第30話 聖女漫才
――SIDE.明都院 割美
――― クラス対抗クエストラリー、1年の部開催日。大体育館に集められた総勢240名の生徒達。校長先生による数分間のスピーチの後、開催宣言。
▽スタッフ教師
「………それでは【踏破トライアル】参加者は前へ
通常グループとの混線を避ける為先行してもらいます」
……さてさて、他クラスは一体どのメンバーを選んできたのだろうか。
まずはEクラス。Fクラス同様捨て種目としているらしくLv5が2人。少々の悪態をつきながらノロノロと歩み出る。Dクラスも似たような感じでLv7が3人。
Cクラスは……おや? 明るい色合いの髪とオシャレな装備が特徴的なあの5人組は……どうやらクラス内でも実力の高い精鋭を送り込んできたようだ。
▽
「はいは~い!
『いろづき5』、全員トライアル参加で~す! みんなよろしくゥ♪」
▽
「よろしく、です」
▽
「よろしくお願いいたします」
▽
「よろしく」
▽
「よろぴ~」
以前オリエンテーションでも軽く触れたCクラスを代表するネームドキャラ達だ。現在Lv12。順当に成長しているようで何より。身だしなみにしっかり気を使っていて、間近で見ると本当に綺麗で個性もある女の子達だ。冒険者としての実力もあり、クラス問わず声援に熱が入るのも納得だ。
そしてAクラスからは……最高戦力が投入された。
▽キセキ
「神々々 輝世姫………トライアルに参加いたします」
▽クイン
「同じく煉国谷 九印、トライアル参加ですわ」
▽メイカ
「同じく! 鳴句 明華!」
うわ! ヒロイン勢揃い! ヤバイわよ! Lvは17~18と1年生ながら中級冒険者をも凌ぎ、アビリティ・スキル・装備も強力なものを揃えている本物だ。Cクラスのいろづき5と合わせて女性陣が豪華すぎる。すっげえ混ざりたい。いいな~ホヨヨちゃんいいな~~~!!
▽ホヨヨ
「海月野 火夜代! トライアルの参加をします!」
▽アカネ
「わぁ~! ちっちゃくて可愛い~!
よろしくね海月野ちゃん♪」
▽ホヨヨ
「こにちは~~~ホヨです~~~
よろしくおねがしますのこと~~~」
▽クイン
「あら海月野さん…奇遇ですわね
あれからレベルはどれだけ上が……Lv3!?
一人で? 正気なの?」
▽キセキ
「あらあらまあ………
でしたら皆様、しばらくの間私達と一緒に行きませんか?
賑やかで楽しいと思いますよ♪」
▽メイカ
「そ~そ~!
同じクラスのメンバーでしかパーティーを組めないってだけで
別にバラバラで行かなきゃいけないって決まりは無いからね~」
▽アカネ
「えー!! ご一緒してもよろしいんですか?
こちらこそよろしくお願いします!」
▽キセキ
「BクラスにDクラス、Eクラスの方々も
もちろん一緒ですよ どうですか?
▽Eクラス生徒
「え? あ、は、はい………よろしく………」
▽Dクラス生徒
「ま、まあそういう事なら………」
あ~神々々様、マイペースで押しが強くていらっしゃる。しかし困った事になったぞ。各クラスの選出メンバーにホヨヨちゃんの隠された実力がバレてしまうリスクが発生してしまった。
原作では主人公が【踏破トライアル】を選択する事は無く、なおかつミニゲーム形式で簡潔に済ませられていたので、そこで起こるイベントの詳細までは分からなかったのだ。特に神々々様は高位の鑑定スキルを所持しているので【フェイクコサージュ】を破られてしまう。序盤は彼女との接点は無くキャラストーリーも発生しない……と高を括っていてホヨヨちゃんには伝えていない。
どうにかして隠し通してほしい……と言うかいかにも面識があるかのようなあの口ぶりは何だ。いつの間にAクラスのヒロイン達と知り合いになったんだ。
▽
「………フン これは遊びじゃないんだぞ?
