第17話
18時30分
夕食をすませ一息ついていた。
今日は最悪だったわね。
あんな不本意な形で授業で目立ってしまうなんて…。
まったく美波さんと出会ってから散々なことばっかりね。
私は気分をリフレッシュするためにいつもより早いがお風呂に入ることにする。
浴槽にお湯が溜まったのを確認する。
衣服を脱いで浴室に入る。
1日の活動によって汗などをかいたのでまずは身体の汚れを流すことにする。
桶で浴槽のお湯をすくって肩から流そうとする。
私はこの瞬間が好きだ。
お風呂に入る前の初めの流しが気分を落ち着かせてくれるからだ。
桶を傾けることで肩からお湯が流れていく。
その瞬間予想だにしない感覚が起こる。
「つ…冷っっったァい!!!!」
私はすぐに桶から手を離した。
同時に冷水を浴びたことにより寒気に襲われる。
ちょっと!?一体何なのよ!
私は浴槽に手を入れて温度を確認する。
「冷たいわね」
それはお風呂の適性温度にはほど遠かった。
もしかしてガスを付けずに入れたのかしら?
いや私がそんなミスするはずないわ。
それにこれまでと同じやり方でやったはずよ。
ひとまず浴室から出てバスタオルで身体を拭き、衣服を着て部屋の方に行く。
まったく身体が冷えてしまったわ。
ホットココアを作り、それを飲んで身体を温める。ココアを飲みながら机に置いていたチラシ類を目に通す。
スーパーのチラシや飲食店のチラシなどがある。その中に一枚アパートからのガス点検のお知らせが入っていた。
あっ……。
どうやら今日一日はガスが使えなかったようだ。
夕食も今日は作り置きを用意していてガスを使わなかったから気づかなかったわ。
最悪だわ…。
これじゃあ今日はお風呂に入れない。
それは絶対にいや!!
明日も学校あるし!
てか風呂は毎日入るものよ。
私は小さなため息をつく。
家のお風呂に入らないなら仕方ないわね。
スマホで近くに銭湯がないか調べる。
幸いアパートの近くにいい感じの銭湯があった。
「決まりね」
銭湯に行く準備を済ませ、足早に向かうのであった。
〜〜〜〜
目的地の銭湯に到着する。
よくある普通の銭湯だ。
正直私はこういう公衆浴場は好きではない。お風呂は1日の最後の癒しとして1人で入るのが好きだからだ。
それにいろんな人がいる中で裸体を晒すのは嫌だった。これに関しては完全に自意識過剰だということは自分でも分かってる。
それと…あともう一つだけあるけど…これだけは絶対に人に知られてはいけない理由ね。
家の風呂が使えないなら仕方がない。
背に腹はかえられないわね。
意を決して銭湯の受付に入ろうとした時後ろから聞き慣れた声がした。
「思ってたより悪くない外観ね」
声から滲み出るお淑やかで優しい口調。
ずっと聞いていても嫌にならない。それどころか気分を落ち着かせることのできる声色(私は例外)。
嘘!?まさか…。
「あら。その後ろ姿は橘さんよね?」
うわぁ…。
声の主は美波さんだった。
声をかけられたが気付いてないふりをしてそのまま入り口に向かう。
「あら?橘さん」
しかし美波さんが素早く動き私の前に立ち塞がった。
「橘さん、人が悪いわね。私の声聞こえていたのに無視したわよね?」
「別に無視なんてしてないわよ。返事をするのがめんどくさかっただけよ」
「うーん。それを無視と言うのよね」
「てかなんであんたがここにいるの?」
美波さんに会ったことで私は不機嫌になる。そしてそれを隠さずあえてわかりやすく態度に出す。
「アパートのガス点検でお風呂に入れなかったから来たのよ。橘さんもそうでしょ?」
「そうだけど…、だからってなんであんたと時間が被るのよ!もしかして私のことつけて来たんでしょ!」
「それは橘さんの被害妄想よ」
会話の途中で美波さんはこう提案してくる。
「せっかくここで会えたし今から一緒に銭湯に入りましょう!」
「絶対に嫌よ!!!」
私の声が銭湯の入り口前に響き渡るのであった。
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