第31話

 この世の中は不平等だ。人は生まれた時に誤差はあれど大まかな人生は決まっている。

裕福な家庭に生まれたものはその恩恵を大いに受けて育つ。幼少期から質の高い教育を受けたものは高い学力を手にして高学歴となり大手企業へと就職する。親に人脈などもあったらコネなども使える。

 対して貧困な家庭に生まれたものはどうだろうか。

まともな教育を受けることもできず高校や大学にも進学できず少ない選択肢の中で生きていかねばならない。

 大学に進学できたとしても経済的な問題でバイトに明け暮れた生活が余儀なくされ、他の人が学んだり、旅行したり、遊んだりしてる間もそれを我慢しなければならない。


 恵まれなかった者と恵まれた者。

アバウトに分けるならこの世にはこの2種類の人間で分けることができるだろう。

そしてこの私、橘季月に当てはめるのなら間違いなく後者になるだろう。



 政界や財界に名を連ねているものは少なからず歴史のある家柄の者が多いだろう。

その中でも特に古くから権力を握っていた者、旧家族をルーツに持っている名家がある。それは巷では4大名家と言われている。

 私はその4大名家の1つ、橘家の長女として生を受けた。

歴史ある名家に生まれた者の宿命だった。

勉学、運動ができるのは当然として武芸や音楽など幅広いジャンルでも優秀な成績を取ることが義務付けられていた。

そして人の上に立つことも求められた。

橘家の長女である以上、失敗など許されなかった。

窮屈ではあったが幼少期の頃から教えられてきたことだったからそれが当たり前であり、なんの疑いもなかった。

 幸か不幸か私には類い稀な才能があった。

橘家の人からしても私は神童に値する才能があった。

おそらく橘家の歴代の中でも上位に入るくらい厳しいノルマを課されていただろう。

しかし私はそれら全てをクリアしていった。

だからこそ私は橘家にとって変えが効かないくらいの立場を築いていった。


 橘家の人たちからしたら私は最高傑作だったかもしれない。

ただそんな橘家の人間たちにも計算できないことがあった。

それは私が年相応に恋愛に興味を示したことであった。

いや…普通の女の子のように男の子が恋愛対象だったらこんなに物事は拗れなかっただろう。


〜〜〜〜


 2015年4月 


「そろそろ生徒会の任期が終わりますね」

「そうね。あとは新生徒会長が決まって引き継ぎをしたら私たちはようやくお役御免ね」


 4月に入り、私たちは中学3年生に進級した。

この黒白院女子高等学校附属中の生活も残り1年となった。

まぁ、付属中だから内部進学で高校もまたほぼ同じメンバーで学校生活を送ることになるのだが。


 当たり前のようなこの日常、それが一瞬にして崩れ去ってしまう。

この時の私はそれを予期することなどできなかった。

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