こんな足手まといに付いてこられたら迷惑だ…
私達は先に行く
精々楽しくペットと散歩でもしてるといいさ」
皮肉ったらしく文句を垂れてそのままさっさとダンジョンに向かってしまったのはBクラスの【踏破トライアル】メンバー4人。その中心となっているのはキツい物言いと鋭い目付きがクールなスレンダー美少女、
ガッチガチの抑制派貴族令嬢で、平民層から有力な冒険者が輩出され貴族の地位が揺らいでしまう事を危惧して下位クラスに圧力をかけ才能の芽を潰そうとしている。D・Eクラスを使役してFクラスに度々嫌がらせを行ってくるグループの元締めであり、原作では私を始めとする抑制派貴族数名と手を組み悪事を働いていた。
この世界では私が抜けてしまっているが特に問題無く機能しているようだ。いや、問題はあるんだけど。実力の近いAクラスにも一方的な敵意を向けていて、彼らにもちょっかいを出したりしている。
ちなみにワルミが悪事に加担していたのは抑制派の思想がどうとかAクラスがどうとかは関係無く、単に弱い者イジメがしたかっただけだ。私はそんな事しないからな、清く生きるぞ内なるワルミ!
▽アカネ
「な、なんか怖いヒトだね………」
▽メイカ
「もぉ~~~…
あんなヒドい言い方しなくてもいいじゃん!」
▽キセキ
「あらまあ………あんなにご機嫌斜めで…
睡眠不足でしょうか…?」
▽クイン
「Bクラスはいつもあんな感じでしょ
それにしても………ペット…ペットねえ…」
*誰かに視線を向ける*
▽メイカ
*誰かに視線を向ける*
▽アカネ
*誰かに視線を向ける*
▽キセキ
「………お手」*そっと手を差し出す*
▽ホヨヨ
*何の疑問も持たずそっと手を置く*
▽キセキ
「 … … … 」*満足そうな顔*
▽クイン
「………何も言い返せなくなったじゃないの………」
▽ホヨヨ
「???」
▽Eクラス生徒
「………俺…神々々様が漫才してる所初めて見た………」
▽Dクラス生徒
「俺も………」
▽スタッフ教師
「………あの…そろそろ出発していただけると………」
▽クイン
「あっ はい…すみません………
ってなんでワタクシが謝らないといけない訳!?
このッ…駄犬ッ………!!」
*ホヨヨのほっぺを強引に引っ張る すごく伸びる*
▽ホヨヨ
「わぁぁ~~~!! なんへぇ~~~!!」*1ダメージ*
▽メイカ
「ホラホラ遊んでないで行くよ~?」
▽クイン
「なんッ………ああもう…!」
*ホヨヨを小脇に抱えていく*
▽ホヨヨ
「よいですね~」
▽クイン
「よくないわよ!!」
▽アカネ
「………え 待って その子持ち運んで行くの?」
いやマジで何やってんのあの子達。生徒や教師が神々々様達の年頃の少女らしいお茶目な一面を垣間見てめっちゃザワついちゃってるじゃん。ホヨヨちゃんもものすごく目立っちゃってるし……ヤバイですわよヤバイですわよ。
▽イオ
「………さすがに僕も驚いたが………
これはまたとないチャンスかもしれないぞ
AクラスやCクラスの助力があれば…
もしかすると海月野ちゃんは3Fより上層に行ける可能性がある
思わぬ所からポイントの加算が期待できそうだ」
さすがは定村くん。想定外の事象が発生しても冷静に状況を分析できている。それはそれとしてあたしゃとっても心配だよ……。
▽スタッフ教師
「………ごほん それでは20分後にラリーを開始します
各種生活用品はこちらで支給していますので準備を怠る事のないように」
さて、私は私で出来る事をしませんとね。Lv15になった今なら……10F辺りでもソロで十分いけるだろう。ポータルを利用し10Fから5Fに戻ればインフレするシャワー等の設備利用料もほどほどに節約できる。EクラスはLv5~7辺りの生徒しかいないので妨害を受ける事もないはずだ。まさに独擅場と呼ぶに相応しい。やってやりますわよ~!
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