第34話 やはりつけない嘘
クエストラリー2日目、7時20分。Fクラスのリーダー、定村君から届いたメッセージを確認して、6Fでリタイア予定だと返信します。本当はもう少し上に行って踏破ポイントを稼いでおきたいのですが……Lv3と偽装している手前、これ以上皆さんに付いて行ってしまうのは不自然に思われてしまうでしょう。キセキちゃんは秘密にしてくれるようですが……もう他の人にバレてしまう訳にはいきません。
▽キセキ
「皆様おはようございます
全員集まったところで早速出発しましょうか
準備の方はお済みですか?」
▽アカネ
「Cクラス、全員準備完了で~す!
いつでも行けますよ!」
▽Dクラス生徒A
「Dクラスも全員準備出来てます」
▽ホヨヨ
「あの~………クラスのリーダーから
いつでもトライアルをリタイアしてもいい、と連絡を受けたので
リタイアしたいんですけども~」
▽メイカ
「ありゃりゃ………やっぱりもうキツいかな?
5Fはまだ何とかなったみたいだけど…」
▽Dクラス生徒B
「まあ、引き際の見極めは大事だよな
無理して大怪我するよりはマシだ
Lv3でここまで来れただけでも御の字じゃねえか?」
▽キセキ
「そうですか………
もう少し一緒にいたかったのですが、
本人がリタイアしたいと言うならば仕方ありませんね」
▽クイン
「………あら?
【踏破トライアル】の階層到達に条件が追加されたみたいですわね
………『階層内の魔物を10体以上討伐』、ですって
ちょっと駄犬…このままだとアンタ失格よ?」
▽ハフリ
「あ~~~… 海月野ちゃん許されなかったか~
まあ、クラスの実力を測る為のトライアルだもんね~」
▽ホヨヨ
「えー! そんなあ~………
それなら頑張って魔物を倒すしかないですね~
リタイアする前に一人で終わらせておきます~」
▽クイン
「………5Fのゴブリン軍団を一人で攻略できるらしいわね
ソロで格上相手に集団戦をこなせるのなら
単体行動の多い6Fの魔物もなんとかなるとは思うけど…
というか駄犬、アンタが魔物と戦ってる所一度も見てないんだけど?
昨日二人で星付きを倒しに行った事についても
キセキ様は下手な芝居ではぐらかすばかり…
なんですの? なんなんですの?」
▽キセキ
「…本当にごめんなさい
でも………この場では話せない事なんです…」
▽ホヨヨ
*プルプルと震えている*
▽クイン
*大きな溜め息をつく*
「………ああもう分かった 分かったわよ………
二人ともウソが下手すぎて逆に心配になってくるわ…
人前で戦えないような秘密を持ってるって事ね?
もうこれ以上詮索はしないわ…でも駄犬、いいこと?
これはトライアル…自分達の実力を見せる為のもの
学園生徒は皆スコアを伸ばそうと真剣に頑張っているわ
そんな中、自分だけ力を隠す事がどういう意味を持つか…
よく考えておきなさい
宣言通り
それはアンタの勝手よ いいわね?」
▽ホヨヨ
「………はい」
▽クイン
「………さて、これで話は終わりね
それでは皆様方、7Fへ向かいますわよ」
トライアル組の皆さんが7Fに続くメインストリートへ入り、次第にその姿は見えなくなっていきます。……さて。ホヨも最後の仕事といきましょうか。
――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――
▽コガネ
「………あの、煉国谷様
差し出がましいようですが………
海月野ちゃんはあれで本当によかったんですか?」
▽クイン
「…あら、別に上ってくるなとは言ってませんわよ
要は
とは言えトライアルの結果で実力がバレてしまう以上
ここでリタイアするのが賢明でしょうけど」
▽コガネ
「………あれ? でも先程あの子に仰っていたのは………」
▽クイン
「………あの子は今の自分には過ぎた力を手にしてしまったのですわ
クエストラリーという晴れ舞台でそれを隠さなくてはいけないほどの…ね
実力を示して認められるには…相応の地盤も必要ですの
例えばわたくしやキセキ様、鳴句さんなら貴族や組織という立場、
例えばあなた方ならメディア進出による知名度や
冒険者学園中等部修了という実績………
でもあの子にはまだそれが無い
何の後ろ盾も無い15歳の平民がいきなり冒険者になって、
なのにたった数ヶ月で5Fの壁を易々と突破したとあれば…
それは底知れない才能を持つ…文字通りの天才
有用な人材を欲する各種派閥やクランがあの子を手に入れようと動くでしょう
…その内権力や財力を使った強引な、
或いはそれ以上に過激な手段を使おうとする集団も現れるでしょうね」
▽キセキ
「ホヨヨちゃんが力を隠しておきたいという主張は…適切なものです
…自身と周りの人達をその悪意から守る為にも
だから私は…彼の秘密を誰にも話したくないんです」
▽アカネ
「…そんな事は無い………と言い切れないのがつらい所ですね
実際に過激派クランによるそういった事件は時折起こっている訳ですし…」
▽コガネ
「………そこまで分かっておきながら…
何故海月野ちゃんにあんな言葉を…?」
▽クイン
「………ただの嫉妬よ …はしたない、安っぽいプライドの…ね
わたくしは貴族として…そして適性がある者として
4歳から魔法の知識や技術を嫌と言うほど叩き込まれてきましたの
11年という歳月を費やして磨いてきた魔法の力を………
あの犬はたった数ヶ月で凌ごうとしていますのよ?
