第8話
授業が終わり放課後になった。
私は珍しくも美波さんのところに向かった。
「放課後になったわよ。さぁ!はやく私に命令しなさいよ」
「命令される側がこんなに積極的なのは珍しいわね…」
美波さんは少し引き気味にそう言った。
「橘さんはこの後用事あるかしら?」
「別にないけど」
「じゃあ、一緒に帰りましょう!」
美波さんは人差し指を立てながらそう提案してくる。
うわっ
嫌すぎる。今日はテストの返却があったからいつもより話す機会が多かったけど本来ならこんなに話したくもない。
「露骨に嫌なそうな顔をするわね」
「今日一緒に帰るのを命令にするならいいわよ」
「うーん、さすがにそれはもったいないわね」
こちらとしてはそれぐらいで終わるなら願ったりだけどさすがに簡単すぎるわね。
まぁ、仕方ないわね…。こいつとは同じアパートだし断っても帰宅ルートは一緒ね。
「はぁ、分かったわよ。一緒に帰るわよ」
私はため息混じりにそう言った。
校舎を出て、帰宅途中に美波さんから他愛もない会話をふられる。
私は適当に相槌をうちながら続けた。
話してる間に私は違うことを考えていた。
美波恭華。
こいつ私に一方的に絡んでくるのはウザいけど個人単体でのスペックは相当なものね。
体育レベルではあるけどサッカーで見せたあの身体能力に黒白院で常にトップだった私と同等の学力。
美波さんなら百合ヶ丘ではなくもっと上のレベルの高校にも入れたはずね。
それに高校生でわざわざ県外から来て一人暮らしをするのは珍しい。
もしかしたら美波さんも何か訳アリなのかもしれないわね。
まぁ興味ないけど。
私がそんなことを考えていると美波さんが質問をしてきた。
「橘さんはここらへんだとどこで買い物したりしてるの?」
「そんなの物によるわよ」
「私まだ引っ越してきて間もないからまだ土地勘がないのよね。」
「ふーん。それは大変ね」
私が適当な返答をすると美波さんがいきなり声を上げる。
「そうだわ!!」
「何よ。急に」
「橘さん!今週の土曜日か日曜日に一緒にショッピングに行きましょう!」
それは私が想像しうる中で一番めんどくさいものだった。
「ハァッ!?嫌に決まってるでしょ!!
そんなの!」
私は力強く反対する。
ただでさえ美波さんとは学校で毎日これから会わないといけないというのになんで唯一の憩いの時間である休日まで会わないといけないのよ。
「あら、そんなこと言うのね。それなら仕方ないわね」
そう言いながら美波さんは何か良からぬこと企んでいる様な笑みを浮かべる。
「橘さん。今週の日曜日の1日私と2人で一緒に遊びに行きましょう!テストに勝ったから私の言うこと何でも1つ聞いてくれるのよね?」
「うっ…、卑怯よ!」
「あら、でも勝った方の言うことを聞くのは橘さんから提案してきたわよね?」
万事休すね…。
自分が巻いたタネ。今回だけは仕方がないわね。
「…分かったわ。…けど今回だけだからね!
次は絶対ないから!」
私は強く念を押しながらそう言った。
こうして今週の日曜日に美波さんと出かけることになってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます