第19話 水面下_2

▽千堂先生

「Fクラス担任、千堂です

 海月野さんを連れてきました~」


 千堂先生に付いていく事数分、学習棟のとある部屋に案内されました。

「どうぞ」という声が中から聞こえ、ホヨは促されるまま部屋に入れられます。先生は……入ってこないようです。ホヨだけ。どうして……

 そこには3人の生徒がいました。胸には金色に輝く桜の紋章……貴族の証です。


▽クイン

「海月野 火夜代さん………でしたわね

 ごきげんよう 1年Aクラスの煉国谷 九印ですわ」

▽キセキ

「………同じく 神々々 輝世姫と申します」

▽メイカ

「同じく! 鳴句 明華だよ! よろしくね~!」

▽ホヨヨ

「こにちは~~~ ホヨです~~~」


 Aクラスの生徒が……3人!? 一体何事だと言うのでしょうか。自然な動きで盗聴防止の結界を張られました。でも挨拶は大事なのでちゃんと返しておきましょう。


▽クイン

「…ご安心くださいまし 此度の呼び出しはあなたにとって良いものでしてよ

 わたくし達は………あなたのに参りましたの

 【魔導士連合】、【聖女教会】、【冒険者産業組合】………

 これらの組織、あなたでもご存知ですわよね?

 わたくし達はそれらの上層部に座を構えておりますの」


 ええ、もちろん知っておりますとも。【魔導士連合】は【マジシャン】系列、【聖女教会】は【クレリック】系列、【冒険者産業組合】は【クリエイター】系列の………組織なのです。ホヨは物知りですよ、エッヘン。


▽ホヨヨ

「ほへ~~~………3つ?

 もしかしてホヨは3つの所からお誘いを受けているのですか?」

▽メイカ

「そだよ~ さすがに3つ全部に入る事は出来ないからね

 だからキミにはどれか1つ選んでほしいんだ!」

▽ホヨヨ

「あ、あの…どうしてホヨなんですか?

 他のクラスの人はもっと強い人ばかりなのに………」

▽クイン

「………ステータスやアビリティではなく…、ですわ

 入学式の日に【中級エディットオーブ】でステータスの登録をしたでしょう?

 ギルドでは実数値の他に【レベル比較評定】というデータを集計していますの

 同じレベルの冒険者を集めて、各ステータスを集計し平均値を算出……

 平均値との差異に応じてA~Eランクで評定しているのです

 高レベルの冒険者はステータスがですからね…

 その人の才能を正しく測るには、このデータが必要なのですわ」

▽キセキ

「あなたはSENがAランク、MNDがA-ランク、

 MAGに至ってはAを超えてランクとなっています

 つまりあなたはその3つのステータスが非常に優れていて、

 私達の所属する各組織に適した才能を持つ人物という事です」

▽ホヨヨ

「そう………ですか…その…誰かに認められるというのは………

 …やっぱり嬉しいものですね…えへへへぇ ありがとうございます!」

▽メイカ

「うんうん 素直なのはイイ事だよ~」

▽クイン

「………ですが、あなたはまだ才能があるに過ぎません

 努力を怠れば…輝きは失われ、路傍の石屑と成り果てるでしょう

 …わたくし達は才能を磨く助力をしたいのです」

▽キセキ

「ですが…急に選べと言われてもお困りでしょう

 ですので、あなたの進むべき道を…私が見定めてさしあげます

 とは言えあくまでもそれは選択肢の一つです

 自分がやりたいと思ったものを選ぶといいでしょう」

▽クイン

「………使うのね を」

▽メイカ

「オッケー どうなるかな~?」


 なんだかどんどん話が進んでいきます。ですがこれからの冒険者生活にアドバイスとサポートをしてくれると言うのですから、こんなにありがたい事はありません。甘んじて受けるとしましょう。


 神々々さんが私の正面に立ち、ホヨの目を真っ直ぐに見つめます。そして神々々さんの瞳が紅色から金色に変化して………



▽キセキ

「………? あら………? あらあらあら?」



 《天命の瞳》……自分や相手の未来を正確に見通すという神々々さんの固有スキルです。ニュースでも度々話題になるほど有名で、神々々さんがAクラスのトップにいるのもこのスキルによって大きな功績を上げているからだとか。

 それはさておき、もし原作と同じ未来が見えているならば、そこには上位クラスや他の冒険者から幾度もいじめられている風景が……




▽キセキ

「………あなたの未来が………見えませんわ」




▽クイン

「………なんですって?」

▽メイカ

「えぇ…!? そんな事ある?」

▽ホヨヨ

「見え…ない………? 一寸先は闇………?

 それってつまりホヨの未来はお先真っ暗って事ですかぁ~~~!?」

▽キセキ

「いえそんなはずは………!

 も、もっと近くで…よく見せてくださいませ!!」


 神々々さんが少し動揺しながらもずずずいと近付いてきて、バチュリと両手でホヨの顔を固定して……ものすごく近くでじっと見つめてきます。このままではおでこがゴッツンコしてしまいそうです。とても危ないのですよ……はゎゎゎ。


▽ホヨヨ

「もひひぃぃぃ~………」

▽クイン

「ちょっと! いくらなんでも近すぎるわよ!

 その…唇とか当た………もう!」

▽メイカ

「キセキちゃんってそういう所あるよね~~~」

▽キセキ

「む゛む゛む゛む゛む゛………

 うぅ~~~ やっぱりダメです

 真っ白なモヤみたいなものが掛かっていて…全然見えません………

 …あら、ほっぺ…すごくモチモチで………よく伸びますね…うふふ」


 神々々さん放してください~! ほっぺがすごい伸び…伸ばさないで~!


▽クイン

「…はあ 仕方ないですわね この件は一旦保留にしておきましょう

 まったく、はクセの強い人ばかりと言うけれど…

 に魔法の才能があるなんて…本当に生意気だわ………!

 ちょっとキセキ様! わたくしにも引っ張らせてくださいまし!」


 わ~!! 煉国谷さんも引っ張らないでください~!!


▽ホヨヨ

「ほ、ほんにゃあ~………」

▽メイカ

「あーっ! いいなあ~! 次! 次あたしやる~!!」


 ああっ……鳴句さんまで!! ご丁寧に鎧の篭手まで外して! どうして…どうして! たすけて! たすけて!




――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――




▽クイン

「………ゴホン!

 では、今日のところは解散といたしましょう

 …再度伝えておきます あなたは才能があるだと言う事

 しっかりと精進なさい」

▽ホヨヨ

「は、はいぃぃぃ~~~………」

▽メイカ

「それじゃまたね~!」

▽キセキ

「うふふ…ごきげんよう」


 なんだか顔を引っ張られたりしただけで終わってしまったような気がしますが……まあいいでしょう。どうやらホヨには「才能」があるらしいです。しっかりと鍛えてもっともっと強くならなければ。




――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――




▽キセキ

「………それにしても………あんなに可愛らしいのに殿方だなんて…

 世界は広いものですね」

▽メイカ

「………え?」

▽クイン

「………は?」

▽キセキ

「………? あら?

 ちゃんと学園のプロフィールにもと書かれていますよ?」

▽クイン

「…確かにわたくしは勘違いしていましたわ

 あの見た目は中性的を通り過ぎていましたし………

 でも、それはそれとして!

 キセキ様、あの子をと認識した上でしたんですの!?」

▽キセキ

「? そうですけど…何か問題が?」

▽クイン

*眉間を押さえ大きく息を吐く*

▽メイカ

「………キセキちゃん、ホントそういう所あるよね~~~…」

▽キセキ

「???」

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