………悔しいに決まっているでしょう!」
▽Dクラス生徒B
「ええっ!?
【魔導士連合】最年少幹部………随一の天才と謳われる貴女に?
さすがに話を盛りすぎじゃないですか?」
▽クイン
「…レベルが上がって相応にMAGが鍛えられてきますとね
冒険者や魔物が保有する魔力を少しずつ知覚出来るようになりますの
そしてあの子が持つ魔力は………整いすぎている
魔法を常用し、高度な制御技術を有している者の特徴ですわ
…そう、それこそ【魔導士連合】の他幹部や…総帥のように
あの感じは…少なくともALv10を超えている
………そうですよね、《鑑定》持ちのキセキ様ぁ?」
*じっとりと視線を向ける*
▽キセキ
「………あれ? と言う事はもしかして………
九印様は最初から分かってて………?
えぇぇ~~~そんなぁ~~~」
*半泣き*
▽アカネ
「じゅっ………私より高くないですか!?
一番得意な【火属性魔法】でもまだALv9なんですけど!?」
▽クイン
「【魔導士連合】幹部をナメてもらっては困りますわねぇ~~~???
魔法や魔力に関しては一家言ありましてよ!
おーっほっほっほっほっほっほ!!」
▽メイカ
「うへぇ~………幹部すら認める程の才能かぁ………
どうしよコレ あたし達も秘密にしておいた方がいいかなぁ?」
▽キセキ
「どうか…どうかホヨヨちゃんの為にも…何卒………」
*必死にお祈りをしている*
▽クイン
「心配しなくても大丈夫ですよキセキ様
どうせ向こうから勝手にボロを出してバレますから んっふふふ」
▽キセキ
「うわぁん! よくないですぅ~~~!」
*ぴえん*
▽Dクラス生徒C
「アイツ…そんなバケモノだったのかよ………」
▽Dクラス生徒A
「………おい どうするよコレ 報告案件か?」*小声*
▽Dクラス生徒B
「…当たり前だろ 抑制派にとっちゃ大問題だからな」*小声*
▽Dクラス生徒C
「…つってもよお…バックにAクラスが付いてるようなもんだぜ?
そう簡単に手出しできねえだろ…」*小声*
▽Dクラス生徒A
「…今はやめとこうぜ 噂の出処だって限られてる
バレたら俺達がヤバイ」*小声*
▽Dクラス生徒B
「…分かった 俺達もしばらく秘密にしておこう」*小声*
▽クイン
(………抑制派、ねえ………
Dクラスの連中はBクラスのスパイ…って所かしら
ま、わたくし達の存在をチラつかせていれば
しばらくは悪い虫も付かないんじゃないかしら)
「………さて 噂話もこのくらいにしましょうか
…ほらキセキ様 さっさと上の階層に向かいますわよ」
▽キセキ
「むーむー!」*膨れっ面で睨みつけている*
▽クイン
「………そんな顔…間違っても世に曝してはいけませんよ?
貴女は冒険者の希望、次期【聖女】の第一候補なんですから」
▽キセキ
「うぅ…どうしていつもこう…
苦手な所ばかり突いてくるんですかぁ~…」*萎れる*
▽コガネ
(神々々様…素だとあんなに表情豊かなんですね…可愛い)
――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――
▽ホヨヨ
「ほあ………ほあっ!
ヘクチョーーーイ!!」*くさめ*
▽クエストラリースタッフ
「あぁー!! 魔石にヨダレが! 何やってるのもー!
そっちに水道あるから洗ってきなさい!」
▽ホヨヨ
「んひぃぃぃ~~~」
踏破トライアル組と別れてしばらく後。ホヨは踏破条件である階層内の魔物10体を討伐して魔石の納入をする為に運営キャンプへ来ています。
▽クエストラリースタッフ
「………よし 階層内の魔物10体分の魔石…討伐情報の確認完了!
Fクラス…6F踏破、と Lv4のソロなのによく頑張ったわね~」
▽ホヨヨ
「えへへ~…ありがとうござます~」
▽クエストラリースタッフ
「君はこのままリタイアでいいのかな?
スタッフ送迎は必要ある?」
▽ホヨヨ
「はい~ リタイアします~
帰りは一人でだいじょぶですね~」
▽クエストラリースタッフ
「は~い了解 でもクエストラリーはまだ続いてるから
自クラスの手伝いとか他クラスの邪魔とかしちゃダメだからねー」
▽ホヨヨ
「は~い!」
これにてホヨの任務は完了です。自由時間となったので……まずは下層にいる定村君達の所に顔出しして挨拶でもしておきましょう。その後はポータルを使ってワルミちゃんの様子も見に行って……別の所でジェリトワーヌちゃんと一緒に狩りでもしておきましょうか。
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