第11話

 カフェを後にして、私たちは辺りを適当にまわりながら時間をつぶした。

その後に電車に乗り、元の駅に戻る。

駅に着いて、私は時刻を確認する。

16時だった。


 少し早いかもしれないけどある程度やることもやったし解散にしてもいいと思った。


「もう解散でいいかしら?」

「え?まだ早いわよ」


 美波さんはまだ終わるつもりではない様子だった。


 めんどくさいわね。カフェにも行ってその後も適当に話しながらいろいろまわったんだからもういいでしょ。


 一応何か他にすることはないか考えているとあることを思い出した。

今日は私が愛読している小説の最新刊の発売日だった。

小説を買って帰らなくてはならない。


「仕方ないわね。だったら私の買い物に付き合ってもらうわよ。」

「橘さん、どこか行きたいところあるの?」

「買いたい本があるのよ。悪いけど本屋に付き合ってもらうわ。」

「そういうことなら分かったわ」


 私たちは本屋に向かうことになった。

しかし駅からでは私がいつも利用している本屋とは反対側にある。

スマホでここから1番近い本屋を検索する。

検索欄の1番上に出てきた本屋は思ってたより近くにあった。


 この場所って…。その本屋は超大型モールの中にある本屋だった。

このモールは2年前に起きた事件の場所だ。

モールはA棟、B棟の2つで構成されていて、事件により大きな損壊を出したのはB棟の方だった。だからB棟はそれからずっと復旧の名目で閉鎖されていたが今年から再開したと聞いていた。


 私はまだこのモールに行ったことがなかったので少し気になっていた。

ちょうど良い機会だし行ってみようかしら。


「美波さん、この付近だとここが良いんだけどいいかしら?」


 私はそう言って、スマホの画面を美波さんに見せる。


 まぁ、美波さんの事だし

どうせ私の提案にすぐにうなづいてくれるはずね。

こいつ、やたら私に絡んでくるし今日だってこの私を茶化してきたりしたんだから。


 すぐに了承してくれると思ったが美波さんはスマホの画面を見てから一瞬、表情が消える。


「………」

「え?ちょっと美波さん?」


 私が声を掛けると美波さんはまたいつもの表情戻る。


「え?」

「いきなり黙りこまないでよ。それで…どうするの?行きたくないなら行かなくていいわよ。」

「いえ、問題ないわ。一緒に行きましょう!」



〜〜〜〜


 モールに着き、私たちは本屋に向かう。

本屋があるのはA棟だったので私たちはA棟の入り口から入った。

モールの広さは予想よりも大きかった。

私はモール内に設置されている案内マップを確認する。


「えーと、本屋は2階ね」


 エスカレーターを使い2階に行き、本屋にたどり着く。


「じゃあ、私は小説コーナー見てくるから美波さんも適当に好きなの見といてよ」


 私はそう言って足早にお目当ての本を探しに行った。


 小説コーナーの最新刊が置かれてる場所を見つける。

いろんな本が山積みで置かれている。

私は買う本を手に取り、会計をするためにレジのところまで向かった。

その途中で美波さんの姿を見つけた。


 何かの本をやたら真剣に読んでいた。

私は近くまで行って、美波さんに話しかける。


「何をそんなにマジマジと読んでるの?」


 私がそう呼びかけると美波さんはすぐに私に視線を移す。


「え!?…どうしたの?橘さん」


 珍しく美波さんが取り乱している様子だった。


「い、いや…その本そんなに面白いの?」

「うーん、普通かな。なんとなく気になったから手に取ってみた感じよ。」

「へぇ」

「橘さんは探していた本見つかったの?」

「ええ」

「なら私は本屋の外で待ってるわね」


 そう言って美波さんは本屋から出ていく。


 美波さんが本屋から出ていくのを確認して、彼女が読んでいた本を手に取った。

本のタイトルは『あの日の真相』だった。


 いまいち関心を持てなかったのでタイトルをみただけで本を開かずに元の場所に戻す。


 私はそのままレジに向かい、会計を済ませて本屋を出るのであった。

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