぁ。
私はそんな淡い願いを抱きながらグラウンドを眺めるのであった。
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