第10話 水面下_1

――― 某日 フジヤマ冒険者学園高等部 某所



 AクラスからFクラスまで、1年生全員の【エディットオーブ】使用によるデータ登録が終了した。漏れが無いよう正確に、かつ迅速に学園と冒険者ギルドのデータベースを更新する。


▽ギルド職員A

「1年生全体とクラス毎の統計が完了しました」

▽ギルド職員B

「ご苦労 何か気になる点はあったか?」

▽ギルド職員A

「そうですね……今年は例年に比べてクラス毎のレベル格差が特に大きいようです

 Aクラスはより高く、Eクラスはより低い傾向にあります」

▽ギルド職員B

「ふむ……確かに Aクラスのレベルは平均15…2~3ほど高いな

 ステータスも安定して高い よく鍛錬を積んでいる

 大してEクラスは平均4……1~2ほど低いか

 まあ、こういう年もあるだろう 上位クラスに優秀な者達が集まっている証拠だ」

▽ギルド職員A

「………それと…

 Fクラスに1人だけLv8の人物が混ざっているのですが…これは一体?」

▽ギルド職員B

「…ああ それか…親御さんの希望でな

 Fクラスで一から鍛え直させる、との事だ」

▽ギルド職員A

「はあ……変わった人もいるものですね

 それ以外に特に変わったところは……… あっ!?」

▽ギルド職員B

「どうした? データに何か不備があったのか」

▽ギルド職員A

「いえ、不備と言うか……とんでもないデータがありますよ!

 Fクラス編入試験最下位の……この子、ちゃんです

 これを見てください!」

▽ギルド職員B

「なんだか小学生みたいに小さいな………

 何!? Lv1でMAG魔力29だと!?

 平均の2倍どころか3倍はあるぞ!

 何だこれは………! このような人間が存在するのか?

 固有アビリティも…データベースには存在しない新しいものだ」

▽ギルド職員A

「STR、VIT、INT、AGIは半分程度ですが………

 SEN感覚とMNDも約2倍あります!

 これは………久々のなんじゃないでしょうか?」

▽ギルド職員B

「ああ………間違いないだろう それに最も珍しいMAG特化型だ

 【魔導士連合】と…【冒険者産業組合】、【聖女教会】にも連絡を入れておく」

▽ギルド職員A

「………なるほど 編入試験は筆記問題と体力テスト………

 このステータスでは自身の強みを活かせるわけも無く………」

▽ギルド職員B

「向いていないと諦めてしまう道もあっただろうな………

 まさに奇跡と言うべきか よくぞ冒険者の道を志してくれたものだ」

▽ギルド職員A

「………しかしFクラスでは………」

▽ギルド職員B

「………それは我々が関与できぬものだ

 彼の者の健やかな成長を祈るとしよう」




運命は曲がり続ける ―――

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