第18話
結局美波さんと一緒にお風呂に入ることになってしまった。
「なんでこうなるのよ」
「もぉー、橘さん往生際が悪いわよ。いいじゃない。偶然にも時間が重なったのだから」
「本当に最悪よ」
私たちは脱衣室に向かった。
脱衣室に入るとそれなりに人がいた。
「まあまあ混んでるわね」
「そうね」
おそらく同じアパートの住人もこの中にいるのだろう。
主婦や小さい子供などがいる。
「さぁ!橘さん!早く服を脱いでお風呂に入りましょう!」
美波さんは普段よりテンションが上がっている。
「何よ。急かさないでよ」
美波さんに催促されたので私は少しペースを上げて服を脱ごうとした。
……ん?
ちょっと待ってよ!!何美波さんに乗せられているのよ!
「待って!私美波さんと一緒に入るなんて一言も————」
そう言いながら美波さんの方に目を向けると彼女は上着を脱いでおり上半身は下着一枚になっていた。
「どうしたの?橘さん」
「え…いや…」
私は美波さんの体を見て驚愕してしまう。
誰も目を惹きつけるほどの美しい体……い、いやそうじゃない。
彼女の体は尋常ではないほど鍛えられていた。当たり前だが無駄な脂肪なんて一切なかった。服を着ていると分からないけど引き締まっている体つきだった。
「美波さん、あなた中学の時は何か運動をしていたの?」
「特にしてないわ。あ…でもよく助っ人を頼まれたからいろんな部活には顔を出していたわね」
「1つの部活には籍を置かなかったのね?」
「ええ。それはしてないわね」
一度授業で見せたあの身体能力はおそらく天性の物だと思う。
けどその体つきはそれだけでは説明できない。
私はもう2、3個くらい質問をしようと思ったがやめた。
どうせ美波さんのことだし納得できる返答なんてしてくれないわ。
それに彼女のことを真剣に考えるのなんて馬鹿らしいわ。そこで私は思考を止めるのであった。
浴場に入り、まずは身体を洗うためシャワーのところに向かう。
バスチェアに座り、シャワーを浴びる。
「ちょっと!なんで隣に座るのよ」
「いいじゃない。別に」
「1つ空けて座りなさいよ!知り合いだと思われるでしょ!」
「そんなことよりそっちのシャンプー取ってくれないかしら。こっちのやつもう中身がないみたい」
「あんた!無視しないでよ!!」
もういいわ!こんなやつにかまってないで早く身体を洗って湯船に入って帰りましょう。
そう思い髪の毛を洗いながらふと自然に美波さんの方に視線を向けてしまった。
美波さんも髪の毛を洗っていた。
彼女の場合私よりも髪が長いので時間がかかりそうだ。
なんとなく見た先で彼女の胸元が見えた。
小さい…。平ね。
私は自分の胸元を見る。
うん!これは圧勝ね。
私は美波さんより早く身体を洗い終えたので先に湯船に入ることにした。
湯船に浸かると一気に身体がリラックスする。
アパートの狭いお風呂と違いここだと思いっきり足を伸ばせるしいいわね。
ああ、いいわね。なんだか疲れが取れる感じがする。
少し姿勢を変えると隣にいた人と肩がぶつかってしまった。
あまりにも気を抜きすぎてしまったせいで私は横の人に気づかなかった。
「あ…すいません」
私が謝るとその人も謝罪をする。
「こちらこそ不注意でした。ごめんなさい」
私はその声に聞き覚えがあった。
あたりは湯気でよく周りが見えない。
だからその人の顔がすぐに視認できなかった。しかしこの声は今日教室で聞いた声だった。
湯気がはれその人の顔が見れた。
「え?」
「あら。奇遇ね。橘さんじゃない」
「…野坂先生」
美波さんに続きまさか野坂先生にまで出会すなんて…。
一体なんなのよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます