第3話 世界に慣れろ (1)

天井が見える


俺は生きてる…のか?

息は…できている、鼓動も聞こえる

死なずに済んだらしい、風景的に…誰かが助けてくれたんだろうか


「まずは家の人を探すべきか待機しているべきか…」

自分が横になっているベットを除いて部屋の中には…サイドテーブルしか無いな…部屋の大きさは六畳くらいあるのに…

愚痴を溢しつつも立ち上が…おっと、フラつくな…


「すみませーん?」

ドアに手を掛け、開けながら声を出す

「誰も居ないのか?」

廊下…だな普通に、飾りっ気はない

階段があるので…降りてみよう


「すいませーん」

今ちょうど留守時だったりするのかな

「お、起きた?」

「うぉお!?」

急に後ろから声を掛けられた!そりゃ驚くよ!


「体は?動くー?」

「な…なんとか?あなたは…助けてくれた人?」

軽い足取りで追い越しながら

「そうなるかなー。酷かったよ~」

と、軽く笑いながら

「キミ。両足は吹き飛んで腹はひき肉、腕は潰れて首も皮一枚、頭蓋は割れてたけど砕けては無くて脳が生きてたから可能だったかなー。いやー治すの大変だったよ?」

治す…その状態から?…いや神が居たから不思議ではないのかもしれないけど…

「どうやって?」

すごいため口になってしまった

「あ、このレベルのは普通無理だから気を付けてね?知り合いに掛け合ってなんとかさ」

「…方法が知りたいな…なんて」


少し間ができる

聞いちゃ駄目だったか?いやそうだ普通に考えろ高等な技術は高額だ俺は払えるものを持っていない…治してもらったそれだけで奴隷のように扱われても文句は言えない…そんな状態なのに技術や情報を聞きだそうだなんて…師の一言は百万両とも言う

「んー…、簡単に言えば全部作った、かな。キミは普通の人よりさらに大変だったよ、なんせ肉に魔力が通ってないんだからさ」

…教えてくれた


にしても肉に魔力…知らないな、そもそもこれまで魔力なんてものを認識したこともない

「だから一般的な式じゃ上手くいかない部分がもろにあったし全体的にも可能性があったから時間かけて式リメイク、専門じゃないのに私まで動かされてさー?」

「なるほど…?」

専門…まあ治療は専門職が居るのが当たり前か、だけど目の前に居るこの女性…おそらくはプロから呼ばれてそれに応えられる人間…か

凄いな…俺とは…


「ん、やっぱりなにも知らなそうだね」

急に立ち止まり、顔を近づけ、真顔で見つめてくる

…詰められてるようで目を背けてしまう

「…ま、基礎的なことなら一通り教えるつもりさ、気にしないでいい。とりあえずご飯にしようか」

そう言い駆けていく


…やっぱり?それに…俺がなにをいうでもなく…教えるつもり…か


一番最初に思い付くのは、神様だ。神様がこの人に事情を話して…洗脳とかもあるのかな?

ともかく、『神様から事情を聞いたから俺を治療しこれから色々なことを教えるつもりである』

そう考えるのが…今ある情報だと妥当だと思うな、とりあえずはその予想で行こう

となると…治療費免除だったりするかな…いや勇者活動以外に払えと言われたらちゃんと働く気はあるけども


「さ、かけてくれ」

「あっ、うん」

考えながら歩いてたからすごい生返事が出た

「…あー、作り方わからないかな?仕方ない…次からはやってね」

申し訳ないと言おうとしたが目に入るものと作り方はレトルト食品のパックのそれ

女性が手を翳すと蓋?が淡く光る

「今のこれは魔力を流した、わかる?あとは2分程度待てば完成~」

レトルト…レトルトだなこれ

「覚えた…いやわかったって顔かな?好きだよそういう顔。子守りはしないでよさそ~よかった」

聞きながら持ち上げて側面下面と見る

「おいおい溢さないでよ?」

「…」

成分表示は無いか…

残念

そうしていると出来上がったらしい

蓋はフィルム状になっていて中身はこれは…肉と野菜と、だな、味は…うん、レトルト特有のムラはあれどおいしいね

いやあまりにもレトルトすぎる、先代以前の転生者が普及させたのかな…凄い


「と…食べながら自己紹介でも、君からする?」

…何て言うのかで別れそうな場面だな

よし

「パスパルトゥー、ニンファス·パスパルトゥー、神様…の命によって勇者としてこの世界に来た、異世界人」


ここでの間はキツいな…嫌な予感ばかり浮かぶ…突拍子もなかったか…それとも異世界人はさすがに言うべきじゃなかったか?

「んー私がなにも言うでもなくそう言うなら、とりあえずは信じちゃおっかな」

…許された?

「じゃ、私だね。私はライゼンリット、この世界に降り立った勇者を導く案内人とでも自称しちゃおっかな?そうじゃないかもしれないけど」


改めて、見た目は…童顔で身長はおそらく160くらい…ふんわりとした、腰ほどまで長い銀髪を備え目は綺麗な碧眼、それと眼鏡をかけている

服装は…ラフ、と言っていいのかどうかはわからないが正寸ちょっと大きめ、いや裾丈は膝下まであって短パンという感じで動きやすそうな服装だ

眼鏡も特殊なものなのだろうか

「こんな発言、信じるんですね」

「ああ、証拠はもう貰ってるようなものだからね…信じるというよりも信じざるを得ない、と言ったところかな」

やっぱり神様の根回しなのだろうか


「別に丁寧に接する必要も無いし、こうなったなら可能な限りなんでも聞こう、してほしいことはある?」

…助かる、敬語関係の評価高かったこと無いんだ自分

「じゃあこの…えーと…食事、成分表示があるものとかってあったり…」

あっ表情少し変わった

「マジ~?はあ…うん、わかったよ、君用に頼むよ…大量注文になると額差バカにならないんだよな~!くぅ~!どうせ種類もあった方がいいとか言い出すんでしょ!?先んじて注文しとくよ!!!」

うん、まあ…してくれるみたいだし、厚意には甘えるべきだよね!

「…じゃ、勇者くんというのに野生動物に負けるようじゃ話にならないし戦闘についても教えてくから、強くなるまで君の存在は秘匿するけどいいよね」

「うん」

せめてはいって言うべきだったかもしれん

まあ秘匿に関しては敵にバレないで動ける準備できるに越したことはないし


「数ヶ月から年での訓練合宿、よろしくね」

「お世話になります」

こうして、森中の母屋での生活が始まった

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