第14話 危険人物

――SIDE.明都院 割美




▽ワルミ

「さて、頼もしい仲間ともだちもできてレベルアップもした事ですし……

 お互いにステータスを確認してみますわよ」

▽ホヨヨ

「は~い」




―――――――――――――――――――――――――

◇明都院 割美(あくどいん わるみ)

CLv:9/9級

JLv:9/ビギナー

HP:62/65

MP:49/52

SP:62/63

STR:26  VIT:28  SEN:25

AGI:32  INT:28  MND:30

MAG:21  AC/SC:4/5

・アビリティ

【★悪知恵】

【Lv4:武器マスタリ・長剣】

【Lv3:闇属性魔法】

・スキル

《威嚇》SC0

《初級鑑定》SC0

《パワースラッシュ》

《ダークネスアロー》

―――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――――――

◇海月野 火夜代(みゆえの ほよよ)

CLv:4/9級

JLv:4/ビギナー

HP:18/21

MP:61/76

SP:26/35

STR: 7  VIT:10  SEN:29

AGI:16  INT: 7  MND:27

MAG:40  AC/SC:3/3

・アビリティ

【Lv4:★天魔特異点】

【Lv1:無属性魔法】

・スキル

《マジックアロー》

《◆召喚:プリンセスジェリー》SC2

《威嚇》SC0

―――――――――――――――――――――――――




 私は1、ホヨヨちゃんは一気に3も上がっている。レベルアップ時にわずかな疲労感や倦怠感があるのは……HPなどの最大値だけが増えた事で現在値の割合が減少するから、という知見を得た。低レベルの時はその割合も大きい為余計に疲労が大きく感じるのだろう。

 私の方は……やはり平均的な上がりだ。30歳の平均的な身長と体重で健常な成人男性がCLv1・ビギナーLv1の時、ステータスの平均は10と言われている。つまり今のワルミはそんな成人男性の3倍近い身体能力を持っている事になるのだ。

 ちなみにMAGが控えめなのはこの世界の常識らしく、曰く「普通の人間は魔力に体が馴染みにくいから」らしい。MAGの固定値やレベルでの上昇倍率が高いとそれだけで一つの才能になる程だ。


 ……まあこっちは特に問題は無い。問題があるのはホヨヨちゃんだ。なんだこれ。とんでもないMAG特化型だ。魔力に体が馴染みすぎている。STR、VIT、INTが極端に低いのは……上昇倍率がMAGと他項目に吸われてしまっているからだろう。魔力適性の代償とも言うべきか。無病息災を願おう。

 ステータスがヤバければアビリティもヤバイ。【★天魔特異点】……文字が強い。能力説明には「天と魔を引き寄せる」としか書いておらず、詳しい効果は不明。そして固有アビリティでありながらレベルが存在するのも珍しい。つまりアビリティレベルが上がると詳細不明の効果やデメリットが強まっていくという事。怖すぎる。女神様が転生者ボーナスとして付けてくださったのかしらん。

 そしてもう一つ……とあるスキル。【プリンセスジェリー】の「共に戦う」という言葉はだった。《ファミリア》……ラブたんにも動物や精霊を召喚・使役し仲間NPCとして一緒に戦うこのスキルが存在していた。

 ◆マークは特定の条件を満たしている時のみ使用可能である「条件付き」のスキル。これは装備アイテム【★リングオブジェリー】を装備している間だけ使える、という意味だろう。この一期一会なお宝探し……まさにラブたんのダンジョンダイブって感じだ。なんだか面白くなってきたじゃないか。



 ――― ふと、冷静になって考えてみる。もしかすると今の私達は……な立場にあるのではないだろうか?


 この世界は……原作と比べてレベルアップしにくい。


 まず「原作にあった各種便利機能がいくつか抜けている」事。

 ラブたんには固定ダンジョンに【転移ポータル】と呼ばれる中継地点があり、5階層区切りで瞬時にワープできる機能がある。

 しかしこの世界にはどうやら転移ポータルが無いらしく、ダンジョンに入る際は毎回長い列で数十分待ち1Fから何度も往復しなければならない。ダンジョン内部に出店やレストラン、宿泊施設に仮設トイレなどが並んでいたのはそこで食事や寝泊まりする事も多いからだろう。

 他にも全国各地へのファストトラベル機能やランダムダンジョンの広域探知機能なども無く、とにかくダンジョンダイブに時間がかかる。冒険者は生身の人間、食事に排泄、休息や睡眠も必要。これでは上がるレベルも上がらない。

 ちなみに現在この世界で最も強い冒険者のLvは30程度、固定ダンジョンも30F付近が最前線である。


 次に「魔物との戦闘は常に命懸けである」事。

 当然と言えば当然だが、ゲームと違い全滅すれば死ぬ。命は1つしかないのだ。そんな戦いを何度も繰り返すのだから、精神はどんどん摩耗する。そして心身ともに弱った不意を突かれ、命を落とすのだ。ゲームと同じ感覚で魔物に挑むのは絶対に避けねばならない。

 魔物との戦闘で得られる経験値は冒険者に対しレベルが1低くなる度に20%減衰する。そしてLv5以上離れてしまうと経験値が得られなくなるのだ。なので否が応でも強い魔物と戦わねばならず、ある程度レベルの上がった冒険者が限界を感じて引退する事も多い。


 そして「各種経験値効率の圧倒的な悪さ」。入学式前に一度だけソロでダンジョンに潜り剣術と魔法のトレーニングをしてみたが、まあ全然ダメだった。原作に比べて1%かそこらなんじゃないかと言うほど成長の実感が無かったのだ。

 上二つの懸念も加えると……冒険者を続けていくにはあまりにも厳しい環境だ。


 それなのにたった一度、数時間のダンジョンダイブで3もレベルアップし、アーティファクトまで手に入れてしまった人物がいる。そう、ホヨヨちゃんだ。

 この急激な成長は周囲に違和感を抱かれてしまう可能性があり、その情報を嗅ぎ付けて悪い奴らが狙ってくるかもしれない。この世界はラブたんに比べて冒険者のマナーが悪く、ニュースの隅では冒険者の集まりである【クラン】同士の抗争報告が絶えない。ゲーム知識を他者に知られたくないのもそれが理由だ。

 私達だけならさっさとレベルを上げて実力でねじ伏せればいいだけだが、その周り…私やホヨヨちゃんの家族、Fクラスの仲間達にまで被害が及ぶ危険があるならば……何かしらの対策しなければいけない。



 そう、例えば………ステータスをするとか。

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